俺と異世界とチャットアプリ
スレ96 男の友情も打算だらけ
結局、罰はブラストが受けることになったのだが……地面に伏せてまでその嘆きを表現していた結果、他のクラスメイトも依頼を受けることになった。
俺は従者だからサーシャ様と……なんて言い続けたが、最終的にはドラゴンをどうにかしなければならない気がする。
あからさまに微笑んだキンギル先生が、わざとらしく頑張ってくれと言っていたし。
「はぁ……終わったな」
閉会式の幕はとっくに下りている。
やれAクラスはとても優秀だ、やれBクラスは頑張ろうだ……Xクラス以外の総評が副生徒会長の口から語られた。
中でも序列者たちは絶賛である。
生徒会長やら、イケメン王子様などが居るからな。
Xクラスに居るのは、嫌われ者の従者と不登校気味な学園崩壊を望む先輩だけだし。
そういえば生徒会長は二学年なんだよな。
学園はやはり実力主義な部分が強いので、序列者である『聖義』は早い内から生徒会長という飾りを手に入れていたらしい……つまりは表面的に就いただけなんだよ。
「サーシャ様、この後はどうされます? やはりブラストの泣き寝入りを見るため、依頼受注をキャンセルされますか?」
「……おい」
[それもいい]
「おいっ!?」
フェルは幼馴染なので見捨てないとは思うが、アルムとファウはサーシャ経由で納得したようなものだからな。
サーシャが今さらNOと答えれば、手伝う者の数が減ると思っているのだろう。
[ジョーク]
「お、脅かさないでくれよ。さすがの俺でも少しだけ焦っちまったよ」
[けど、タダは損。ケーキバイキングを奢るのが条件]
「…………お、おうよ、やってやらぁ! それぐらい、大したことねぇぜ!」
だいぶ間が空いていたので、おそらくかなり苦しいと思う。
チラチラと俺の方を見始めたのは、序列者特典の割引を求めているからだ……決して、お前にも奢ってやるというサインではない。
「──あら、なら私にも良いわよね? サーシャと同じ条件じゃないと……私、ちょっとショックで戦闘中に、誰かさんへ攻撃を飛ばしてしまうかもしれないわ」
「わ、分かったから……」
「ふんっ、ならば私も同席させてもらおう」
「……甘い物」
「お前らもかよ! というか、なんでアルムも行く気なんだ!」
からかうのが一割、本気で食べたいのが九割といったところだろうか。
目に冗談という色は無く、マジで甘味が食べたいですと語っている。
「悪いか? だが、この私が手伝うのだから報酬としては安過ぎるであろう。せめてもの感謝の気持ちを伝えられるチャンスを無下にする気なのか?」
「うぐっ……わ、分かったよ! ただし、そこまで言うなら他の奴にも感謝を伝えないといかねぇな。おい、アサマ──」
「俺はドラゴンに会いに行かなきゃいけないから、時間が掛かるしお前らに迷惑が掛かるのも嫌だ。今回は非常に残念だが……ブラストが奢るケーキバイキングには、不参加と言うことにしておいてくれ」
「お、おい、ちょっと待ってくれよ!」
「なんだ? もしかして、俺をダシに使って割引でも受けようとしていたのか? そこまでみんなに優しいブラスト君が、他者を利用していたとでも?」
分かり切っていたことだが、改めて問うと物凄い勢いで目を泳がせて否定してくる。
逆に引いてしまうのだが、彼の財布がそれだけピンチだということを物語っているので悪いとも感じてしまう。
「そそそそ、んなわけねぇだろう!? ほ、ほらアレだよアレ! 日頃、なんやかんやアサマサには世話になってるし、こういうときぐらい……なぁ!? ほ、ほらアレだ! もう一回対抗戦の祝杯がしたかったんだよ!」
苦しい言い訳だが、これ以上彼の頭脳では絞り出せなかったのかもしれない。
今にもオーバーヒートしそうな脳みそをフル回転させ、やっとこさ考え付いた答えが似たような出来事の再現だったわけだ。
「そうか祝杯か……そうだな、せっかくだしキンギル先生とクーフリ先輩も呼んだ方がいいんじゃないか?」
「お、お前が来てくれるなら……そうだな、呼んだ方がいいかもしれない」
「なら、そうしようか。悪いが、ドラゴンがどれだけ強いか分からないから、依頼が終わるのも相当後だと思う。ブラスト、それまで待っててくれるか?」
「! あ、ああ、当然だ! 親友の帰りも待てねぇほど、俺はバカじゃねぇよ!!」
俺の言葉を変換すると──時間稼ぎはしてやるからその間に金を稼いでおけ、という意味になる。
しっかりと依頼をこなしておけば、多少金銭が余るぐらいには稼いでおけるだろう。
「サーシャ様、ドラゴンについてですが……よろしいでしょうか?」
[乙]
「何かあったらその際は──お願いします」
[り]
転移に関する武具も創造しているので、スマホで連絡すればサーシャはいつでも駆けつけることができる。
対ドラゴンの武具と言えば、伝説や伝承の王道──俺よりサーシャの方が勝つ確率が高い気がするんだよな。
まあ、そんなこと言ったって俺が依頼を受けることに変わりはない。
むしろこの経験をチャンスとして生かし、アイツらに届くための一歩として力試し感覚で挑んだ方がいいだろう。
──まずは、情報収集からだけどな。
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