センエース~経験値12000倍のチートを持つ俺が200億年修行した結果~(コミカライズ版の続きはBOOTHにて販売予定)
50話 終わらない敗北。
50話 終わらない敗北。
シューリは、続けて、言い切る。
「けれど、どうでもいい」
悩んだ時期もあった。
結局、自分は無価値なのか?
自問自答を繰り返した時期もなくはなかった。
が、そんな疑問すら、
『なんでそこまでするか? 難しい質問だな。なぜなら、理由がないからな』
『お前に憧れた。だから、俺はここまでこられた。あえてこじつけるなら、それが理由かな。こじつけたっつっても、別に嘘じゃねぇが』
『お前とソンキーには、永遠に、俺の目標であってもらいたいんだよ。そんだけ』
『心配すんなよ、シューリ。必ず見せてやるから。本物のハッピーエンドをプレゼントしてやる』
『シューリ。今日だけは……お前だけのヒーローをやってやる』
『ソウルゲートに利用時間を問われたあの時、お前の顔が浮かばなければ、200億年なんてアホな数字を選ぶことはなかった。つまり、俺があれだけ苦しんだ原因は、すべて、お前にあると言わざるをえない! よくも俺に地獄を見せやがったな、法廷で会おう!』
――あの男は、ふっ飛ばしてくれた。
センエースは、シューリ・スピリット・アースが長年抱いていた『ちっぽけな悩み』を消し飛ばしてくれた。
シューリは想う。
センは、自分に、『なによりも大事なモノ』をくれた。
それは、キラキラしていて、あたたかくて、絶対に守りたいと思える大切な居場所。
「誰がなんといおうと、『センエース』は、シューリ・スピリット・アースが心血を注いで磨いた結晶。何も持たないカラッポの女神が誇る唯一の宝物。あの子だけが、あたしの全て」
「……」
気圧されて黙るアダム。
覚悟の圧にねじふせられる。
『想いの量』で負けているとは思わない。
だが、『歴史』という数的暴力の前では怯まざるをえない。
そこで、シューリは目を開けて、いつものニタニタ顔に戻り、
「だから『捨てまちぇん』よ。絶対に」
歪んだプライドの奥に在る、本物の誇り。
けっして手放さないと決めた誓い。
絶対に砕けないと痛感する底意地。
歪んだ女神が抱く、まっすぐな愛。
アダムは、ついに気付く。
この女神と男を競う無謀。
だが、同時に、
(知るほどに、遠く、大きくなっていく……主上様……私は、あなた様の果てしない美しさに見合う耀きを有しておりません。けれど、諦めようなんてサラサラ思いません。これほどの覚悟を決めた女に想われているあなた様を、これほどの女を想っているあなた様を、けれど、失いたくないという想いばかりが強くなっていく)
釣り合っていないとか、
不相応だとか、
無謀だとか、
相応しい相手は既にいるとか、
事実としてこの女には勝てないだとか、
そういう、どうでもいい言い訳が、むしろ、ドンドン消えていく。
歴史では勝てない。
それは事実。
だが、なればこそ、これから、深く、密に、積み重ねていこうと強く想えるのだ。
★
センの拳は、フッキの全てを破壊した。
次元を掌握し、空間をねじ伏せるセン。
その威容は、まさしく、舞い散る閃光。
――ボコボコに、
ただボッコボコにされるフッキ。
無抵抗だった訳ではない。
フッキは必死に闘った。
殴り合いしか出来ない、この限定空間で、
センを倒す道を、必死になって模索した。
フッキの存在値だって、数十兆。
つまり、その拳は次元を裂く嵐。
フッキの拳だって、当たり前のように、強大で、膨大で、壮大で――
「……や……」
――信じられない速度の剛拳が飛び交う激嵐の中で、
「やめ……ろ」
フッキは、
「やめてくれ」
いまも抗い続けながら、しかし、
「それ以上……俺に勝たないで……」
泣き虫の声で、脆い弱音をこぼした。
負け続けるまでもなく、
もう、とっくの昔に折れていた。
「俺が……俺でなくなっていく……」
センとの濃密な闘いで、
フッキは、強くなった。
ほんの数分の戦闘。
だけれど、驚くほど濃厚な時間。
センの一手一手が、フッキの一つ一つを解放していく。
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