センエース~経験値12000倍のチートを持つ俺が200億年修行した結果~(コミカライズ版の続きはBOOTHにて販売予定)
18話 気が遠くなる試練。
18話 気が遠くなる試練。
剣を振るのでも、魔法を使うのでも、ダメージを負うのでも、
とうぜん『疲労』は生じるし、そしてドンドン溜まっていく。
HP・MPの『値』の回復はするが、疲労がゼロになる訳じゃない。
精神的な疲労と共に『蓄積』されていく。
(100日間、ずっと分身を使い続けるとか……いやいや、流石に無理だぞ……)
だが、実際のところ、現時点で既に、分身なしでは倒せないところまできている。
(か、仮に、どうにか、気力を振り絞って、分身やその他の魔法やグリムアーツを100日間、使い続ける事が出来たとしても、そもそも敵を殺しきれないんじゃ、話にならない……お、俺、死んだ……)
決して諦めてはいない。
どんな絶望を前にしても、『抗い続ける事が出来る』というのがセンエースの最も特出した異常性。
ゆえに、闘い続ける事はできる。
諦めて膝を折ったりはしない。
――が、
実際のところ、普通に考えて無理。
諦める云々の問題ではない。
『こんな異常なペース』で強くなっていく相手に対応し続ける事は出来ない。
単純な算数の話。
ただの事実。
非情な現実。
(終わる……死ぬ……何か、生き残る道……なにか……ないっ……くそっ……)
ジワジワと、真綿で首を絞められるように、追い詰められてくるゼン。
常人では間違いなく耐えきれずに発狂してしまうであろう絶望の中で、
「くそがぁああ!」
それでも、ゼンは、集中力を切らさず抗い続けた。
「俺はぁあ! 死ぬわけにはいかねぇんだよぉお!」
ゼンとシグレ、二人ともが冒険者試験に合格しなければ、シグレは無間地獄に落ちてしまう。
ここでゼンが死ねば、シグレの地獄落ちが決定してしまう。
その事実が、ゼンを突き動かす。
『もともと備わっている鋼の精神力』を支える、責任という器に注がれた『覚悟』。
無我夢中で、必死に闘い続けるゼン。
――その途中で、気付く。
(……ん? ……あんまり強くなって……ない……)
10回目を境に、敵モンスターの強化が非常に緩やかになった。
HPがわずかに上昇したり、多少火力が増したりと、
確かに、『間違いなく強化はされている』ものの、
ギリギリ対応できる強さに収まってくれたので、
(こ、これなら……死力を尽くせば、なんとか……っっ!)
ゼンは必死になって闘った。
魔法もグリムアーツも総動員して、とにかく、敵を殺し続けた。
闘って、闘って、闘った、闘って、闘った。
★
――闘って、闘って、闘って、
(まだ100……この1万倍……で、できるわけねぇ)
100体目のモンスターを倒したところで、ゼンはへたりこんだ。
「ぜぇ……はぁ……はぁ……」
頭がつぶれそうになった。
彼我の差が、毎回、常に絶妙。
少し気を抜けば負けてしまうというバランスが、
ゼンの精神を的確にゴリゴリとすり減らす。
ゼンの様子をずっと見学していたアビスが、
『まずは、100匹の撃破、おめでとう。ご褒美として、この水筒をプレゼントしよう。無限に補充される夢の水筒だ』
目の前に出現した水筒を掴みとると、ゼンは、ゴクゴクと飲みだす。
ついでに、神実を一粒舐めておく。
『それと、これをプレゼントしよう。排泄不要になる指輪だ』
アビスが指をパチンと鳴らすと、ゼンの指(革手袋の上から)に指輪が出現した。
『これで、尿意を気にせず、闘い続ける事ができるな。さあ、まだまだここからだ。がんばっていこうじゃないか』
10秒の休憩はすぐに終わる。
当たり前のように、101回目の戦いが始まった。
(ほんとに、ぶっ通しかよ……やべぇ……意識が遠のく……)
失神しそうになった。
歯を食いしばった分だけ、心が摩耗する。
最初のころは、反射的に、何度も『ちょっと待ってくれ』と弱音を口にしていたが、
もはや、その気力もない。
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