センエース~経験値12000倍のチートを持つ俺が200億年修行した結果~(コミカライズ版の続きはBOOTHにて販売予定)

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19話 リザルト

 19話


 その絶望は、結局のところ、5分で死んだ。
 あっけないものだった。
 たいがい、闘いというのは、始まる前に終わっている。


 ネオどもが、本物の知性を持つ魔人や進化種だったならば、ゴート側が負ける可能性もなくはなかった。
 かなりぶっ飛んだ仮定の話をするが、もしネオに『センエースに匹敵する魂』が備わっていたら、むしろ、ネオサイドが勝つ可能性の方が高かった。
 鬼たちが、烏合の衆ではなく、絶対的な精神的支柱を有するチームだったら、UV1とスリーピース・カースソルジャーという強大な壁も突破できただろう。


 戦力差は、その程度でしかなかった。
 気概で揺らぐ程度の危うい均衡。


 だが、ネオ側は、『意志も覚悟もなく、ただ本能に従って迎撃しているだけのモンスター』の集団。
 ならば、戦力的優位に立った時点で勝利は確定。


 『100と95どちらが大きい数字ですか?』――そんな、小一の算数ドリルレベルの問題になりさがる。




「……もう……出てこない……わね……ふぅ……」




 ネオヘルズ覇鬼を豪速(三分半でカタをつけた。タイマンは得意じゃないが、決して苦手じゃない)で処理して、
 かつ、ボッコボコにされて殺されかけていたスリーピース・カースソルジャーを助け、
 ヘルズ六匹を殺しきったUV1(カースソルジャーが三体がかりで天才型をおさえこみ、その間にUV1が五匹を殺し、最後に、天才型を囲んでフルボッコ。完全な勝利だった)。




 実際の話、カースソルジャーは、戦力として微妙だった。
 ヘルズどもの猛攻をどうにかこうにか抑える事しか出来なかった。




 わずかもダメージを与える事はできず、チョロチョロとヘイトを集めつつの回避タンクに徹して、『UV1がネオヘルズ覇鬼とのタイマンに集中できる時間』を稼いだだけ。


 ――UV1が神のように強かった。
 結局は、それだけが印象的な闘いだった。




「は、はは……流石、未来の神様。えげつない強さっすね」




 鬼気迫るUV1の戦いぶりを見せつけられたゴートは、思わずそうつぶやいた。
 それに対して、UV1は、


「……私一人では勝てなかった。あんたのカースソルジャーが後方を抑えていてくれたから対処できた。目覚ましい活躍だったとは言わないけれど、あなたがいなければ、私は死んでいた。それは事実。誇れとは言わないけれど、その現実は把握していなさい」


 互いに健闘をたたえ合う。


 別に、だからって、絆的な何かなんて出来ないが、


「ありがとうございます……そう言ってもらえて……まあ、うれしいです」


 両者とも、『支え合って、この局面を乗り越えた』という事実を認識しあう。


 わずかに、弛緩した空気が流れた。
 どちらも、得意ではない空気。
 妙なテレが二人を襲う。






 この妙に緩んだ空気を打破するように、ゴートが、ボソっと、


「し、しかし、どういう事なんでしょうね……」


「なにが?」


「ここは、存在値30前後のモンスターしか沸かないダンジョンのはずなのに……」


 パラソルモンの地下迷宮は、南大陸に太古から存在する旧いダンジョンで、
 この世界での評価では、『超難関ダンジョン』の一つ。
 だが、最難関という評価は、所詮エックス(原初の世界、表層)基準での話。


 沸くのは最下級や最々下級のモンスターがほとんどで、ごくまれに『下級』が沸く程度の、アルファ視点では中~下級のダンジョンでしかない。




「なぜ、ここに、あんな異常な力をもったモンスターが……」




「本当に不思議だわ。『純粋にただ高位のモンスターが沸いた』というだけで、壊れ堕ちたって訳でもなかった……いったい、どうして……」


「壊れ堕ちる? なんのことすか、それ」


「モンスターは、たまに、コアオーラに異常が生じて壊れ堕ちる。進化や覚醒のし損ないなんて言い方をすることもあるわね。大概、極端なほど存在値が跳ねあがるけれど、基本、自制心等を失って、ただ暴れるだけの迷惑な暴走機関車になる。絶死のアリア・ギアスと少し似ているけど、根本の原理が異なる」





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