センエース~経験値12000倍のチートを持つ俺が200億年修行した結果~(コミカライズ版の続きはBOOTHにて販売予定)
35話 勇気
35話
目をあけると、透き通った空が見えた。
体に痛みはない。
だが、重い。
なんだ、この重さは。
サイケルは、まっさらな動揺の中で、静かに混乱していた。
大の字になって、仰向けで倒れている自分。
理解不能。
――どうにかして起き上がる。
フラつく。
痛みはない。
「何を……した……」
サイケルが問いかけると、センは嗤う。
「お前の『闘志』を3回殺した」
「……何を……言っている?」
働かない頭をふりながら、サイケルは記憶を探る。
センとの闘いが始まってからの記憶がどうにも曖昧。
最初に足を崩されて正拳突きを入れられた所まではハッキリしている。
その後も、何度か攻撃は受けた。
こちらの攻撃が入った記憶はない。
だが、それは、自分が本気を出していないからだろうとサイケルは考える。
ただ、不思議にも思う。
なぜ、自分は、この状況に至ってなお、本気を出そうとしていないのだろう。
目の前の『敵』が、弱いから?
自分と比べればゴミだから?
そうだな。
そうだろう。
本気で闘うに値しない。
だから本気を出す必要がない。
これは、遊び。
死闘にはならない。
お前もそうだろう?
遊ぶだけだろう?
これは闘いじゃないよな?
錯綜する思考に疑問を抱きつつも、しかし、サイケルは、それでも戦意を閉ざす。
意志が乖離していく――
――センは、
「心を摘む闘い……それに耐えられるのは、誰もが当たり前に持っている『己を喰い殺そうとする弱い心』と向き合い、抗い、立ち向かい、みっともない『勇気』を積んできた者だけ」
淡々と、
「勇気って単語を、モノ知り顔の連中はバカにする。ダサいと見下して吐き捨てる」
滔々と、
「正解だ。勇気はダサい。泥臭い」
だけれど、と言葉を置いて、
「積む価値があるモノってのは、大概、そういうもんだ。カッコイイもんなんざ、いくら積んでも、一時的なオシャレさんになるだけで、振り返れば、『あれってダサかったよな』と一蹴される。ケミカルウォッシュが流行った時代があるなんて信じられるか? けど、それはそれでいいさ。流行、ブーム、あって然るべきもの。大概、何周もするしな。……明確に言えるのは、そんなものじゃあ、今この瞬間のお前をどうにかする事はできないってこと。それだけ」
センは、ゆっくりと歩を進めて、サイケルの目の前に立つ。
「その観念が理解できたとしても、踏み出せないだろ。勇気、出せるもんなら出してみろ。情けなくて、泥臭くて……吐き気がするほどダサくてみっともない、そんな勇気のある一歩」
サイケルは動けない。
動く必要がない。
目の前にいるこいつは弱い。
本気で闘うには値しない。
自分は勝つ。
造作もなく勝つ。
いや、おそらくもう勝っている。
だからいい。
動かなくても構わない。
「カスが」
吐き捨ててから、センは言う。
「アダムは……そんな一歩を積んできた結晶。お前は、それを奪ったんだぞ。……だったらよぉ……片鱗くらい見せてみろやぁあ!」
センは、サイケルの腹に向けて、何の技術もないヤクザキックを入れた。
軽く飛んで、また仰向けになる。
薄っぺらな雲が流れていく空を見つめたまま、サイケルは、動かなくなった。
意識はある。
感情はまだ残っている。
だが、体が重くて動けない。
まるで、まどろみの中にいるみたい。
何も湧き上がってこない。
立ちあがれない。
//無意識の中で、ただくすぶり、くじけ続ける――そんな、絶望的な虚無感//
――なんだ、これ?
目をあけると、透き通った空が見えた。
体に痛みはない。
だが、重い。
なんだ、この重さは。
サイケルは、まっさらな動揺の中で、静かに混乱していた。
大の字になって、仰向けで倒れている自分。
理解不能。
――どうにかして起き上がる。
フラつく。
痛みはない。
「何を……した……」
サイケルが問いかけると、センは嗤う。
「お前の『闘志』を3回殺した」
「……何を……言っている?」
働かない頭をふりながら、サイケルは記憶を探る。
センとの闘いが始まってからの記憶がどうにも曖昧。
最初に足を崩されて正拳突きを入れられた所まではハッキリしている。
その後も、何度か攻撃は受けた。
こちらの攻撃が入った記憶はない。
だが、それは、自分が本気を出していないからだろうとサイケルは考える。
ただ、不思議にも思う。
なぜ、自分は、この状況に至ってなお、本気を出そうとしていないのだろう。
目の前の『敵』が、弱いから?
自分と比べればゴミだから?
そうだな。
そうだろう。
本気で闘うに値しない。
だから本気を出す必要がない。
これは、遊び。
死闘にはならない。
お前もそうだろう?
遊ぶだけだろう?
これは闘いじゃないよな?
錯綜する思考に疑問を抱きつつも、しかし、サイケルは、それでも戦意を閉ざす。
意志が乖離していく――
――センは、
「心を摘む闘い……それに耐えられるのは、誰もが当たり前に持っている『己を喰い殺そうとする弱い心』と向き合い、抗い、立ち向かい、みっともない『勇気』を積んできた者だけ」
淡々と、
「勇気って単語を、モノ知り顔の連中はバカにする。ダサいと見下して吐き捨てる」
滔々と、
「正解だ。勇気はダサい。泥臭い」
だけれど、と言葉を置いて、
「積む価値があるモノってのは、大概、そういうもんだ。カッコイイもんなんざ、いくら積んでも、一時的なオシャレさんになるだけで、振り返れば、『あれってダサかったよな』と一蹴される。ケミカルウォッシュが流行った時代があるなんて信じられるか? けど、それはそれでいいさ。流行、ブーム、あって然るべきもの。大概、何周もするしな。……明確に言えるのは、そんなものじゃあ、今この瞬間のお前をどうにかする事はできないってこと。それだけ」
センは、ゆっくりと歩を進めて、サイケルの目の前に立つ。
「その観念が理解できたとしても、踏み出せないだろ。勇気、出せるもんなら出してみろ。情けなくて、泥臭くて……吐き気がするほどダサくてみっともない、そんな勇気のある一歩」
サイケルは動けない。
動く必要がない。
目の前にいるこいつは弱い。
本気で闘うには値しない。
自分は勝つ。
造作もなく勝つ。
いや、おそらくもう勝っている。
だからいい。
動かなくても構わない。
「カスが」
吐き捨ててから、センは言う。
「アダムは……そんな一歩を積んできた結晶。お前は、それを奪ったんだぞ。……だったらよぉ……片鱗くらい見せてみろやぁあ!」
センは、サイケルの腹に向けて、何の技術もないヤクザキックを入れた。
軽く飛んで、また仰向けになる。
薄っぺらな雲が流れていく空を見つめたまま、サイケルは、動かなくなった。
意識はある。
感情はまだ残っている。
だが、体が重くて動けない。
まるで、まどろみの中にいるみたい。
何も湧き上がってこない。
立ちあがれない。
//無意識の中で、ただくすぶり、くじけ続ける――そんな、絶望的な虚無感//
――なんだ、これ?
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