Star Ocean 1章 〜誇り高き血統の鎖〜

はぐれ

10話 エンリオのハザード・クラッシャー

ヘリンガー・タウン某所にて
 頭にターバンを巻いた9歳くらいだろうか、少年が裏路地の周りをキョロキョロ見ながら進んでいた。
  その少年を見ているものがいた。建物の影に隠れながら、少年に、近づく。
「ちょっと君、少しいいかな。」
 少年に近づいていたのは、2人の無駄に図体のでかい男だった。
 少年は、怖くなり走り出した。
  少年は、裏路地を抜け、大通りへ出ると目の前を通った龍車の幌に急いで飛び乗ると、少年は、2人をチラッと見て、幌の前の方に逃げ込んだ。
「見つけたぞ!追えー!」
 ひとりが叫ぶと、そこら中から同じような服装のやつが走り出す。
 町中が異様な雰囲気に変わる。
 龍車が遅くなると、少年は、幌から飛び降り、路地へ入っていく。
するとなんと、あの男達は、もうここに着いていたのだ。
  少年は無我夢中で走っていると、何かにぶつかった。
 ジャックとロードだった。
 少年は、咄嗟に「おっお兄ちゃん!」
と、ロードに叫ぶ。
「お兄ちゃん?」
 ロードが不思議そうに言う。
「お前、弟いたのか。」
 ジャックは、驚いた。
「いないいない!」
 ロードは手を左右に振って、否定してくる。
「なっ、何言ってんだよ!冗談はやめろよ。」
 少年は、涙目になっていた。
 ロードは何か察したのか、
「どうした?弟よ。」
と少年にのった。
「本当に弟なんですか。」
 男達は諦めたように言う。
「おう、あたぼうよ。」
 ロードは何故か自慢げに言う。
「すいません、勘違いして、人を探してまして、ちょうどその位の身長で、髪は金髪で、目は紫、名前はエンリオ、あまりにも似ていたので。もしも、見つけたら教えてください、報酬も出ますので。」

「いくら出る?」
 ロードが少年の頭をポンポンと叩きながら言う。
「まぁ、3000億クレジットはくだらないでしょう。」
 男がそういうと、俺達は息を呑んだ。
「では」と言って、男達は去っていった。
「3000億はくだらない?やばい香りがするぜ…」
 俺は関わりたくないから忘れようとしたが気になるのは、この少年だ。
 ロードの弟でもなさそうだ。
 もしかすると、その、エンリオとかいう、賞金をかけられてる少年かも知れない。

  とりあえず、酒場まで連れてきた。
「君、名前は?」
 そう言うと、少年は、飲んでいたジュースをテーブルに勢いよく叩きつけた。ため息をつくと、
「エンリオ、エンリオ・マカリスター。」
 やっぱりだ、コイツは不味いことになった。今、俺達が匿ってるのは、賞金3000億クレジットが付けられてる賞金首だ。
「お兄さん達も僕を捕まえる?」
 彼の無垢な瞳には押し倒されそうになる。
 無論、捕まえたりはしない。だが、事情だけは聞かないとスッキリしない。
「おい、あんたら、頼むから出ていってくれないか。ここは未成年は立ち入り禁止なんだ。」
 マスターが客の飲み終わったコップを水で流して、布で拭く。
「わりぃわりぃ、でていくよ。」

   店を出ると、ロードが追手はいないか周囲を見渡す。
「大丈夫だ。怪しいヤツは誰もいない。」
 それを合図に、僕らは、店をあとにした。

  「あのさー、」
「なんだよ。」
「こんなに羽織らないと駄目?  熱いんだけど。」
 当たり前だ。3000億クレジットの価値があるんだ。正体は極力バレないようにしたい。
 だが、15枚も着せたのは、さすがに、やりすぎたかもしれない。
「3枚なら脱いでもいいぜ。」
 俺がそういうとエンリオは、不服そうな顔をして、
「あと、7枚は?」
「駄目だ!5枚しか着てないとこになるじゃないか!」
 僕は羽織っているものを3枚だけ脱がせた。
「もー!熱いって言ってんだろ!」
 何故、子供は言うことを聞いてくれないんだ?コイツは自分がどんな状況下に置かれてるのか気付いているのだろうか。
「ん、見つけたぜぇー。」
 最悪だ、なんか、他の追手とは違う雰囲気を感じる。見た目は、髪色が紫でヘアスタイルはエアリーヘアだ。
「さぁ、王子、帰りましょう。」
 おい、聞いてないぞ。なんだ、王子って。まさかコイツ、ただの家出?…
「うんじゃあ、帰ろっか。」
 俺は笑顔でそう言ってあげた。別に恨まれるようなことは言ってない。
「おい!裏切るのか!」
「なんで、俺らが家出の面倒みないといけないんだよ。」
 遂に悪目立ちする髪のやつにエンリオは、担がれた。
「ご協力感謝します。私は、テトラ・スウィンガー、大統領の下に仕える、12人のうちの、1人です。」
 大統領の下に仕えているってことは、かなりの上級層の人間だ。
「お名前、聞かせてもらってもいいですか?」
「ジャック・オーリンだ。」
 その名前を言った瞬間、彼の目が豹変した。まるで、獣が獲物を見るような目で。
「オーリン…か。 貴族、嫌いなんですよね。」
 嫌な予感がした。これは俺にも先が読めた。
「ビザール・ストーン!」
 テトラが左手を目の前に突き出すと、とんがった石と言うより、岩だが、どんどん、押し寄せて来る。津波のようなスピードで、避けようとした時には右足に刺さっていた。
「ぐわぁー!」
 俺は傷口を手で抑える。完全に貫通してしまった。
「ジャック!こっちだ!」
 ロードに治療を施してもらう為、歩くしかない。その間、尋常ではない痛みが伴う。
「死にたくなれ!」
 俺は再度攻撃を受ける。直接、命中は、しなかったが、地面から石がとび出た時の、砂の勢いで吹っ飛ばされる。
 その勢いで、ロードの所に着地できた。
 街は騒然としていた。被害はとんでもないだろう。
 ロードは俺の血だらけの足に手をかざす。
「ねぇ、」
「エンリオ!お前、いつの間に!」
「この状況の打開策がひとつあるんだけど、どうする?」
「打開策?なんだそれは。」
 エンリオはニヤリと笑って言う
「土下座して、お願いしますって言ったら教えてあげる。」
 当然、俺はそんな事しない。
「嫌かーせっかく助けてあげようと思ったのにー。」
 そうしてるうちにも、次の攻撃が迫って来る。
「分かったよ!さっきは、すまなかった!許してくれ。」
 俺は、盛大に土下座して、謝罪した。
「しょーがないなー。ちょっと、どいてな。」
「何してる!死ぬぞ!」
 ロードが叫んだ時にはもう石がエンリオに突撃してぶつかった衝撃で砂埃を上げていた。
 だが、ロードは、異変に気がついた。
「石がない…」
 徐々に砂埃が薄くなると、見覚えのあるシルエットが浮かび上がる。
「エンリオだ!」
出てきたのは、髪の逆立った、エンリオだった。
「ハザード・クラッシャー…全てを粉砕せよ…」
 エンリオは、見にも止まらぬ速さでテトラに近づく。
「死にたくなるのは、お前の方だ!」
 殴ると、段々と亀裂が入って、皮膚が避けていく。
そして、

-テトラ・スウィンガー(19)ヘリンガータウン大通りにて死亡-

残る大統領の手下 10人

ジャックの仲間  3人

コメント

  • めんぼー

    パネェ展開や!

    0
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