俺と異世界とチャットアプリ
スレ27 始まる冒険
眩い光が収まると、目の前にはダンジョンとは異なる景色が広がっていた。
周囲を見渡して現在位置が分かる物を探すと、遠くに巨大な城壁のような物が見える。
「……まあ、たぶんアレが王城だよな。だとすれば、たしかダンジョンがアッチで……今はここら辺かな?」
足元の土は、絵を描けるぐらいには軟らかい物であった。
なので落ちていた棒を使い、自分の覚えている範囲で地図を描いていく。
「ダメだ。全然分から……ん? この展開はもしや……」
急にバイブレーションを行うスマホを取り出し、チャットアプリを開いてみると……何故だか周辺の地図が画面に表示されていた。
「いや、アキが協力しているなら……まあ、地図があることは分かるんだが……どうして最新の地図なんだ?」
必要が無いと思っていたので言わなかったのだが、当然勇者が居た時代から遥かに時が過ぎ去ったため、国や地形に一部の変化があることを確認してある。
国の書庫で調べてみたら、アキの暴れた地点が色々と変わっていたので、すぐにそれは分かったよ。
……だけど、どうしてそこまでバッチリ更新済みの地図なんだろうか?
しかも、俺の居る地点を指し示すように、微細な動きに反応する人形が画面中央に設置されているし。
「──あれ? たしか、スマホでチートはできないんだよな? あっ、でも。それは神の力でWifiをどうにかできないってことなのか? それならいちおうの理由は付くか」
「それに、カメラってたしか、リア充君とのあれこれの時にハルカがカメラを用意したとかチャットに打ってあったな。でもそれが可能だとして、アイツが前に自慢していたカメラと言えば……止めとこう」
というか、これはあくまで画像が送られてきただけだよな。
……うん、たとえスワイプさせたら地図として映る範囲が変わっていたとしても、きっとこれは画像だ。
パノラマ仕様に違いない。
──決して、上空から今も監視しているわけじゃないんだからね!
「………………よし、切り替え切り替え!」
いつまでも悩んでいても仕方がないだろうし、落ち着いたらアイツらを問い質せば必ず何か分かるだろう。
それより今は、次の安住の地を探すことを大切にしないとな。
地図をいったん閉じ、チャットの更新を確認していく。
安否の確認もあるから、後でちゃんと返信しておかないと。
「『面倒事対処シリーズ』には……何も書いてないか。面倒事が起きる兆候が無いんだから、使われる必要性も無いってことか?」
というか、国を脱出できた今、女神が俺に力を貸す必要は無くなったかもしれない。
この先俺の生き方がどうであろうと、リア充君たちと共に居ることはほぼ無いだろう。
女神が俺の生存を約束した一週間ははるか昔に過ぎ、魔王とも一応の縁を結んだ。
もう二度と、チャットが来ることは無いかもしれないけど。
「ありがとうな、女神さm……俺の感謝、必要無かったみたいだな」
再び振動するタブレット、そして新たに追加されたその文章を見て──俺は笑みを隠さずにはいられなかった。
[尚、これからも面倒事が起きる度に随時更新となる……面白そうだから、ちょっとぐらい手を貸しても良いわよね?]
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参加者:アサマサ以外
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・
アキ:さて、無事に朝政も国を脱出できたわけだが……あの国、どうやって滅ぼそうか?
ハルカ:すでに衛星は転送してありますし、滅ぼすだけなら簡単ですよ?
ナツキ:加護は全部没収しないとね?
フユツグ:……お前ら、もう少し落ち着けよ
誰か、誰か一緒に止めてくれ!
リホ:死すべし、とにかく全部殺す
ユキ:しかし、やはり刀は使ってくれないか
いつになったら日の目を見るのか
ミランダ:ハハハッ! さすが我が盟友よ!
こうも我もできぬことを成し遂げるとはな!
フユツグ:ダメだ。ロクな奴がいねぇよ!
あと、アサマサをどう呼ぶかはっきり決めろこの厨二!
・
・渾身の説得中
・
フユツグ:ほら、もう落ち着けよ
お前らが何を思おうと、とりあえずは先に確認してからにしろよ
アサマサだって、自分の知らない所でコソコソとやられてたらショックだろうが
ハルカ:うぐっ
ナツキ:たしかに
アキ:チッ、フユツグのクセに
フユツグ:……おい、サラッと俺をディスってるんじゃねぇよ
リホ:でも、ならどうするの?
ユキ:某たちが向こう側に干渉できることなど、あまり無かろう
ミランダ:向こうに送るのは、あの神との契約によってできなくされたからな
ハルカ:あの女神……自分の益のためだけに妨害しましたよ
何が[手を貸しても良いわよね?]ですか!
神が人に干渉するんじゃありませんよ!
アキ:まあそのお蔭で、こっちもそれなりにやれることが増えたんだろ?
とりあえず……(今は)……我慢しようぜ
フユツグ:おい、行間でバレバレだぞ
もしアイツがそれに関して相談してきたら、やった奴のことは全部チクるからな
……チャットに参加しないで見てる奴、お前らもだからな
ハルカ:結構いますね、そういう人たち
それで、どうする気なんですか?
フユツグ:いや、結構簡単じゃないか?
こっちの世界の奴が関わるのがダメなら──向こう側の奴にやらせればいいんだよ
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後日、とある魔王が悪夢を見たと朝政に告げようと、悶々としていたとかしていなかったとか……真相は定かではない。
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