センエース~経験値12000倍のチートを持つ俺が200億年修行した結果~(コミカライズ版の続きはBOOTHにて販売予定)
36話 最強じゃないと――
36話 最強じゃないと――
目はさめた――が、意識はもうろうとしている。
だが、もう、すべてが、グッチャグッチャになっていて、ロクに視点も定まっていない。
頭がガンガンしていて、形容しがたい不快感の塊が全身を包んでいる。
チリチリィ! ジクジクゥ! とした神経の悲鳴だけが、絶え間なく続く。
「ぁあああ……うぅ……ごはっ……」
「サイコジョーカーの余韻を楽しんでいるヒマはないぞ。追試をはじめる。もう後はないから頑張れよ」
センの声が耳に届く。
理解しようという気にならない。
とにかく、ただ辛くて仕方なかった。
――だが、
「第一問。お前は最強か?」
その質問には、魂が反応した。
だから、
「さい……きょう……お、俺は……」
「どうした。お前にとってはラッキー問題だろう。これは、『確実に稼いでおかなければいけない点数』の一つ。そうだろう?」
「おれ……は……」
必死に、
「……最強、だ……」
言葉を紡ぐ。
それを否定する事だけはできない。
どんな状態になろうと、どれほどの苦境にたたされようと、
『ソコ』からは……『ソレ』にだけは、目をそむけるわけにはいかないんだ。
――だって、それ以外、自分には何も――
フッキの回答を聞いて、センは言う。
「198点くれてやる。これで合計700点だな。もうちょっとで足切りを突破できるぞ。もしかしたら。二次試験に進めるかもしれないな。がんばれ」
センの言葉など一切シカトして、フッキは、
「俺が最強だ……俺が……」
己の全てを振り絞って言う。
「最強じゃないと……いけないんだ!」
食いしばって叫んだその姿を見て、
センは問う。
「なぜだ?」
「……」
センの第2問に、フッキは黙った。
つなぐように、センは言葉を続ける。
「この問題は、かなり配点が高いから、心して答えろ。これで『足切り突破』か『否か』が決まると言っても過言じゃない。そういう大切な大問――だから、特別に、もう一度だけ、問いかけてやる。第二問、お前はなぜ、最強でなければいけない?」
「な、ぜ……」
言葉を反芻するフッキ。
「俺はなぜ……最強でなければ……いけないんだ……」
『答えだけを暗記』していた『問い』の検算に挑んでみると、
その底は、おもいのほか深くて溺れかけた。
アップアップしながら、
「最強は……俺だから……」
必死になって言葉を探すフッキ。
『問い』の底で、無我夢中にモガいた結果、
自分が探し求めているモノは、
『整えた言葉』じゃなくて『むき出しの本質』だと気付き始める。
自我の奥底で、プログラムの向こう側を模索する。
「俺は最強で……つまり……最強は俺で……俺は……」
イコールが示す期待値の帰結。
誰もが持つ、己に対する懐疑。
心の鏡に向かって、自問自答。
――お前は誰だ。
「なぜ、俺は……俺でなければいけない……」
問いが問いを連れてきて親友になっていく。
結びつきが強固になって、その分、
わけのわからない質量が増えていく。
「最強とは……俺とは……なぜ、なぜ、なぜっ――」
存在意義を問う。
『答えの出ない問題』をどうにかするための『補助線』を導き出すために、
『答えの出ない問題』を解かなければいけない。
無情な所業。
理不尽な不条理。
難問と言う名のイチャモン。
終わらない矛盾の最奥で、フッキは、
「知るか、そんなもん……っ」
『答え』に辿り着く。
真理から遠ざかって、だから、心理に余白ができる。
理知が死んで、枠ができる。
いまだ器には成り切っていない、感情論のSOS。
「知った事か、そんな事……っ!!」
だから、立ちあがる。
立ちあがることができる。
純粋理性の臨界点を超える。
フッキは、その両手と両足に力を込めて、センと相対する。
そして、言う。
「センエース。……お前を殺せる者は間違いなく最強……だから、俺は……お前を殺す」
フッキの最終解を受けて、
センは、静かに目を閉じた。
そして、
――ゆっくりと頷いて、
「それでは、二次試験を始めよう」
正真正銘、最後のテストがはじまる。
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