センエース~経験値12000倍のチートを持つ俺が200億年修行した結果~(コミカライズ版の続きはBOOTHにて販売予定)
27話 チャンス
27話 チャンス
いうまでもないが、『使わない』と『使えない』の差は大きい。
時間的な制約があろうとなかろうと、『使う事はできる』という前提さえあれば、
――『エグゾギアの圧倒的な力があれば、なんだかんだで、すべてひっくり返すことも不可能じゃない』と思う事が出来、結果として、最後まで折れずに闘う事ができる。
現実がどうこうではなく、心の奥底で、そう思えるか思えないか。
精神的支柱とは、そういうもの。
――これは、『センエースに会えるかどうかは関係なく、センエースが消えればゼノリカが瓦解してしまう』のと同じ理屈。
『支え』の有無で『器の強度』が変わってしまうのは、
ある意味で、人の『強み』とも呼べるが、しかし、
人という『命』の『弱さの象徴』であるとも言える。
※ ご存じのとおり、センエースの精神力はハンパじゃない。
どれほどの絶望を前にしても、諦めず、最後まで闘う事ができる、精神の逸脱者。
だが、『ゼン』には、『エグゾギア』という支えがあった。
支えに依存していた事で、その分だけ、心に弱さが産まれていた。
センエースの『最大精神力』は確かにハンパじゃないが、『十数年しか生きていない現時点』では、まだまだ生き物として未熟なため、その身に内包されている『とてつもない精神力』をコントロールしきれていない。
そして、なにより、センエースだって、
そもそもの『人間としての弱さ』を持たない訳じゃない。
――センエースは、最初から『無敵』だった訳じゃない。
ありとあらゆる弱さを乗り越えて、命の果てへと至った。
それは、存在値や戦闘力だけではなく、精神力だって同じ。
今のゼンは、ほとんど絶望を乗り越えていない十代の子供。
――当然だが、センエースほど無敵じゃない。
依存していた対象の消失。
ソレによって生じてしまった『弱さ』が、ゼンの核を『重く』する。
「さて、現実が見えてきたようだし、それでは、絶望の続きといこう」
再開された闘いにおけるゼンは酷かった。
動きは鈍く、抵抗は脆い。
ハッキリ言って、闘いになっていなかった。
ゼンは決して折れたワケではなかったが、折れていないだけだった。
勝ちの目はなかった。
結果、最初から最後まで、ボッコボコにされた。
――地に伏せるゼンを、アビスは踏みつけて、
「私と、ここまで戦えた君は、間違いなく強い。だが、『強さ』など、『頂点』でなければ、なんの意味もないという事が、よく理解できただろう?」
「……そう……だな……」
ボロボロのゼンは、
「お前の言う事は……いちいち正しい……」
惨めな現状を飲み込んで、
「正直……かなり強くなれたと……自惚れていた……『弱さ』を理解できるくらいには……強くなれた、と……けど……」
ゼンは、いろんな感情を含んだ涙を流しながら、
「俺は……ただのゴミだった……何も出来ない……ただの……」
「いや、君は強い」
自己全否定に陥りそうになったゼンに、アビスは言う。
「そして、強くなれる可能性も秘めている。今は、足りない部分があるだけだ。不足を補って、根柢の魂を磨き続ければ、いつか、本当の強さを手に入れられるだろう」
「……」
「負けたとはいえ、私とここまで戦えた君は非常に素晴らしい。君は価値がある。だから、特別に、チャンスをあたえよう」
「……ちゃんす……?」
「足りない部分を補うチャンス。まずは、最低限となる『非情さ』を手に入れるのだ」
「……」
そこで、アビスは、ゼンを踏みつけている足をどけた。
そして、いまだ、スロウ状態の中にいるハルスたちを指さして、
「彼らをその手で殺したまえ」
「っ」
「君の『中』には、ずいぶんと『ヌルい甘さ』がみられるように思う。それではダメだ。徹する事すら出来ぬ者に未来はない。『己のために、他者を食い尽す気概』もない者など、頂点には辿りつけない」
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