センエース~経験値12000倍のチートを持つ俺が200億年修行した結果~(コミカライズ版の続きはBOOTHにて販売予定)
30話 自重はやめた。
30話 自重はやめた。
フッキの攻撃は届いている。
間違いなく、センにダメージは入っている。
ちゃんと、目を凝らせば、センの動きも、見えなくはない。
対応はできている。
反撃は受けているが、高い精度で全方位に気を配ってさえいれば、致命傷は避けられる。
(いまのところ、受けているダメージは、俺の方がわずかに多い……だが、これは、逆転できる差……俺はこいつに勝ち切れる!!)
――そんな風に思っていた。
最初の頃は――といっても、二分ほどだが、
フッキは、最初の頃、そんな事を思っていた。
勝ち切れるはず。
自分の方が強い。
強がりではなく、本当に、そう思える部分もあった。
だが、時間を重ねるにつれて、
(つかみどころが……ない)
そんな風に思うようになった。
まるでマラソンでもしているような気分。
※ 経験はないが、セイバーリッチの知識にはある。
前を走っている者の背中に、ようやく追いついて、『さあ追い抜こう』と思ったら、ちょっと加速されて、少し離される。
それにも、どうにか追いついた、と思ったものの、また――
ここ数分、そんな事を繰り返している。
(どういうわけか分からないが……一向に、こいつのスタイルが見えてこない)
踏み込みに合わせられる。
少しでも気を抜けばバランスを崩される。
気付いた時には軸がズラされていて、有利が取られている。
呼吸が掴めない。
常に、どこかがズレている。
センのガードに堅牢さはない。
いつも、グニャグニャと柔軟。
届く直前で、ヒラリと受け流される。
まったく派手さのない、地味な削り合いが続いた。
まるで、心を一枚ずつ削いでいくような闘い。
「あああ、イライラする闘いだ! くだらない!!」
ある時、ついに、この息苦しい状況に耐えきれなくなって、フッキは叫ぶ。
「こんな、チマチマチマチマ、やっていられるか! 一気にカタをつけてやる!」
そこで、フッキは、バンっと、合掌すると、
「ここまででも『随分とやり過ぎた』と自覚している。次元違いに最強の俺が、大人気なく本気を出して、みっともない……この上、ほとんど反則でしかない『アレ』を使うのは流石に如何なモノか、と自重していた――が、もういい! 俺の全力に圧殺されやがれ!」
フッキの発言を聞きながら、センは、
(六分三十二秒で爆発……堪え性はなし。『脆い』と断定できるほどじゃないが、決して強いとはいえない精神力。ここまでの評価だと、デリート確定な訳だが……さぁてさて)
「瞠目しろ! 魂魄に刻め! そして、血を冷たくするがいい! これが、真なる神の王の全力だ!」
フッキの言葉を聞きながら、センは、
(エグゾギアの強化モードを使うんだろ? わかってるから、はやくしろよ)
メンドくさそうにアクビをしながら、心の中でそうつぶやいた。
センのアクビが視界に入っていないフッキは、意気揚々と、
「開け、天影太陰モード!!」
宣言の直後、ハイドラ・エグゾギアが翡翠の粒子に包まれる。
そして、
同時に出現した複数のジオメトリから、『緑のオーラを放つフッキの影』が出現した。
本体と同等の禍々しいオーラを放っている暴力的な影。
その数8体。
本体と合わせると、『セイバーリッチ・フッキ(ハイドラ・エグゾギア)』は、全部で九体におよぶ。
「どうだ! 俺一人でも大変だったというのに、ここからは俺を九体相手にしないといけない! 言っておくが、天影は、オーラドールとはワケが違うぞ! こいつらは、ある意味で、俺よりも強い影! 無尽蔵のオーラと魔力を有し、かつ不死身! 俺が死ぬまで、こいつらはお前を殺し続ける!」
うれしそうに、
「ははは! 過酷な事実が、無慈悲な現実が、お前の全てを覆い隠す! お前の恐れが伝わってくるぞ! そうだ! それでいい! それこそが聖なる絶望!」
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