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50話 神帝陛下の記録。



 50話 神帝陛下の記録。


 サトロワスが、


「……10倍以上とは、また、すさまじいねぇ。今の状態でも、相当なモノなのだけれど……ちなみに、神帝陛下の記録は?」


 ジャミの返答よりもはやく、サトロワスの問いにかぶせるように、
 バロールが、


「もし、その状態で、ジャミと同じかそれ以上の記録を出されていたら……いや、あれほどの神ならば、その可能性も充分にありえるか……倍率を上げた上に1000時間以上……不敬ながらゾっとする話だ……」


 ボソっとそう言った。


 あの謁見の場に居合わせたサトロワスとテリーヌは、そろってバロールと同じ事を思った。
 そんな三人とは違い、カティは、


「バロールさぁ、なにアホな事言ってんの?! 現実が見えてなさすぎ! 圧縮倍率を10倍に引き上げて挑戦したっていうのが仮に事実だったら、1時間だって耐えられるワケないないから!」


 実は、カティは、二回目の際に、『時間圧縮の倍率』を3倍ほどに上げて挑戦してみた。
 『今のカティたちだと、倍率をいじっても効率が悪くなるだけだからやめておけ』とパメラノから言われていたが、興味本位で、どんなものかやってみたのだった。


 結果は、地獄だった。
 効率が悪くなるどころか、動くことすらできなかったので、まったくの無意味だった。


 3倍程度でもそうなったのだから、10倍ともなれば、いったいどうなるのか、想像もできない。


 ※ ちなみに、時間圧縮10倍以上の10秒ルームのきつさは、『だいぶ軽めのサイコジョーカー』くらい。


「精神と肉体は影響しあうから、私たちより圧倒的に上位者であるらしい神帝陛下なら、当然、私たちより優れた結果を出せるだろうけど、それだって限度があるっての!」


 神のように強い者が挑戦すれば、『出現するモンスターが神のように強くなる』だけ。
 それが10秒ルームの基本ルールであり、だから、強ければ強いほど、長時間、10秒ルームで闘えるというわけではない。
 ただ、存在値が強ければ強いほど、それに引っ張られて、精神力も高まっていく(その割合は人それぞれだし、強くなればなるほど逆に精神が弱くなる者だっているが)。


 存在値と精神力、そのどちらも凄まじく高い次元にいる神帝陛下ならば、九華よりも断然素晴らしい記録が出せるというのも頷ける。
 しかし、時間圧縮10倍で挑戦した上でジャミの記録を超えるというのはありえない。
 そんな事が出来る者など、いるはずがない。




 カティは、自分の精神力に強い自信を持っている。
 『自分よりも優れた意志を持つ生命』は、三至と五聖命王とジャミの九人だけで、それ以外には一人として存在しないと思っている。
 現状の記録では、他の九華(バロール以外。実質はバロールにも負けている)に少し負けているが、頑張れば、普通に追い越せると考えている。


 根性・精神力は、生まれつきによるものが大きい。
 それは事実だが、しかし、根性は、『身長や才能』などのように『先天的な限界』が決まっているものではない。
 メンタルは、鍛えられる。
 筋肉や魔力なんかよりも『よっぽど鍛えづらい』のは事実だが、適切な地獄を積めば、心の強度はキチンと伸びていく。


 カティは、これまでの人生で、多くの地獄を積んできた。
 『九華十傑の第九席』という看板は伊達じゃない。


 そんなカティの記録が500時間ちょっと。
 その倍をいってみせたジャミを、カティは、心の底から尊敬した。
 ジャミは、カティよりもかなり年下だが、ジャミの凄まじい記録を見た今となっては、ジャミに対して、崇拝に近い感情すら抱いている。
 これは、三至天帝や五聖命王に対する『想い』に限りなく近い、
 『こうなりたい』と願わずにはいられない、高次の敬意や憧憬。




「もし、神帝陛下が実在したとしても! 倍率をあげた上でジャミの記録を超えるなんて絶対にありえない!」




 心で思った事を、そのままシッカリと口に出す。
 神帝陛下をナメているとか、バカにしているとか、そういう事ではなく、
 そもそもありえない事はありえない。
 純粋な感情。


 己がこれまでに積んできた地獄に対する自信と、ジャミに対する崇拝と、自身の人生観を支えている常識を並べて、そう叫ぶカティ。


 そんなカティの耳に、ジャミの声が届く。










「神帝陛下の記録は……2500日。60000時間だそうだ……」










「……にせ……ご……ろくま……」







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