センエース~経験値12000倍のチートを持つ俺が200億年修行した結果~(コミカライズ版の続きはBOOTHにて販売予定)
23話 九華だって、人間だもの
23話
「――神……神……ああ、酷い御方だ……知らなければ、幸せだったのに――」
そんなバロールの、どこか狂信者めいた発言を受けて、
テリーヌが、
「そうね。あの高み。すごみ。耀き」
ボソっとそう同意した。
彼女の心も、『知らなかった世界』を目の当たりにして、沸いていた。
テリーヌは、神など存在しないと思って生きてきた。
彼女にとって、大事にすべきものの頂点にあるのは、絶対平和の象徴、『ゼノリカ』という概念そのもの。
ゆえに、『ゼノリカを維持するために奮闘している者達全て』を愛し、『ゼノリカを軽視する全てのイカれた輩』を心底から軽蔑している。
今でも、ゼノリカ至上主義である事に変わりはない。
ただ、『あの御方』の凄まじさには、しっかりとあてられた。
『あの御方が、ゼノリカを創ったのか――なるほど、納得』
つまり、これは、変化というよりは昇華。
本質は何も変わっていない。
(美しかった……まさに、尊さの具現……)
あの尊き輝きが、ジワジワと、心に浸食してきている。
想うだけで、ただ満たされる。
とんでもない御方だ……
「……これから、私達は、神帝陛下のために働ける……」
声に、歓喜の色がつく。
ゆえに、わずかに、こぼれてしまう。
「……ぁあ……なんという幸運か」
頬がわずかに、朱色にそまる。
正直、傍目には分からぬ変化。
しかし、これでも、テリーヌからすれば、
『人前で、ここまでふぬけたザマを見せた事はない』というレベル。
ゆえに、言ってしまった直後、ハっとして、
(……ちっ)
心の中で、舌を打った。
あの御方への賛辞はいくらでも浮かぶが、この景慕・憧憬に溺れている、テリーヌ視点では『みっともないザマ』を、『他の者に見られたくないという、ちょっと異質なプライド』が、むしろ、テリーヌの態度をいつもより硬くさせた。
テリーヌのプライドの高さは異常。
決して、誰にも弱みを見せない鋼鉄の女。
(いかん……みっともない、おちつけ)
結果、敬愛しすぎたがゆえに、傍目には、テリーヌの態度が、いつも以上にクールなソレに映った。
それゆえ、テリーヌの、その、『不敬と言って過言ではない』態度と発言に、高揚を隠し切れていないバロールが、ガッとかみついた。
「幸運? そんな安い言葉でまとめないでもらいたいものだな」
キっと目を細くして、
「アダム殿の気持ちが、今、よくわかった。テリーヌ、お前は、どうやら理解ができていないようだ。我々が、どれほどの御方の元で、これから――」
喋っているうちに興奮が増していくタイプなのか、バロールの声はどんどん大きくなっていく。
そのザマを見て、テリーヌは、普通にイラっとして、
だから、
「ああ、うるさい、うるさい!」
ガチンコの舌打ちを交えながら、
「ちょっと『態度が気にいらない』という理由だけで、いちいちつっかかってくるな、この発情したサルが!」
ピシっと、空気に亀裂が入った。
バロールの眼球がグゥゥっと開き、血が走る。
「……貴様……」
正式な殺気を放ったバロールを横目に見ていたジャミが、そこで、
「この上なく尊き聖地で、主の命に刃向い内輪モメを起こすような愚者はいない……と信じているが、もし、そうでなかった場合……私が剣を抜く事になる」
裂けた空気の間に入った男の声。
ピリっと空間が痺れた。
ジャミの視線と言葉を受けたバロールは、ジャミを睨む。
「ジャミ……それは私に言う言葉か? 侮辱されたのは私だぞ?」
「しかし、殺気を練ったのは君だ。どちらが『正しいか』などと、そんな話をするつもりはない。私は、ただ、我らの愚かさを主に数えさせたくないだけだ。あれほどの御方に出会えて興奮しているのが自分だけとは思うなよ。あの御方のためであれば、私は、いつでも、誰にでも剣を向ける所存だという事を心に刻め。二度は言わない。理解できたか? 栄えあるゼノリカの天上、九華十傑の第六席ブナッティ・バロール」
「……」
ビリビリとしたオーラを発しているバロールから視線を外して、
ジャミは、テリーヌの目を見つめ、少し強めの口調で、
「どちらが『間違っているか』などという議論は、あまりに不毛。だが、『家族(もちろん、この場にいる誰も血は繋がっていない)』への暴言は控えるべきだと私は思う。……で? まだ、どちらが間違っているかという非生産的な話し合いを続けるかね? 栄えあるゼノリカの天上、九華十傑の第八席、ロックロック・テリーヌ」
言われて、しかし、テリーヌはすまし顔のまま、
「私は、常に、関係性を考えて口を開いている。色々と昂ぶりすぎて、少し周りが見えなくなっている『弟』に、『姉』として、『少し落ちつけ』とたしなめただけ。はじめて『主の御言葉』を聞けたのだ。興奮してしまうのも仕方がない。けれど」
そこで、テリーヌは、バロールに、感情のない視線を向けて、
「猿ではないと言うのなら、顔を真っ赤にしてキーキーわめくのはやめて、冷静になりなさい」
「――神……神……ああ、酷い御方だ……知らなければ、幸せだったのに――」
そんなバロールの、どこか狂信者めいた発言を受けて、
テリーヌが、
「そうね。あの高み。すごみ。耀き」
ボソっとそう同意した。
彼女の心も、『知らなかった世界』を目の当たりにして、沸いていた。
テリーヌは、神など存在しないと思って生きてきた。
彼女にとって、大事にすべきものの頂点にあるのは、絶対平和の象徴、『ゼノリカ』という概念そのもの。
ゆえに、『ゼノリカを維持するために奮闘している者達全て』を愛し、『ゼノリカを軽視する全てのイカれた輩』を心底から軽蔑している。
今でも、ゼノリカ至上主義である事に変わりはない。
ただ、『あの御方』の凄まじさには、しっかりとあてられた。
『あの御方が、ゼノリカを創ったのか――なるほど、納得』
つまり、これは、変化というよりは昇華。
本質は何も変わっていない。
(美しかった……まさに、尊さの具現……)
あの尊き輝きが、ジワジワと、心に浸食してきている。
想うだけで、ただ満たされる。
とんでもない御方だ……
「……これから、私達は、神帝陛下のために働ける……」
声に、歓喜の色がつく。
ゆえに、わずかに、こぼれてしまう。
「……ぁあ……なんという幸運か」
頬がわずかに、朱色にそまる。
正直、傍目には分からぬ変化。
しかし、これでも、テリーヌからすれば、
『人前で、ここまでふぬけたザマを見せた事はない』というレベル。
ゆえに、言ってしまった直後、ハっとして、
(……ちっ)
心の中で、舌を打った。
あの御方への賛辞はいくらでも浮かぶが、この景慕・憧憬に溺れている、テリーヌ視点では『みっともないザマ』を、『他の者に見られたくないという、ちょっと異質なプライド』が、むしろ、テリーヌの態度をいつもより硬くさせた。
テリーヌのプライドの高さは異常。
決して、誰にも弱みを見せない鋼鉄の女。
(いかん……みっともない、おちつけ)
結果、敬愛しすぎたがゆえに、傍目には、テリーヌの態度が、いつも以上にクールなソレに映った。
それゆえ、テリーヌの、その、『不敬と言って過言ではない』態度と発言に、高揚を隠し切れていないバロールが、ガッとかみついた。
「幸運? そんな安い言葉でまとめないでもらいたいものだな」
キっと目を細くして、
「アダム殿の気持ちが、今、よくわかった。テリーヌ、お前は、どうやら理解ができていないようだ。我々が、どれほどの御方の元で、これから――」
喋っているうちに興奮が増していくタイプなのか、バロールの声はどんどん大きくなっていく。
そのザマを見て、テリーヌは、普通にイラっとして、
だから、
「ああ、うるさい、うるさい!」
ガチンコの舌打ちを交えながら、
「ちょっと『態度が気にいらない』という理由だけで、いちいちつっかかってくるな、この発情したサルが!」
ピシっと、空気に亀裂が入った。
バロールの眼球がグゥゥっと開き、血が走る。
「……貴様……」
正式な殺気を放ったバロールを横目に見ていたジャミが、そこで、
「この上なく尊き聖地で、主の命に刃向い内輪モメを起こすような愚者はいない……と信じているが、もし、そうでなかった場合……私が剣を抜く事になる」
裂けた空気の間に入った男の声。
ピリっと空間が痺れた。
ジャミの視線と言葉を受けたバロールは、ジャミを睨む。
「ジャミ……それは私に言う言葉か? 侮辱されたのは私だぞ?」
「しかし、殺気を練ったのは君だ。どちらが『正しいか』などと、そんな話をするつもりはない。私は、ただ、我らの愚かさを主に数えさせたくないだけだ。あれほどの御方に出会えて興奮しているのが自分だけとは思うなよ。あの御方のためであれば、私は、いつでも、誰にでも剣を向ける所存だという事を心に刻め。二度は言わない。理解できたか? 栄えあるゼノリカの天上、九華十傑の第六席ブナッティ・バロール」
「……」
ビリビリとしたオーラを発しているバロールから視線を外して、
ジャミは、テリーヌの目を見つめ、少し強めの口調で、
「どちらが『間違っているか』などという議論は、あまりに不毛。だが、『家族(もちろん、この場にいる誰も血は繋がっていない)』への暴言は控えるべきだと私は思う。……で? まだ、どちらが間違っているかという非生産的な話し合いを続けるかね? 栄えあるゼノリカの天上、九華十傑の第八席、ロックロック・テリーヌ」
言われて、しかし、テリーヌはすまし顔のまま、
「私は、常に、関係性を考えて口を開いている。色々と昂ぶりすぎて、少し周りが見えなくなっている『弟』に、『姉』として、『少し落ちつけ』とたしなめただけ。はじめて『主の御言葉』を聞けたのだ。興奮してしまうのも仕方がない。けれど」
そこで、テリーヌは、バロールに、感情のない視線を向けて、
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