的外れな催眠チート ~面倒臭がりが召喚されました~

山田 武

魔王を知ろう



 目の前にそびえ立つ巨城は、各代の魔王によって増築が行われたらしい。

 今代の魔王もそれに則って、厨二チックな城をどうにかしたかったらしいのだが……経費やら罠やら面倒なことが多かったらしく、中断されているとのこと。

「なるほど、それで今の城に至ると……面倒な歴史だな。それってつまり、自分の力が旧魔王よりも上だ、そう知らしめるためのシステムだろ?」

「面倒、ですか?」

「それに意味が無いと分かっているから、今の魔王は甘んじて、この厨二魔王城のままでいる……金かけて城を直すぐらいなら、民を救ってお礼に無償で働かせた方が楽だしな」

「……最後の辺りはともかく、だいたいは魔王様のご意向通りの推察ですね」

 えー、働かせろよー。
 奴隷だってそうして日本流のサービスでもてなすと、だいたい勤勉に働くぞ。

 その分俺は怠惰に生きられるし……色んな意味でWinWinな関係じゃないか。

「まあ、お前らの国がどんな風に動いているかは別に知らなくてもいいか。それよりも、なんだか視線を感じるぞ」

「魔族領に人が入ることなど、ほぼありえませんので。迷い込んだ場合は、丁重に送り返しているつもりですが……」

「襲われたと被害報告を出されると」

「はい、お恥ずかしい限りです」

 魔族、というだけで恐れられるのだから世の中は世知辛く感じてしまう。

 同じように地球人が嫌悪する虫も居るが、聖人でもない俺がいちいちそれと比べる気はないので省く。

 人種差別は少なくとも、平和な日本で生きてきた俺にとっては意味が分からない。

 他種族よりも上に立ちたい、という願望からきているのだろうか? 誰か一人でなろうと、誰かとなろうと意味なんて無いのに。

「ところで訊いておくが、視線の中に殺意が混ざっているのは?」

「……関係者が人族、それも異世界人によって殺されたのでしょう。不快かもしれませんが、どうかご容赦ください」

「ふーん、それはご愁傷様だ」

 ここで創作物に出るような悪役だったら、間違いなくその視線を向けてた奴を殺すんだろうな。

 まあ、そんな面倒なことする気がないし、何より地球人が悪い……元を糺せば、それも召喚をしたあの国が悪いんだけどな。

「なんならサービスしとくぞ? たしか、知り合いに精神魔法を使える奴が居てな。ソイツに頼めば落ち着けるぞ」

「……遠慮しておきましょう。魔王様であれば、同様のことが可能ですので」

 精神干渉系魔法使えるのか。
 魔王が精神攻撃だけってのもあれだし、当然と言えば当然なんだけど。

 魔王といえば、必ず闇属性系のスキルか魔法を持っているものってイメージが強いな。

 対となりそうな【勇者】の中に神聖○○といったスキルがあったわけだし、邪悪とかそういう感じのスキルか?



 魔王城を練り歩いていく。
 複雑で入り組んだ構造になっており、侵入者ならぬ侵勇者は苦労するんだろなーと他人事で思った。

 なにせ、空間魔法が使えないように細工されているからな。

 魔族が魔力で優れている分、魔法系の技術もかなり発達しているとのこと……森に関してはそういう仕組みで、別に魔族がどうこうしたわけではないらしい。

 森を解析して得た魔法技術なのか、森同様にアイテムが無ければ使えないんだとか。
 そして持っていても、一度中継地点を挟まないと魔王城を自由に移動できないらしい。

「ずいぶんと考えて造られてるんだな」

「昔の魔王様がお考えになられたそうです。さまざまな分野に代々の魔王様は手を伸ばしており、その技術を魔族全体に行き渡るよう尽力しております」

「……へー、それぞれが各分野ねー」

「はい、時代によってはそうしたことをせずに戦闘に明け暮れる魔王様もおりますが、大半の魔王様はそうした行いによって、魔族へ繁栄をもたらそうとしておりますね」

 前半の話が気になったが、要するに魔王とは受け継がれていく存在なのだ。
 勇者が突発的に現れる異常個体であり、魔王が洗練された努力家……みたいな感じか。

 最終的には互角ぐらいにはなるだろう……だがその過程は明らかに異なっている。

 クソッたれなチート野郎と、強くなるために努力してきた奴──もうどっちが悪役なのかさっぱりだよな。

「魔王ってのは優秀なんだな」

「ええ、それはもう」

 それより、魔王は一度手を付けた分野にはあまり手を出さない様子。
 応用のために工夫は凝らすが、基盤となる情報は気にしていないんだとか。

 魔王の書物庫、なんてものが存在するのかもな……ここではないどこかにさ。

「ちなみに今の魔王は何を学んでるんだ?」

「──召喚に関する技術です。すでに運搬技術は格段に向上しておりまして、他の分野においても魔王様の研究結果が発展をもたらしています」

「召喚、召喚か……ずいぶんとまあ、嬉しい研究じゃないか。俺たち異世界人はな、魔王討伐で勝手に帰れるって思ってるぞ。なんとも皮肉な研究なんだか」

「ヴァ―プルはそのようなことを……魔王様が異世界の勇者に討伐されたことがありましたが、突然その場から消えたという伝承はございません。ですが、その……」

 曰く、世界の浄化と称した旅を始めた途端に、お亡くなりになったらしい、

 うん、要するに殺されたわけだ。
 やれやれ、魔王を殺せば次に厄介なのは強力な勇者様だしな。

 ヴァ―プルはおそらく今回、魔王討伐以外にも目的を持っているだろうから、殺しはしないだろうけど。

 ──おっと、そろそろ着くかな?


「的外れな催眠チート ~面倒臭がりが召喚されました~」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く