センエース~経験値12000倍のチートを持つ俺が200億年修行した結果~(コミカライズ版の続きはBOOTHにて販売予定)
53話 魔法
53話
(……やべぇ……ダメージが通らねぇ)
2回ほど、こん棒で殴りつけたのだが、ザーノのHPはほとんど減っていなかった。
それに引き換え、ゼンの生命力バリアは、ザーノの拳を受けるたび、ゴリゴリと減っていく。
(どうやら、この空間内では武器を使えないってルールもあるみたいだな……おかげで、大ダメージは受けていないが……このままだと、俺が死ぬのは、時間の問題……)
ザーノは、腰にもう一本さしているが、それを抜く気配がない。
(魔法を一切使ってこないって事は、それも関係して…………って、バカか、俺は。あいつ、MPないだろうが……ちっ、集中しろよ、命の取り合いやってんだぞ)
『痛み』に慣れてきたせいで、『殺し合い』という意識が少しだけ薄れてきていた。
『激痛』はあるが、『死を想起させる痛み』は感じないため、気を抜くと、スポーツをやっているような気分になってくる。
それに加えて、息が上がってきたものだから、頭の動きが鈍くなる。
ゼンの問題点。
単純な火力の低さもそうだが、
なによりも、継戦能力の低さ。
スタミナの低さという、決定的なウィークポイント。
今のゼンには問題が山積み。
「やはり、弱い!」
戦闘の途中で、ザーノがニィと笑いながら、
「生命力は異常に高い。だが、それ以外には何もない! どうやら、攻撃系の魔法も使えない! わけがわからない構成だが、しかし、お前に関する詳細なんざどうでもいい。お前じゃオレに勝てない……それだけ分かっていればいい」
(言われっぱなしで、しゃくだが、返す言葉がねぇ。バリバリのジリ貧。死は時間の問題……どうする……どうしよう……)
つい奥歯をかみしめてしまう。
スタミナが減るというのは、動きが鈍くなる以上に、頭が動かなくなるのが一番の問題になってくる。
その大問題の奥では、さらに、恐怖という問題も浮かび上がってくる。
負ければ死ぬ。
覚悟を決めていようがどうしようが、頭にはこびりつく。
余計に動きが鈍くなる。
不のスパイラル。
今のゼンには、あまりにも、『全て』が足りない。
(くそ……えっと、えっと……こいつは、魔法防御力が低い……だから、えっと、魔法を使えば、どうにか……なったりしないかな……)
そこで、ゼンは、右の掌を上に向けて、
「――雷術、ランク1」
魔法を使った。
パチっと掌に静電気が走る。
その瞬間、ザーノの顔に、一瞬だけ緊張が走った――が、
「ああ、もう、消えた。せめて、火ゴブリンがやっていたみたいに、『投げつける』くらいはさせてくれよ、くそったれ」
ゼンが、そう嘆いたのを耳にして、ニっと笑い、しかし、すぐにその顔を収めた。
――『その一連の流れ』を、実は、
(見ていたぞ)
ゼンは、横目でしっかりと観察していた。
叫びはフェイク。
頭の動きは鈍くなっているが、本物のおバカさんになった訳ではない。
(お前は、確かに、一瞬、俺の魔法にビビった……ランク1ってのは聞こえていたはずだ。それなのに、ビビって、そして、その感情をすぐに殺した……)
その意味は、
(あるな? 雷術には、『正しい使い方』がある……さっきの火ゴブリンの炎の玉とは決定的に『違う』使い方……考えろ、考えろ、考えろ……ここが正念場だ。もうここしかない……ここで打開策を見つけるしか、生き残る術はない……全力で頭を回せぇ!)
ゼンは、回転が鈍くなっている頭を必死にまわし、
(雷術……雷撃じゃない……術……静電気……ぶつけるんじゃないなら……纏わせるか? 体に……いや、武器か? だが、あんな小さな静電気をまとわせたところで……そもそも、この『こんぼう』って素材はなんだ? 骨か? もしかして、軽めの石? ちょっと金属っぽくもある……持っている感じだと、なんかすげぇ帯電しにくそう……んー、でも、もう、この手しかないか……)
そこで、ゼンは、こんぼうに、魔力を注ぎ込むイメージを抱きながら、雷術を使ってみた。
すると、
こんぼうが、パチパチィっと音をたてはじめた。
「おいおい、なんか、めちゃめちゃ電気を纏いだしたんだが……これ、『ちょっと電子が移動した』とか、そんなレベルじゃねぇぞ……」
さらに、
「なんか……もっと溜められそうな……」
魔法を使ってみた際の感覚から、ゼンは、『コツ』を感じとった。
『スポーツ』でも『勉強』でも、なんでもそうだが、やってみて、触れてみて、『溺れて』みて、初めてつかめる『核に接続できた感覚』というのが実在する。
ゆえに、
「雷術、ランク1」
もっと、もっと、とイメージしながら、グググっと、魔力を込めていくと、
バチバチバチバチィイイ!!!
(……おぉ、小さな静電気をためただけじゃありえねぇ状態になってきたな。物理に詳しい訳じゃないが、一応、理科でも九割はとっていたんでね。これが異常って事くらいは理解できる。どうやら、この世界では、随分と『おかしな法則』が働いているらしい……これが、どういう計算式を経て生じた現象か、具体的には知らんが……とにかく、これが、魔法ってやつだって事は理解できた。ふむ。訳の分からん干渉を受けて増大する力……面白いじゃねぇか。『空間がどう』とかよりも、こっちの方がよりダイレクトに異常性を感じられる。想像できるか出来ないかってのは大きいね。……はは……ああ、おもしれぇ)
心の中で、テンション高くぶつぶつ言いながら、ゼンは、腰を落とした。
「とにかく助かった……これなら、少しくらいはダメージも通るだろ」
(……やべぇ……ダメージが通らねぇ)
2回ほど、こん棒で殴りつけたのだが、ザーノのHPはほとんど減っていなかった。
それに引き換え、ゼンの生命力バリアは、ザーノの拳を受けるたび、ゴリゴリと減っていく。
(どうやら、この空間内では武器を使えないってルールもあるみたいだな……おかげで、大ダメージは受けていないが……このままだと、俺が死ぬのは、時間の問題……)
ザーノは、腰にもう一本さしているが、それを抜く気配がない。
(魔法を一切使ってこないって事は、それも関係して…………って、バカか、俺は。あいつ、MPないだろうが……ちっ、集中しろよ、命の取り合いやってんだぞ)
『痛み』に慣れてきたせいで、『殺し合い』という意識が少しだけ薄れてきていた。
『激痛』はあるが、『死を想起させる痛み』は感じないため、気を抜くと、スポーツをやっているような気分になってくる。
それに加えて、息が上がってきたものだから、頭の動きが鈍くなる。
ゼンの問題点。
単純な火力の低さもそうだが、
なによりも、継戦能力の低さ。
スタミナの低さという、決定的なウィークポイント。
今のゼンには問題が山積み。
「やはり、弱い!」
戦闘の途中で、ザーノがニィと笑いながら、
「生命力は異常に高い。だが、それ以外には何もない! どうやら、攻撃系の魔法も使えない! わけがわからない構成だが、しかし、お前に関する詳細なんざどうでもいい。お前じゃオレに勝てない……それだけ分かっていればいい」
(言われっぱなしで、しゃくだが、返す言葉がねぇ。バリバリのジリ貧。死は時間の問題……どうする……どうしよう……)
つい奥歯をかみしめてしまう。
スタミナが減るというのは、動きが鈍くなる以上に、頭が動かなくなるのが一番の問題になってくる。
その大問題の奥では、さらに、恐怖という問題も浮かび上がってくる。
負ければ死ぬ。
覚悟を決めていようがどうしようが、頭にはこびりつく。
余計に動きが鈍くなる。
不のスパイラル。
今のゼンには、あまりにも、『全て』が足りない。
(くそ……えっと、えっと……こいつは、魔法防御力が低い……だから、えっと、魔法を使えば、どうにか……なったりしないかな……)
そこで、ゼンは、右の掌を上に向けて、
「――雷術、ランク1」
魔法を使った。
パチっと掌に静電気が走る。
その瞬間、ザーノの顔に、一瞬だけ緊張が走った――が、
「ああ、もう、消えた。せめて、火ゴブリンがやっていたみたいに、『投げつける』くらいはさせてくれよ、くそったれ」
ゼンが、そう嘆いたのを耳にして、ニっと笑い、しかし、すぐにその顔を収めた。
――『その一連の流れ』を、実は、
(見ていたぞ)
ゼンは、横目でしっかりと観察していた。
叫びはフェイク。
頭の動きは鈍くなっているが、本物のおバカさんになった訳ではない。
(お前は、確かに、一瞬、俺の魔法にビビった……ランク1ってのは聞こえていたはずだ。それなのに、ビビって、そして、その感情をすぐに殺した……)
その意味は、
(あるな? 雷術には、『正しい使い方』がある……さっきの火ゴブリンの炎の玉とは決定的に『違う』使い方……考えろ、考えろ、考えろ……ここが正念場だ。もうここしかない……ここで打開策を見つけるしか、生き残る術はない……全力で頭を回せぇ!)
ゼンは、回転が鈍くなっている頭を必死にまわし、
(雷術……雷撃じゃない……術……静電気……ぶつけるんじゃないなら……纏わせるか? 体に……いや、武器か? だが、あんな小さな静電気をまとわせたところで……そもそも、この『こんぼう』って素材はなんだ? 骨か? もしかして、軽めの石? ちょっと金属っぽくもある……持っている感じだと、なんかすげぇ帯電しにくそう……んー、でも、もう、この手しかないか……)
そこで、ゼンは、こんぼうに、魔力を注ぎ込むイメージを抱きながら、雷術を使ってみた。
すると、
こんぼうが、パチパチィっと音をたてはじめた。
「おいおい、なんか、めちゃめちゃ電気を纏いだしたんだが……これ、『ちょっと電子が移動した』とか、そんなレベルじゃねぇぞ……」
さらに、
「なんか……もっと溜められそうな……」
魔法を使ってみた際の感覚から、ゼンは、『コツ』を感じとった。
『スポーツ』でも『勉強』でも、なんでもそうだが、やってみて、触れてみて、『溺れて』みて、初めてつかめる『核に接続できた感覚』というのが実在する。
ゆえに、
「雷術、ランク1」
もっと、もっと、とイメージしながら、グググっと、魔力を込めていくと、
バチバチバチバチィイイ!!!
(……おぉ、小さな静電気をためただけじゃありえねぇ状態になってきたな。物理に詳しい訳じゃないが、一応、理科でも九割はとっていたんでね。これが異常って事くらいは理解できる。どうやら、この世界では、随分と『おかしな法則』が働いているらしい……これが、どういう計算式を経て生じた現象か、具体的には知らんが……とにかく、これが、魔法ってやつだって事は理解できた。ふむ。訳の分からん干渉を受けて増大する力……面白いじゃねぇか。『空間がどう』とかよりも、こっちの方がよりダイレクトに異常性を感じられる。想像できるか出来ないかってのは大きいね。……はは……ああ、おもしれぇ)
心の中で、テンション高くぶつぶつ言いながら、ゼンは、腰を落とした。
「とにかく助かった……これなら、少しくらいはダメージも通るだろ」
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