センエース~経験値12000倍のチートを持つ俺が200億年修行した結果~(コミカライズ版の続きはBOOTHにて販売予定)
55話 高次戦闘。
55話 高次戦闘。
本体を含めた10人のゼンが、一斉に、
全身を襲っている絶望的な混沌を飲み込んで、
カッコイーポーズを決めつつ、鉄心コールを唱え出す。
残りの10人は、その『本体+10人』を守るように、
ガードを固めながら前へ出て、フッキを睨みつけている。
ギンッッと擬音が聞こえるほどの、血走った激視線。
『ゼンの全て』を目の当たりにしたフッキは、
「サイコジョーカー発動中に、さらに、精神を削るコールで積もうというのか! その思想、イカれている! ――いいだろう!!」
叫び、天影と共に、波状攻撃をしかけた。
「コールが終わる前に潰す!!」
おぞましい暴力の螺旋。
狂気が散乱する戦場。
突破しようとする天影たちと、
壁に徹して必死に抑え込もうとしているアバターラたち。
そんな激戦を睨みながら、
ゼンたちは、
「「「貫くような銀河を見上げ、煌めく明日を奪い取る!」」」
凶悪な精神圧迫の中で、コールを続けている。
吐いた血で溺れてもおかしくない地獄の底で、
それでも、ゼンは、迷わず混沌を積んでいく。
「こじあけろぉおお! その程度のアバターラに、止められてんじゃねぇ!」
全力で、アバターラの壁を突破しようとしているフッキ。
だが、ゼンのアバターラたちは、そのスペック以上に固く、
(アバターラの一体一体に、強固な意志が宿っているっ……信じられん、なんという精神力……こ、これが、主の……っ――)
あらためて、『センエース』の恐ろしさを理解するフッキ。
充分な時間を稼がれて、
だから――
「「「さあ、詠おう。詠おうじゃないか!」」」
「「「「たゆたう銀河を彩りし、オボロゲな杯を献じながら!」」」」
「「「「「「「「「「「――俺は、ゼン。黒き後光を切り裂く修羅の閃光!!!」」」」」」」」」」」
――// 羅刹・真羅・輪廻一閃 //――
持てるすべてを積んだ『一閃』が、
『その歪み』で時空を裂きながら、
情け容赦なくフッキに襲いかかる。
フッキの天影は、アバターラで抑えつける!
決して邪魔させない!
剣の道を切り開き、
本体だけに一直線。
極限まで強化された飛翔する斬撃の渦を、フッキは、
「見事だぁ! しかし!!」
その魂で受け止める。
小細工はなし!
真正面から、ド直球の対策!!
「ドリームオーラ・ミラージュ!!」
超性能の回避バリアを展開し、受け流そうとするフッキ。
飛び交う斬撃の渦は、フッキのバリアによって消失した。
至極、あっさりと、あっけなく、
シンと静かになった純度の高い無音が、両者の耳をつく。
「ゼン! これが高次戦闘だ! いくら火力を積もうと、当たらなければ、どうということはない! あえて言おう! アバターラで『積むための壁を張る』のは綺麗な定石だが、あそこまで時間をかけてしまえば、直線的な攻撃など、このように、余裕で対処されてしま――」
まるで教えを説こうとしているかのような、
そんなフッキの言葉を最後まで聞かず、
ゼンは言う。
「――『UFオーラ・スターゲイザー』、解除」
その瞬間、
フッキの視界に突如出現した、無数の『飛び交う斬撃の渦』が、
「っっっ?!!」
フッキの全身を襲った。
『切り刻まれる』と認識するよりも速く、鈍い切断の音が全身を震わせた。
対処しきれず、腕を飛ばされた――が、
「ぬぉおおおおおお!!」
どうにか、ギリギリのところ――圧殺される前に、渦から逃げ伸びるフッキ。
焦りから、必要以上に距離をとってしまった。
実に無様な姿。
逃げ伸びた先で、フッキは、
「っ……く……っ…………っっ!!」
己の失態を恥じ、歯噛みする。
露呈する、まだまだ不完全な精神力。
(こ、このガキ……グリムアーツに『フェイクオーラ』を積んでやがった……)
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