センエース~経験値12000倍のチートを持つ俺が200億年修行した結果~(コミカライズ版の続きはBOOTHにて販売予定)
37話 『神の王』がいる場所。
37話 『神の王』がいる場所。
センは、毘沙門天の剣翼を消し去り、
右足で地面をトトンッと二度踏んだ。
すると、この空間が、真っ白で何もない世界に包みこまれる。
「ここは、殴り合いしか出来ない空間……小細工が使えない、退屈な世界」
――つまり、『はかる』にはうってつけの静かな領域――
と、言葉をつけたしてから、
センは、両の拳を握りしめ、優雅に構えつつ、
「俺に触れてみろ、ガラクタ」
それは、スキのない、自然体の構えだった。
軸がわずかもズレない静かな構え。
純粋理性の終着点に至ったフッキは、
だから、センの最終試験を前にして、真摯に、
「究極超神センエース。お前を殺せば俺は俺になる。……俺が俺であり続けるために……俺は必ず、お前を……『最強の神』を殺す!」
飛び出す。
五里霧中からの脳死突進。
振り回す拳の風圧が空間を刻む。
けれど、センには届かない。
フッキにとってのセンは、まるで霞みたいで、触れる事もできない。
それでも、フッキは、あらがい続ける。
いまだ、フッキの頭の中はグチャグチャで、
『今の状態』は、『万全な状態』と比べれば、
まあ、それはもう酷いモノだった。
――なのに、
(……俺の中で、鋭さに色がついていく……)
研ぎ澄まされていく。
飛び交う拳だけが全ての地味で退屈な世界。
『鮮やかで綺麗な残像』なんて存在しない。
泥臭い残滓だけが世界を埋め尽くしていく。
このモノクロな世界で、
フッキは磨かれていく。
(……『俺』が更新されていく。『俺を置き去りにした俺』だけが、『今の俺』になっていく……)
平衡を壊し続ける闘い。
舞い散る閃光は、常にフッキの半歩先にいる。
これまで通り、常に、常に、半歩先。
『神の王』が美しく舞うと、フッキの視界が広がっていく。
すべてが、再構築されていく。
偉大なる神の煌めきは、1秒を飲み込んで、加速していく。
フッキは、神についていく。
必死になって、くらいつく。
――センエースとの闘いの中で、フッキは、
(壊れて……再生していく……)
何が?
それには答えられない。
まだ、その答えには届いていない。
いまだ、フッキは、最後のピースを得ていない。
しかし、確実に近づいている。
毘沙門天の剣翼は消えている。
つまり、今、センエースの背中に『目に見える後光』はないはず。
なのに、どうして、センエースの耀きは、果てなく増していくのだろう。
かの神を照らす光は、むしろ、今の方が、より強く大きくなっている。
★
――そんな、『果てなき耀き』を放つ『愛しき主』を、
少し離れた場所で、
一秒たりとも逃すまいと、食い入るように見つめている狂信者が一人。
アダムは、
「……美しい……」
装飾なき賛美を口にする。
涙と想いが溢れ、言葉がこぼれた。
曇りを失った瞳が、釘づけになる。
「ぁあ……尊い……」
恍惚に包まれる。
遥か高次の祝福。
この時、アダムは、
『センエースの美しさが理解できる自分』を誇らしく思った。
そこらのカスでは、『この上なく尊い主の一手』を追う事すら出来ない。
だが、自分の目は、主を追う事ができる。
全てを完全にとらえる事は出来ないが、
『主がどれほど美しいか』を理解するだけの能力は有している。
それもまた、主のおかげであるという事実に胸が熱くなる。
自分は、この御方に選ばれた。
自分は、この御方の従者なのだ。
分不相応である。
そんな事は知っている。
自覚はしている。
『アダム』という矮小な個は、『無上なる主』の従者として、あまりにも不適格。
センエースほどの神に仕えられる力など有してはいない。
だが、辞退する気はない。
「……主上様……知るほどに遠くなる神の神……あなた様が、どこにおられるのか、愚かな私はいまだ、理解できぬままで――」
「え、お兄なら、あそこにいまちゅよ。ほらほら、手を振ったら、振り返してくれまちゅよ」
「……」
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