俺と異世界とチャットアプリ

山田 武

スレ12 手に入れろ回復魔法



 再び訓練場で黙々と練習を行う。

「あと何日だっけ……三日だったかな」

 リア充君こと勇者様の自慢話によると、彼は新たに光・闇・回復魔法を使えるようにしたらしい。

 今日は火を習うとかも言ってた気がする
 ……うん、めっちゃどうでも良い。

 俺には彼が何をしようと関係が無いのだ。
 彼がどれだけ魔法を使えるようになったからといって、俺の魔法適性が下がっていくわけでもないんだし……ない、よな?

「き、今日は回復の練習だな!」

 気持ちを切り替えて魔法の練習を行う。
 いちおうは“原点回帰リセット”というダメージを無かったことにする方法もあるが、アレは一度に膨大な魔力MPを消費してしまう。

 なので、今回は少ない魔力で使える魔法を考えるというわけだ。

「……しかしまあ、難しいものだよな」

 無となると、そのまま一気にリセットのイメージしか浮かばない。

 そもそも何もないのが『無』という考え方があるため、それ以上の派生を生みだすのもそろそろ限界になっていた。

「仕方ない、誰かに頼るか。こういうとき、力になってくれそうなヤツは……」

 魔法のイメージ力が必要なので、前衛系の役割だった奴らはカット。
 後衛系の奴らの中で、もっとも妄そ……想像力豊かな奴に頼もうか。

 そうして選んだヤツとの個人チャットを開設し、さっそく相談を行う──

===============================

参加者:アサマサ/ミランダ

アサマサ:──っと、言うわけだ
何か良いアイデアは無いか?

ミランダ:同朋よ
それより先に、勇者を滅する方が良いのではないか?

アサマサ:いや、やらねぇよ!
これを聞いたアキの反応が恐かったからお前に訊いたのに、どうしてそっちに行こうとするんだよ!
か・い・ふ・く・ま・ほ・う!!
俺が訊きたいのはそっちなの!

ミランダ:……ふっ、我を誰だと心得る

アサマサ:分かってるって
だから頼んでるんだよ、最凶の魔導師様?


 ※ちょっと時間が空いてます


アサマサ:お、お~い、寝落ちか?
それならそれで、また気づいたら連絡してくれればいいからな

ミランダ:すまない同朋よ、少し知識の海へと潜っていた

アサマサ:パクリはダメだぞ
それで、何かあったか?

ミランダ:バッチリよ! そんなのヨユーで見つけたわ!

アサマサ:お~い、思念チャット機能がONのままだぞ~
というか、なんでこのタイミングで?

ミランダ:再生力をストップさせるのよ!
無を使わないというイメージにして、普段使わない再生力をチャージ、必要な時はそれを使って回復……これでバッチリよ!!

アサマサ:おお!
そりゃあ画期的なアイデアだな!
だけど、素が見えちゃってるぞ~

ミランダ:べっつにー
アサマサしか見てないんだからオッケーオッケーノープログレムー
それより、無といえば────

===============================

「なるほど……さっすがミランダだな」

 彼女は……まあ、いろんな理由が噛み合い厨二の病気に罹ったんだよ。

 彼女の妄そ……コホンッ、イメージ力はかなり高く、新しい魔法を作るための助力を借りたというわけだ。

「それじゃあさっそく実験を……無、停止、貯蓄……あれ? ちょっと違うな──ん? “虚無回路ホロウサイクラー”?」

 そうして定義付けられた魔法が発動した途端、体に力が溢れてくる……なんてこともなく、あっさりと時間が過ぎていった。

「あれ? なんで回路なんだ? 確か、貯力にしようと思ったんだけど……」

 最初は“再生貯力”という名前にしようとした……が、結果はあれだ。

 実際にそれが機能している気はするが、目に見える結果にはまだしたくない……痛いのは嫌いだし。

「んーまあ、今日はこれくらいにしとくか」

 この後は、今までに使った魔法のおさらいしていき──今日という日は終了した。



===============================

参加者:アサマサ以外

 ・
 ・
 ・

ハルカ:ミランダさん!
貴女いったい、朝政さんに何を教えたんですか!!

アキ:おいおい、さっきのアレか?
たしかに回復力を溜めるってのは厄介だと思うが……それぐらいなら、他の奴も使えるだろう?
俺もエネルギーを保存するぐらいなら、必須技術だし初期に覚えたぞ

ミランダ:我が教えたのは、肉体の持つ再生力の貯蓄だ
我の時魔導を派生させたものだ
同朋に教えて何か問題があったのか?

ハルカ:大ありですよ!!

---------------------------------------------------------
魔法名:虚無回路(未完)

属性:虚無 系統:強化 階級:遺失級

説明:発動者の肉体を改造し、常に虚無界とリンクした状態とする
発動者はMPの概念が喪失し、魔力消費に関するあらゆる条件を無視して能力を行使可能
ただし、常時肉体に激しい激痛が走る

〔HPの自動回復効果も副次的に有する〕

---------------------------------------------------------

朝政さんを殺す気ですか!

ナツキ:あれ、(未完)なの?

ハルカ:接続を【絶対不変】が拒絶しました
今の朝政さんは【絶対不変】によって濾されたエネルギーを受け取っています

アキ:虚無界……知らねぇな

ミランダ:おお! さすが我が同胞よ!
我の与えた知恵を昇華させ、ここまで至らせるとは!!

ハルカ:厨二、黙りなさい!
どのような能力もがどういう意味なのか解っているのですか!!

フユツグ:え? 全知全能にでもなるんじゃないのか?
良いことじゃないか

ハルカ:それでは──頼ってもらえなくなるではないですか!!

ナツキ:ああ~、それは……大変じゃない!

ミランダ:えっ、ピンt("*"#!!

フユツグ:まあ、たしかに一大事ではあるが
でも、朝政自身の力はそうでどうにかなっても、問題はそれだけじゃないんだし、どうとでもなるんじゃねぇの?

アキ:それに、アイツが俺たちに頼ってくれないなんて、それこそ無理じゃねぇのか?

===============================

 この後朝政は、ステータスに関する悩みを彼らへと告げた。
 それを見た彼らは、朝政の期待に応えるべく、どうにか平常の状態へと戻ったという。


コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品