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スレ47 縛りプレイに縁が多い
どうしてこうなった、その質問はほとんど意味をなさない。
「ハァ……」
「どうした、もう怖気づいたのか?」
「サーシャ様が命令された結果、ここに出ているだけだ。自分から選んだそっちとは覚悟に差があるんだよ」
「……ん」
訓練場に置かれた舞台、そこに上げられた俺と金髪組の二人。
やる気のなさにツッコまれたが、実際にやる気がないんだから仕方ないだろう。
サーシャが一人で出てくれれば、俺は傍観するだけで勝てるのに……どうして守護者が守護対象を戦闘に駆り出すんだよ。
「とっとと済ませましょう。サーシャ様の指示だからやるが、正直面倒なんだ」
「……ん」
「──ファウ、どうしてお前がソイツの言葉に賛同する」
「兄さん、面倒、眠い」
「お前というヤツは……」
金髪組の二人は兄妹である。
説明の必要がなかったのでしていなかったが、いっしょにいるというところに気づけばすぐに分かることだっただろう。
やる気のない妹に頭を押さえる兄。
まあ、慣れてるみたいだし、あの様子なら本番ではナイスな連携をやってそうだ。
「まあ、準備くらいはするさ。気楽にやりましょうよ、気楽に。どうせ俺、勝っても負けても参加するんだからよ……ハハッ!」
本音を漏らしながら、俺は一度闘技場を去るのだった。
準備時間、ということで控え室のような場所で戦支度を行う。
いくらなんでも本格的すぎないか? とも思うが、独りでブツブツと考え事をする俺にとってはありがたい。
「やっぱり、縛りが多すぎるな。虚無系はほとんど不可だし」
俺は黒髪ということで、使用するのはできるだけ闇属性のモノにしておきたい。
なので、使える虚無属性の魔法は制御として使う“虚無纏装”だけだ。
あとは百歩譲っても無魔法として、巧みな魔力操作で乗り切ってみせる。
「武器は……これと、あとこれとこれか?」
最近練習している武器を、訓練場から持ち込んだ武器の中から選んで物を持っていく。
特にケントから言われるのだが──頼れる武器を選ぶくらいなら、どんな武器でも一流の動きをできるようにしておけとのことだ。
アキやフユツグ、それにサーシャのようにいつでも最高品質の武具を用意できる奴ならともかく、ケントのような戦闘に明け暮れるヤツには絶対不可能らしい。
……アイツ、不壊属性の武器をあえて使わないからな。
「それじゃあ、行くとしますか」
数本の武器を携え、再び訓練場に赴く。
◆ □ ◆ □ ◆
「──では、模擬戦開始!」
観客席でクラスメイトが見守る中、教師であるキンギルの指示で開戦が告げられた。
光魔法を得意とする兄妹と、闇魔法を操るであろう従者。
どちらが勝つか、クラスメイトは興味深々である。
「フェル、どっちが勝つと思うか?」
「アサマサには悪いけど、ヴィクリー兄妹が勝つと思うわ」
ヴィクリー家。
かつて勇者を配偶者として取り込んだ一族であり、あらゆる魔法を操る者たちを輩出してきた実力主義の巣窟。
古今東西優れた人材を招き、一族の血に交えてきた結果──高確率で固有スキルを発現するという一族。
だが、彼ら兄妹にはそれが発現することはなく、属性の適性も光が特出する以外はごく普通なものであった。
故に彼らはこのクラスにいる……が、それ以外はすべてヴィクリー家としてふさわしい力が宿っている。
兄であるグリアルムは細身のレイピアを、妹のファウルムは巨大な弓をこの場所に持ち込んだ。
「というか、なんでアサマサあんなに武器用意してんだ? しかも、使いづらいヤツばっかりじゃん」
「そうね……サーシャ、何か分かる?」
対するアサマサは、不可解な武器の数々を持ち込んでこの場に現れた。
一つは、背負った巨大な戦鎌。
一つは、腰に提げた小さな槌。
一つは、袋に纏めた複数の鏃。
あまり使われることなく、ひっそりと訓練場の武器庫の中に仕舞われていた武器の数々が今、アサマサによって日の目を見る。
「というか……なんで鏃? 弓もねぇのに、どうやって使うんだよ」
「それに小槌も大鎌も、意味が分からない」
それぞれを個々に使う者は、長い学園の中でも数人いた。
だが、アサマサのように同時に使おうとする者は一人もいない。
[見れば分かる]
「いや、そうだけどよ……」
[きっと面白い]
「でも、二対一なのよ」
戦いは始まったが、今兄妹とアサマサは動こうとせず会話を行っている。
だからこそ、こうして観客側もまだ予想しか行えなかったのだが……ついに動きだす。
「おい、始まったぞ!」
魔力で肉体を強化したグリアルムが、高速の刺突でアサマサを狙う。
剣先が向けられた場所は心臓、一撃でこの勝負を終わらせる勢いで放たれたソレは──差しだされた一本の鏃に防がれる。
「「えっ!?」」
ただの偶然、一度だけならそう思えたかもしれない。
だがそれは何度も、それも超高速で行われる突きのすべてに鏃をぶつけることで否定されていく。
スッと別の鏃を取りだしたかと思えば、それをファウルムへ向けて投擲し──飛んできた強弓の一矢と相殺させる。
光の魔法が放たれれば、闇の魔力を纏った鏃で防いでいく。
「……アサマサって、凄いんだな」
「ええ。あの二人って、同時に戦うと相性いいから苦戦は必須なのに」
ここまで経過した時間は、そう長くない。
だがすでに最初に抱いた疑念など、吹き飛ぶほどの濃密な戦いを魅せていた。
[これからが本番]
サーシャの言葉に二人が首を傾げた時、アサマサは腰につけた小槌を取りだす。
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