センエース~経験値12000倍のチートを持つ俺が200億年修行した結果~(コミカライズ版の続きはBOOTHにて販売予定)
55話 予選があまりにもタルいんで、試験官ごっこを開始するセン。
55話 予選があまりにもタルいんで、試験官ごっこを開始するセン。
「さて、それじゃあ、そろそろ出口を探すとするかね。ちょっと忘れかけていたが、今は冒険者試験の真っ最中。ここから先、思いのほか脱出に手間取って、時間切れで失格なんて、笑えねぇ」
と、そこで、それまで黙っていたフッキが、
「我が主よ。わたくしをねじ伏せたあなた様は、ここ『パラソルモンの地下迷宮』の支配権を得ております。出入りはもちろん、各フロアの監視も改造も自由自在でございます」
恭しい態度でそう言った。
「ん? そうなの? へぇ……」
言いながら、センは、フッキの頭部に手をあてて、
「ちょっと、お前の全部を見せてもらうぞ」
「すべて、主が望むままに」
センは、フッキのメモリをくまなく探った――が、
(俺がここにくる前のデータが破損している……修復は……ああ、こりゃ無理だな。残滓すら掴ませねぇ、ハンパなく徹底した『処理』が施されていやがる。えげつねぇ執念……まるで、『禁域の無人都市』なみのイカれた情報排除ぶり……かぶるねぇ、もろもろが……)
色々と思案してみたものの、今の状況では答えを導き出すことは不可能そうなので、
(まあいい、なら――)
直後、センは、いくつかの情報収集スキルを使いつつ、
「なるほど……確かに、これなら、いつでも外に出られそうだ。マルチモニターで各フロアの監視も容易……おっ」
確認を取る途中で、
「ゼンチーム発見……ん、こいつら、なんか、妙なコトやらされてんな。99階から出口まで、一匹ずつボスを倒しながら駆けあがっていくゲーム。また、ずいぶんとタルいことやってんな。そんなヌルい試験じゃあ、ゼンの成長の妨げになるだけだぜ」
言いながら、センは、目の前にエアウィンドウを表示させ、
「クソゲーは消毒だ。ゼン、覚悟しろ。いい機会だし、ここからは、俺がお前の試験官をやってやる。はたして、お前は俺と合体するに値する器かな?」
サササっとコードを書き換えると、
センは、
フッキに視線を向けて、
「ちょうどいいから、予選のラスボス役は、お前にやらせよう。失敗したらデリートだ。死ぬ気で挑め」
「御命令、承りました。死力を尽くすと御誓いします」
そこで、シューリが、
「今のゼンに、そこのガラクタをぶつけたりなんかしたら、ゼンが死ぬだけだと思いまちゅけど、いいんでちゅか?」
「もちろん、制限は加えるさ。フッキの性能を、今のゼンでは『どう頑張っても勝てない』くらいにまで調整する」
「どう頑張っても勝てないんじゃあ、結局、死ぬんじゃないでちゅか?」
「はっ、『どう頑張っても勝てない程度』の『ザコ』に負けるようなゴミは俺じゃない。フッキのテストを経たことで、あらためてよく分かった。俺のビルドにハンパなノイズはいらない。『調整されたフッキ(テスト用の絶望)』にも勝てないようなカスは、ここで死んでもらう」
「他者には甘々なのに、自分に対してはとことん厳しいでちゅねぇ」
「俺が他者に甘い? ちょっと何言っているか分からないな。相変わらず、お前は言論がトリックスターすぎて挨拶に困る。そういう、『幻覚が見えているとしか思えない奇抜な発言』は控えた方がいいぞ。これはセンさんからのガチアドバイスだ」
などと、シューリに負けず劣らない面倒臭さを発揮してから、
「ただ、『俺が自分に対して厳しい』って点だけは、的確に事実が捉えられて、大変よろしい。まったくもって、その通り。俺は、俺に対して、甘えを一切ゆるさない」
言いながら、モニターでゼンを確認しつつ、
「地獄を見せてやる。超えてみろ、ゼン。もし、クリアできたら、『あるいは将来的に使い物になるかもしれないサブシステム』をプレゼントしてやる」
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