センエース~経験値12000倍のチートを持つ俺が200億年修行した結果~(コミカライズ版の続きはBOOTHにて販売予定)
57話 優越感
57話
顔を真っ赤にして、なんの思惑もなく、だだっこのように、
「憎い! 憎い! 憎い!」
「どうしたんでちゅか、急に。落ちついてくだちゃいよ、ディアフレンド。ほらほら、オイちゃんたちはお友達でちゅよね? お友達は仲良くするもんでちゅよ」
「黙れ、うるさい! そんなくだらない事は忘れろ! どうでもいい!」
「おやおや、ひどいでちゅねぇ」
などと、軽口を言いながら、しかし、実際のところ、シューリは動揺していた。
もちろん、当然、アダムのフレンドリクエストを信じていたわけではない。
友好を結ぶフリをして懐に入り込み、キバを磨きながらスキを窺う。
非常に分かりやすい一手。
正直、シューリは、その一点に関してだけは、ガチで感心していた。
友達申請してきた時のアダムは、そりゃあもう、感情のコントロールがドヘタクソで『そんなんじゃあ、あたしは騙せねぇよ、バァカ』と呆れたもの。
しかし『迷いなくその一手を打ってきた潔さは感嘆に値する』とシューリはアダムを評価した。
――なるほど、本気のようだな、いいだろう。
こっちも本気で相手になってやろうじゃないか――
だが、今のアダムは、本気で打ってきたはずの一手をペーンと放棄している。
なんの思惑もなく、ただ感情に任せて喚いているだけ。
お粗末だったとはいえ、アダムは、ついちょっと前、盤面に、
『先の先まで読んだ上での切り込む一手』を打ちこんだ。
あの瞬間、シューリは覚悟した。
これは、長期戦上等のタイトル戦。
アダムは、シューリに宣戦布告をしたのだ。
――トコトンやるぞ、覚悟しやがれ。
それを、シューリは受けた。
――いいだろう、やってやる。
シューリが、アダムの覚悟を受け止めて、気合いを入れて、
次の一手を真剣に考えていた、その時に、
アダムは、突如、盤面をひっくりかえして、ワーワーと喚きだした。
――つまり、今のシューリは、『理解ができない』という意味で困惑している。
「私の知らない主上様を知っている貴様が憎い! 主上様に命がけで守られた事がある貴様が憎い! 主上様に……愛されている貴様が……憎いぃ……」
「……」
「私よりも先に出会えた貴様が憎い……それだけなのに、これだけの差があるという事実が憎い……貴様の存在すべてが憎くて憎くて、たまらない……」
「……」
「私では、手に入らない……貴様が持っているものは……私が、この先、何をしても手に入らないものだ……たとえ、貴様を吸収しても、私を構成している一部に、貴様が組み込まれるというだけで……私の欲しい者が手に入った事にはならない!」
「……」
「なんでだ……なんで私ではない……私が、シューリ・スピリット・アースであれば、それですべてが完璧だったのに……ただ、愛する御方と……幸福なだけの日々を……過ごして……包まれて……満たされて……それが世界の全てになったのに……」
ギリギリと奥歯をかみしめながら、今にも血の涙を流さんばかりの勢いで、洪水のように溢れ出る想いを吐きだすだけのアダムを見て、
シューリ・スピリット・アースは、
(……バカなガキ……)
心の中でそうつぶやいた。
つい、失笑がこぼれた。
『呆れ』の二つほど向こう側にある感情に包まれるシューリ。
ドン引きに近いのだけれど、少し違っていて、
(これは本音だ。このガキの本音……よくもまあ、他人に、それほど醜い本音をつらつらと……)
自分には出来ない事だと思った。
が、だからこそ、
(本音か……)
動揺が薄れ、理解が煮詰まった時、ドクンと、魂魄が沸いた。
ゾクゾクと、
脳の奥がくすぐられる。
この感情の正体は極めて単純なモノ。
――暴力的なほどの優越感――
アダムの本音、
『憎い』というその言葉は、言いかえれば、
――うらやましくてたまらない――
シューリは、今、
アダムほどの女から、
『あなたが死ぬほどうらやましい』
と大声で叫ばれているのだ。
コレが『カスみたいな女の喚き』なら何とも思わない、
――アダムがカスなら、『うるさい、黙れ』としか思わないだろう。
しかし、今、シューリの目の前で、シューリを心底からうらやんでいるこの女は、
おそらく、
……というか間違いなく、
シューリを除けば、この世で比肩する者がいない究極の美少女。
その美しさ、
その強さ、
その可能性、
すべてが完璧な女。
そんな女が、
『うらやましい』
『うらやましい』
と、血走った目で、自分を見ている。
――ゾクゾクした。
ジュクジュクと募って、気付けば腐りかけていた憎悪と殺意にメスが入る。
背負うだけで各種の器官系が濁って崩壊していくような重たい化膿、
ヒドく醜い『魂の膿』が、切開されて、ドロっと流れていく。
だから、当然のように、ゾクゾクしたんだ。
脳がビリビリと痺れている。
シューリは、
それゆえ、
ついには、
アダムという女に対して、
(……かわいい……)
などという感情すら抱いてしまった。
顔を真っ赤にして、なんの思惑もなく、だだっこのように、
「憎い! 憎い! 憎い!」
「どうしたんでちゅか、急に。落ちついてくだちゃいよ、ディアフレンド。ほらほら、オイちゃんたちはお友達でちゅよね? お友達は仲良くするもんでちゅよ」
「黙れ、うるさい! そんなくだらない事は忘れろ! どうでもいい!」
「おやおや、ひどいでちゅねぇ」
などと、軽口を言いながら、しかし、実際のところ、シューリは動揺していた。
もちろん、当然、アダムのフレンドリクエストを信じていたわけではない。
友好を結ぶフリをして懐に入り込み、キバを磨きながらスキを窺う。
非常に分かりやすい一手。
正直、シューリは、その一点に関してだけは、ガチで感心していた。
友達申請してきた時のアダムは、そりゃあもう、感情のコントロールがドヘタクソで『そんなんじゃあ、あたしは騙せねぇよ、バァカ』と呆れたもの。
しかし『迷いなくその一手を打ってきた潔さは感嘆に値する』とシューリはアダムを評価した。
――なるほど、本気のようだな、いいだろう。
こっちも本気で相手になってやろうじゃないか――
だが、今のアダムは、本気で打ってきたはずの一手をペーンと放棄している。
なんの思惑もなく、ただ感情に任せて喚いているだけ。
お粗末だったとはいえ、アダムは、ついちょっと前、盤面に、
『先の先まで読んだ上での切り込む一手』を打ちこんだ。
あの瞬間、シューリは覚悟した。
これは、長期戦上等のタイトル戦。
アダムは、シューリに宣戦布告をしたのだ。
――トコトンやるぞ、覚悟しやがれ。
それを、シューリは受けた。
――いいだろう、やってやる。
シューリが、アダムの覚悟を受け止めて、気合いを入れて、
次の一手を真剣に考えていた、その時に、
アダムは、突如、盤面をひっくりかえして、ワーワーと喚きだした。
――つまり、今のシューリは、『理解ができない』という意味で困惑している。
「私の知らない主上様を知っている貴様が憎い! 主上様に命がけで守られた事がある貴様が憎い! 主上様に……愛されている貴様が……憎いぃ……」
「……」
「私よりも先に出会えた貴様が憎い……それだけなのに、これだけの差があるという事実が憎い……貴様の存在すべてが憎くて憎くて、たまらない……」
「……」
「私では、手に入らない……貴様が持っているものは……私が、この先、何をしても手に入らないものだ……たとえ、貴様を吸収しても、私を構成している一部に、貴様が組み込まれるというだけで……私の欲しい者が手に入った事にはならない!」
「……」
「なんでだ……なんで私ではない……私が、シューリ・スピリット・アースであれば、それですべてが完璧だったのに……ただ、愛する御方と……幸福なだけの日々を……過ごして……包まれて……満たされて……それが世界の全てになったのに……」
ギリギリと奥歯をかみしめながら、今にも血の涙を流さんばかりの勢いで、洪水のように溢れ出る想いを吐きだすだけのアダムを見て、
シューリ・スピリット・アースは、
(……バカなガキ……)
心の中でそうつぶやいた。
つい、失笑がこぼれた。
『呆れ』の二つほど向こう側にある感情に包まれるシューリ。
ドン引きに近いのだけれど、少し違っていて、
(これは本音だ。このガキの本音……よくもまあ、他人に、それほど醜い本音をつらつらと……)
自分には出来ない事だと思った。
が、だからこそ、
(本音か……)
動揺が薄れ、理解が煮詰まった時、ドクンと、魂魄が沸いた。
ゾクゾクと、
脳の奥がくすぐられる。
この感情の正体は極めて単純なモノ。
――暴力的なほどの優越感――
アダムの本音、
『憎い』というその言葉は、言いかえれば、
――うらやましくてたまらない――
シューリは、今、
アダムほどの女から、
『あなたが死ぬほどうらやましい』
と大声で叫ばれているのだ。
コレが『カスみたいな女の喚き』なら何とも思わない、
――アダムがカスなら、『うるさい、黙れ』としか思わないだろう。
しかし、今、シューリの目の前で、シューリを心底からうらやんでいるこの女は、
おそらく、
……というか間違いなく、
シューリを除けば、この世で比肩する者がいない究極の美少女。
その美しさ、
その強さ、
その可能性、
すべてが完璧な女。
そんな女が、
『うらやましい』
『うらやましい』
と、血走った目で、自分を見ている。
――ゾクゾクした。
ジュクジュクと募って、気付けば腐りかけていた憎悪と殺意にメスが入る。
背負うだけで各種の器官系が濁って崩壊していくような重たい化膿、
ヒドく醜い『魂の膿』が、切開されて、ドロっと流れていく。
だから、当然のように、ゾクゾクしたんだ。
脳がビリビリと痺れている。
シューリは、
それゆえ、
ついには、
アダムという女に対して、
(……かわいい……)
などという感情すら抱いてしまった。
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