的外れな催眠チート ~面倒臭がりが召喚されました~

山田 武

買い物をしよう



「……そうだ、街を散策しよう」

 国の対応も定まり、今までよりも警戒レベルが下がった。
 具体的に言うならば、あの女の監視員が付かなくなったのだ。

 ……あれだけは、今の俺だと絶対に敵に回せない面倒なヤツだったからな。
 さっさと別の任務に行ってくれて、非常に助かったよ。

 そんなわけで、有象無象の監視程度ならどうにかなるし、たまにはフラッといつもと違うことをしてみよう~ということになった。

「しかしまあ、普通だよな」

 地球とは違って魔法という理が世界に存在しているからか、文明の発達が進んでいたり劣っていたり……どこかの種族が高層ビルとかを建てれるようになってるのかな?

 この国の街もまた、魔法を使った技術を用いて建物ができているのだろう。
 現代でも、外国に行けば在りそうな建物が立ち並んでいるぞ。

「う~ん……食べ物や服はすでにかっぱらってあるし、ギルドはもう行ったし……やっぱり一度、あそこに行くのが良いかな?」

 俺が偽装スキルを持っていることはバレているし、偽装は隠蔽系のスキルだから気配も消せると国は判断している。

 それなら別に、わざわざ気にする必要は無いよな?
 ──そう思い、身を隠して裏路地へと姿を隠していった。

  ◆   □  路地裏  □   ◆

 辿り着いた先は、いかにも怪しい……というか胡散臭いオーラが地下から漏れ出す建物だった。

 普通の住居のように隠してはいるが、実は地下には──という店である。

 オーラは視える者にしか視えない、というよりそういう魔道具が無いと分からないらしいな。

 そうして店の場所を転々と変えても、客はそのオーラを頼りにやって来る……そうして商売をしているとのことだ。

「……まっ、そんな魔道具持ってないけど」

 ボソッとそう呟いて、その家の中へと堂々と入っていく。



 この場所は、非合法に経営されている。
 何せ商品が商品であるので、大手を振って売買することができないのだ。

「それでも買う奴はいるらしいんだけどな」

「いらっしゃいませ、お客様」

 階段を降りた先にある扉を開くと、そこにはオーラ同様に胡散臭い男が待っていた。
 ニコニコとこれまた胡散臭い笑顔を浮かべて、そう挨拶をしてくる。

「新規の者だが構わないか?」

「はい、それは勿論です。異世界人の方に私の店を知って貰えるとは……光栄です」

「そうか。なら目一杯サービスしてくれよ」

「当然です」

 こういう裏で商売をしている奴に、『どううして俺のことを!?』なんて面倒な反応はしなくてもいいだろう。

 壁に耳あり障子に目あり。
 人の口に戸は掛けられない。

 あらゆる情報は、一度でも他者に漏らした途端露見するしな。
 そういうのを集めなければ死活にかかわるような輩は、必ず知っていると思ったよ。

「俺が求めているのは……いや、いいか。自分で視て選ぼう」

「おや、宜しいので?」

「サービスはすべての開示で頼むわ。そう、売り者・・・にならない奴も含めてな」

「……分かりました。では、順に案内していきましょうか」

 張り付けたような笑みを少々崩してしまっているが、それでも笑顔のまま俺を案内していった。



 まあ、もう見当が付いているヤツの方が多いんだろうな。

 ──ここは奴隷を売買する店だ。

 たまたま・・・・従魔がその情報を掴んだので、暇潰しに訪れたというのが経緯だな。

 別に美少女奴隷でウハウハしたいわけでもないし、本当に性別年齢問わず、すべての奴隷を視せてもらった。

 ……スキル、結構いいのがあったよ。

 異世界人はレアスキルの宝庫だが、現地のヤツもそれなりにレアなスキルを持っていることはあるんだよ。

 実際、復讐系の主人公なら即座に購入をしそうな奴隷もいたよ。
 ……俺はそのスキルを普通にコピーできそうだから、全然買う必要は無いんだけどな。

 しかし、お目当ての人材はなかなか見つからないものである。

 レアスキルは俺が一度視認してしまえばだいたいコピーできるし、美少女もその気になれば洗脳で自在だが……真に俺が求める者というのは、そう簡単には現れない。

 ──そう思っていたこともありました。

「……ん? おい、アイツはなんだ?」

「アレは……いろいろと訳ありでs──」

「よし、今すぐ買おう。いくらだ?」

「……正気ですか?」

 鑑定で片っ端から奴隷を調べてみると、とても興味深いモノを見つける。
 なので交渉を行うことにしたが……さすがにそこまで訝しむ目を向けられるとは。

「何を買おうと、俺の自由だろう。それにどうせ、その内ここからいなくなる予定だったのだろう? なら、ただで貰っても構わないじゃないか」

「さすがに、ただというのは……」

「契約魔法なら自前の物がある。それでもただがダメなら……まあ、要交渉か」

 この国で働いて手に入れた金は……一部が大人の事情で持ってかれているが、大部分は俺の下にやってくる。

 別に誰も金の情報なんて知りたいと思っていないだろうし、まあそれなりの金を持っていると考えてくれ。

「とりあえず、これぐらいあれば充分か?」

「こ、今度は多すぎるのですが……」

「あっ、そうなの? なら、ついでに今から言うヤツもいっしょに契約しておきたい。それで良いよな?」

「…………」

 もう笑顔が完全に引き攣っているのが良く分かるのだが、俺の引き籠もりライフのための犠牲だと思ってスルーしよう。

 そして、今日はその奴隷関連の行動に一日が費やされることとなった。
 ……対費用効果があればいいんだけどな。


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