最弱属性魔剣士の雷鳴轟く

相鶴ソウ

258話 勝利の光明

「私の事を気にかける必要はありません。私がレヴィアタンになった後、迷わず殺してください」


 結局この言葉に大した反論もできないままエレルリーナさんの提案で一旦休むことにした。
 本当ならもっと話し合いたいのだが、レヴィアタンは戦いで負った傷を回復させ、必ず追ってくるとエレルリーナさんが予測した為、俺達も素直に休むことにした。
 俺達四人はこのまま連戦できるほどの体力は残っていない。問題が解決していないままではロクに寝れもしないが、疲れた頭では解決案も出てこない。


「さっきから何読んでるんだ?」


 仰向けに寝ている俺の上でエヴァが仰向けに寝ており、どこからか持ってきた本を読んでいた。
 いくら酔いがマシになったとはいえ、本を読むとは中々勇気のある行動だ。


「レヴィアタンについての本。何かヒントが乗ってるかもしれない」

「レヴィアタン化を回避できる方法があるならとっくにスーサ達が見つけてるんじゃないか?」

「クロトにしか出来ない方法だってあるはずだよ。クロトが思ってるよりクロトはずっと特別なんだから」

「俺は……それを言うなら他の皆の方が特別さ」

「……あ!」

「どうした?」

「ほらここ」


 エヴァが指さした所にはこう書かれている。


 レヴィアタンが絶命した時、レヴィアタンの魂はその肉体を飛び出し、「印」を持つ生物へ移動する。
 とある船の乗組員が、青い半透明の浮遊物がレヴィアタンから飛び出すのを見たことがある。


「これって……」

「もしエレルリーナさんをこの魂から守ることが出来たらレヴィアタン化を防げるかも」


 確かに少し希望が見えた。が、魂なんて不確定なものをどうやって……いや、それ以前にこの情報が間違っていたらどうする?


「信じるしかないよ。最初から奇跡にすがる思いだったんだから、さ」


 俺の心配に気が付いてか、そんなことをエヴァが言う。
 それもそうだ。「不可能」だったのが「もしかしたら行けるかもしれない」ぐらいにはなったんだから、そこに全力を込めないとな。


「しかし、魂……かぁ」

「ぱっと思いつくのはクロトのシュデュンヤーだよね」


 この黒剣なら殺した相手の魂を地獄に送り込むことが出来る。


「だけど、こいつが魂を吸い込めるのはアンデッドの場合だ」

「てことは意味ないのかなぁ」


 一概には言えない。地獄自体が人知を超えているのは事実だし、シュデュンヤーにその力がないとは言い切れないが……


「魂……魂かぁ……」


 なんか思い出しそうなんだけどな……


『鎧から飛び出した力が意思を持つ竜へと変化したんだ』


 あれはリュウと初めて会った時言っていたことだ。レヴィアタンも当然、竜鎧装の力が元となって生まれた魔物なわけだ、が……


「そうか!」

「どうしたの?」

「リュウの所に行こう!」





 それから数時間後。夜も更けて辺りは真っ暗だ。
 街の中であれば多少生活の光が漏れていたりするが、海の上は真っ暗だ。船の随所に明かりを設置しているが、見えるのはせいぜい船の周りのみ。


「さて、もういつ来てもおかしくはないが」


 そろそろレヴィアタンも戦闘ができる程度には回復しているだろうというエヴァの予測から俺達もそれに備えて甲板に出ている。
 レヴィアタンは基本的に穏やかな魔物とされているが、一度攻撃されればその執念は異常なほど強い。とエヴァが言っていたのでそれを信じて迎え撃つ。


「でも、上手く行くの?」

「現状打てる手がこれぐらいしかないから……仮にここで倒さずに放置してもエレルリーナさんの「印」が止まるわけじゃない。一か八か、ここに賭けるしかないよ」


 エヴァの言う通り、もう時間も選択肢も残っていない。
 一応エレルリーナさんにはレヴィアタン化した時のため、船内ではなく甲板に出てもらい、スーサがその護衛に付く。


「来たわ。接近してきてる」


 サエには昼間の間にここら一帯の海水を支配下にしてもらっている。そのため、海中の接近にも反応できるわけだ。
 波が荒れ、船が揺れている。近海の海が盛り上がり、昼間と同じようにレヴィアタンの目が光る。


「行くぞ。獄化・地装衣インフェルノトール モード雷神!」

氷纏・姫装束イエロ・プリンセスコート!」

「竜鎧装 全身フルメイル!」

激流龍咆哮カノン・オブ・レヴィアタン!」


 それぞれが戦闘態勢を取り、サエが水の塊をレヴィアタンにぶつけた瞬間一斉に動く。俺、エヴァは天を駆け、レヴィアタンに接近。サエは船に残り、もしもの時の最後の盾だ。リュウはその護衛をしながらも隙を見て攻撃。
 初撃は俺達に託されている。


「これで倒せるならそれに越したことはない。行くぞエヴァ!」

「うん、任せて!」


 お互いに魔力を収束させ、必殺の一撃を試みる。


「黒氷術 黒き氷薔薇は血に染まりて咲き誇らんシュバルツ・アイス・ローズ・ブリューレン・ルゥト・ファブスタッフ

武雷針ぶらいしん・飛翔!」


 エヴァの作り出した黒薔薇が俺の腕に絡みつき、黒氷を伴って発動した武雷針は、俺の突きの動作と共にその腕を離れ、飛ぶ槍となってレヴィアタンの頭部に直撃する。

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品