センエース~経験値12000倍のチートを持つ俺が200億年修行した結果~(コミカライズ版の続きはBOOTHにて販売予定)
30話 面白いバカ。
30話 面白いバカ。
アビスのおかげで、ゼノリカが、どれだけ異常な組織なのか、少しだけ理解できた。
だが、ゼノリカが強大である事など、最初から分かっていた。
『予想していたよりもだいぶ大きそうだから』と言って投げだしたりはしない。
「俺はゴミだ……どうしようもねぇ、ただの生ごみ……だが、ゴミにもゴミなりの意地はある」
ゼンは、気合いを入れ直す。
『エグゾギア』という支えを失った事で生じた心のスキマ。
だが、『ゼン(センエース)』は、
いつまでも弱さに犯されたまま黙っているほど脆くはない!
『人間としての弱さ』は当然のように持っている、が、
そんなしょうもない歪みに、いつまでも負け続けるほどヤワじゃない。
『当たり前のように持ち合わせている、人らしい弱さ』を、『底意地だけで乗り越える、ぶっとんだイカれっぷり』。
それこそが、『ゼン(センエース)』最大の強み。
『センエース』という神は、『最初』から『無敵』だった訳じゃない。
人としての当然の弱さと向き合い、
全ての弱さを必死に乗り越えた結晶。
卑怯で矮小でワガママで汚らわしい『己を喰い殺そうとする弱い心』。
そんな弱い心と、向き合い、抗い、立ち向かい、
みっともない『勇気』を積んだ結晶が、究極超神センエース。
その境地に、
ゼンは、今日、一歩近づく。
情けなくて、泥臭くて、
吐き気がするほどダサくてみっともない、そんな勇気のある一歩。
「倒してやる……」
心のスキに流されて弱音を吐くのは、もう飽きた!
目の前に広がる絶望が、どれだけ大きく深くとも、
バカみたいに、『ヒーロー見参』と叫んでみせる!
ゼンは息を吸って、
「倒してやるよ! 悪に狂ったバカどもを! くだらねぇ不条理を! 全部まるごと、この手で、サクっと殺してやるよ! そして、本物の『めでたし、めでたし』をこの世界にくれてやる!」
そう叫んだ、その時、
「――おもしろいバカ、発見――」
どこからか、声が聞こえた――と思った直後、
「アビス、お前、邪魔だ。消えてろ」
突如出現したジオメトリから這い出てきた、エグゾギアに身を包んでいる『誰か』が、アビスに豪速の裏拳を叩き込んだ。
えげつない衝撃音がして、悲鳴をあげるまもなく蒸発するアビス。
そんな光景を、ポカンとした顔で見ているゼンに、
その『誰か』は、
「ゼノリカを知った上で『ゼノリカを倒す』とハシャげるバカがいるとは思わなかった……お前には、『オレ』のテストを受ける資格がある」
ゼンは、
「ぁ……っ……」
目の前でアビスが蒸発したという事実に、数秒ほど呆けていたが、
しかし、
それよりも、なによりも、
「……そ、それ……」
わなわなと指をさしながら、
「も、もしかして……エグゾギア……?」
『自分以外にも使い手がいたのか』とか、『このフロアって確かエグゾギアが使えないんじゃ』などの疑問が溢れた。
解答を求めるゼンに、しかし、その『誰か』は、
「愚問にもほどがある。見れば分かるだろ」
吐き捨ててから、
「そんな事はどうでもいい。それより――」
困惑しているゼンの感情など完全にシカト。
そのまま、その『誰か』は、
「お前に二つ質問する。答えろ」
「……ぇ、しつもん?」
「問い一。……を問うために必要な前提を、これから、三つほど並べていく。耳をかっぽじれ。前提1。現在、この空間は、ゼノリカによって、機動魔法を制御するフィールドが展開されている」
「……『俺に対して厳しい特殊性を、たまたま、このダンジョンが持ち合わせていた』という訳じゃなく、ゼノリカが能動的に展開していると……ふむ……ちなみに、なんで、あんたはエグゾギアが使えんの?」
「オレのシステムには、ゼノリカのジャマーに対するキャンセラーが搭載されているからだ。おかげで、こうしてエグゾギアを使えているが、キャンセラー発動中は、いくつか制限を受ける。まあ、ようするに、エグゾギアを使えるは使えるが、本来の力では使えないという事だ」
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