センエース~経験値12000倍のチートを持つ俺が200億年修行した結果~(コミカライズ版の続きはBOOTHにて販売予定)

閃幽零×祝@自作したセンエースの漫画版(12話以降)をBOOTHで販売中

37話 神帝陛下に、俺はなる!

 37話






 UV1の本当の切札は、次元跳弾に、敵のオーラを削る秘伝のウイルス(対抗策が極めて少ない)をぶちこむ事による、リソース削り戦法。
 実力差がある相手にも、必ず『何か』は『残せるように』と磨いた力。
 『自分よりも遥かに強い者達』を知っているからこそ辿り着いたビルド。
 他にも、UV1は、無数の切札を隠し持っている。
 どれだけの強者であっても、必ず、ツメ跡は残せる、デバフ特化ビルド。
 それゆえ真正面からのガチンコタイマンは得意じゃない(決して苦手・不得手ではない)が、中後衛としては非常に優秀な生粋の暗殺者タイプ。










「――は、はは……こんな、強ぇのか……クソが……ハンパねぇ……」










 笑ってしまったゴート。
 愕然としているゴート。


 立ちあがろうとしたが、うまく立ちあがれず、力なくうなだれて、その場であぐらをかく。


 ゴートの頭の中で、記憶が揺れた。
 カースソルジャーと勇者の戦闘記録。
 カースソルジャーはとてつもなく強い。
 勇者でも、一体を倒すのがやっとだった。


 それが、UV1の手にかかれば、三体とも瞬殺(一匹は半殺しだが、それは、半殺しにしか出来なかった訳ではなく、殺さないように手加減しただけ)だった。
 それも、決して全力ではない。
 サっと処理した。
 それだけの、軽い労力で、ゴートの最大戦力――この世界の『表側』では最強といっても過言ではない戦力が、一瞬でチリになった。


(これがゼノリカに属する者の力……殴り合いなら、この女よりも上の長強……これほどの力を持つUV1ですら震えて膝をつく神、『天上のバロール』……さらに、その上にいる五柱の王と、それら全てを統べる三柱の至高神……)


 ようやく理解できた。




 ハッキリと見えたから、


(……くそっ……たれ……)


 深く絶望した。




 けれど、だから、


(くそが……ざけんなよ……)


 だからこそ、ゴートは、


(全部、超えてやらぁ! 目にモノみせてやる! 俺は、必ず、ゼノリカを超えてやるぞ!!)


 ぐっと拳を握りしめる。
 そして前を向く。
 つまり、本気で願う。
 『神を目指すのも面白いかもしれない』などとナメ腐るのではなく、
 『絶対にゼノリカを超える』と自分に誓う。




 そんなゴートに、UV1は言う。


「無礼を詫びなさい。お前の態度は見過ごせない。それを許すことは、ゼノリカの秩序が乱れる事を容認するのと同義」


 ゼノリカの高みは見せつけた。
 ゆえに理解できるはず。
 その前提をもとに話を進めるUV1。


 ――しかし、


「謝らないぞ」


 ゴートはUV1の目を見つめ、ハッキリとそう言った。
 覚悟を込めた拒絶。


 折れないと決めた意志の証明。




「まだ理解できていないというのなら――」


「異世界にきてまで理不尽に屈するつもりはねぇ。……だから謝らない」


「……理不尽……だと……それは、まさか、私の事を指して言っているのか……」


 UV1に本気の怒りがにじむ。




(理不尽の殲滅者、合理の番人、司法の頂点である……この私に……)




 完全にブチ切れた顔でゴートを睨みつけているUV1。




 そのキレた視線を受けても、ゴートは怯まずに、
 むしろ、余計にグワっと牙をむき出しにして、


「そもそも謝る必要がない。俺は見せたはずだ。俺の召喚能力は何も変わっていない。それを疑ってかかってゴチャゴチャ言ってきたのはそっちだ」


 UV1の目を睨みつけて、ハッキリとそう言った。


 頭の中では、『先』の事など考えていない。
 完全に血が登っている。




 『センエース』という男は、ガキの頃から、我を通すと決めたら、驚くほど頑固になる鬱陶しいバカ野郎だったが、第1アルファというクソみたいな世界で歳を取ることで、その傾向がより強くなった。


 頑固で偏屈な面倒臭い男。


 望む世界で暴れて発散してきたセンエースとは決定的に違う点。
 極限まで抑圧された38年を生きてきたセンエース。
 その




「謝罪するなら、そっちだろうが」




 死をないがしろにして、『折れない』と決めたゴートの目を見て、
 UV1は、怒りよりも、面倒臭さを感じた。


(とてつもない我の強さ……)


 理不尽扱いされ、一気にカーっとなったことで、逆に冷静にもなれた。
 いつだって、人間とは不可解なもの。
 複雑というよりは混沌。


 極端な面倒臭さを持つゴートの厄介さを前にして、


(鏡にも見えてしまうのは……なぜだ……)


 UV1は、自分の中にある極端さを自覚した。
 相手が蛇に見えたのは、自分が蛇だから。
 絶対的な概念ではないが、そういう奇怪さも併せ持つのが人間という業。




 これは、パニックになっている者を見たら、冷静になってしまうアレでもある。
 ブチ切れて喚いている者を見た時に、ああはなりたくないと思うアレもあった。
 いつだって、人間は、一つのギアでは動かない。
 混沌とした歯車が生み出す解答エネルギーを求めあって、だから異質に歪む。




 UV1は冷静に考えた。
 今、直面している、この面倒。
 ゼノリカの常識。
 そこと照らし合わせたがゆえに起きた齟齬。
 ゴートという男の人間性。
 自分という存在の立ち位置。




 ――合理はどこにある?




 自問。
 深くなるほどに冷たくなる。
 感情は棚において、理屈で処理をはかろうとした。
 結果、










「悪かったわね」










 UV1は謝罪した。










「なんだ……急に」


「どうするのか見てみたくなったのよ。私は謝ったわ。それで? お前はここからどうする?」





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