センエース~経験値12000倍のチートを持つ俺が200億年修行した結果~(コミカライズ版の続きはBOOTHにて販売予定)

閃幽零×祝@自作したセンエースの漫画版(12話以降)をBOOTHで販売中

6話 センエース補完計画

 6話










 目的の場所に辿り着いたゴートは、


「……アレか。はは、ほんとに扉が浮かんでいやがる。ファンタジーだねぇ」


 パラソルモンの地下迷宮に繋がっている扉は浮遊している――記憶通りだった。
 その浮遊している扉の目の前までくると、ゴートは、興味本位に身を任せて、コンコンと軽くノックしてみる。
 別に、中にいる誰かに、お伺いをたてたわけではない。
 ちょっと、材質を確かめたかっただけ。


「石……じゃないな。ただ、これ、鉄って感じでもないな」


 ラムドの頭の中にも、さすがに、パラソルモンの地下迷宮を構成している材質とうに関する詳しい情報はなかった。


 グッっと、強く押してみると、ギギっと音をたててゆっくりと開いた。


 手を離すと、また、ギギっと音をたてて、ゆっくりと元の位置に戻ってバタンと閉じた。




「……何をしているの?」




 UV1から聞かれて、ゴートは答える。


「ちょいと色々体験学習してみているだけですよ。あと、噛みしめてもいますね。夢の異世界転生。初のダンジョン挑戦。ふふ……」


 つい微笑んでしまう。


(ちょっとレベルを上げにきただけだってのに……こんなにもワクワクするかね。はっ、歳を考えろよ、俺)


 歳を取ると共に、感情はどんどん希薄になっていった。
 感動なんてしなくなった。
 興奮もひさしくしていない。


 あっちにいた頃は、ガキのころからずっと、実に無機質な毎日を過ごしていた。
 早稲田に受かった時も、国家公務員試験一種に受かった時も、受かるために必要な時間を積んだがゆえの結果でしかなかったので、別に嬉しくともなんともなかった。


 大学時代も、とうぜん、入学式から卒業式までずっと、一貫して孤高を選んだ。
 センエースは、いつでもどこでも、センエースで在り続ける。


 中学時代の『蝉原との一件』で、『早稲田の法学』と『国家公務員一種』を受けると決めて以降、一秒たりとも無駄な時間は過ごさなかった。


 基本的には、1日に2時間の読書タイム以外では、朝から晩までずっと試験勉強。
 週に3回、近所のボクシングジムで体を鍛える時以外は、ずっと試験勉強。
 これで受からなかったら、逆に誰が受かるんだって言いたくなるほど、センエースは時間を積んだ。




 異世界関係の仕事も、最初の最初は、まあ、もちろん、興奮したが、結局、異世界的な結果をもたらす動力源がない第一アルファでは、さほど面白い体験はできなかった。
 しだいに、コスプレにしか見えなくなってきた亜人と、ちょっとした猛獣としか思えなくなってきたモンスターの対処に追われる日々。
 山ほどある仕事に忙殺されて、気付けば完全に慣れて、異世界関係の仕事を、酷く事務的に処理するようになっていった。




 なぜだか妙にトントンと出世していく事に、最初は軽い興奮を覚えた事もあったが、そんな事によるドーパミンの放出なんざ最初の最初だけで、出世するほどに、仕事量と難易度が増して(異界関連の仕事に耐えきれずにやめていくヤツや、事故的に死ぬやつが多かったため。――異質な魂魄を持つセンセースだからこそすぐに慣れる事ができた。異世界関係のトラブルシューター。その激務は、不屈の精神力がなければ、なかなか続けられない仕事)、次第に出世という言葉を聞くだけでイラっとするようになっていった。




『これ以上、俺に何を押しつけようってんだ! そんなに、俺を殺したいか!』




 性格には普通に問題大アリ、しかし、根性は筋金入り。
 どんな無理難題を前にしても、絶対に逃げ出さず、最後には必ず結果を出してみせる稀有で貴重な人材。
 変人・奇人ばかりの公安第五課でもぶっちぎりナンバーワンの偏屈野郎。
 しかし、他の連中と違って空気が読めないわけではなく、ある程度の常識も身につけている。




 ――結果、上から気に入られ、気付けば課長となっていた。
 ――五課ほどの異質な激務に耐えられる者はそうそういない。
 ――五課はほとんど異世界みたいなもの。
 ――しかし、ならば、センエースは、全世界の誰よりも輝ける。
 ――成長チートと無限転生だけがセンエースの全てじゃない事の証明。










 階級警視長・役職公安課長。
 聞こえだけはいいポジションだが、実態は、面倒事のポリバケツ状態。
 とにかく、なんでもかんでも押しつけられて、いつも五臓六腑はキリキリ舞い。


 そして、トドメとなる蝉原事件の発生。


 蝉原対策チームとして闘っていた時は、ただひたすらにガムシャラに不眠不休でモガいていただけで、実際のところ、あまり記憶がない。
 とにかく必死だった。
 泣きたいのを我慢して抗った。
 それだけだった。










「――さぁて、それじゃあ……入りましょうかね」




 ボソっとそう言ってから、ゴートは、浮遊する扉の中へと足を踏み入れた。


























 ――  裏イベントスイッチ002 ON  ――


 『D型センエース17兆7777億6555万3321号』の侵入を確認。
 『パラソルモンの地下迷宮』のアップデートを開始します。


 ~~完了。


 パラソルモンの地下迷宮は、
 真パラソルモンの地下迷宮に進化しました。















  【ラスボス・プロジェクト(センエース補完計画)】
  ・ファーストフェイズ終了確認。
  ・セカンドフェイズに移行する。


                            』











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