最弱属性魔剣士の雷鳴轟く
255話 圧倒
突如として打ち上げられた水が雨のように甲板に打ち付ける中、俺達三人は水柱が立ったその地点から目が離せないでいた。
まだ海中に居るが、わかる。これはシーサーペントではない。もう来ている、奴が、すぐそこまで。
「エレルリーナさんは?」
「廊下ですれ違ったきり見てないわ」
何事かと大慌てで団員たちが甲板に出てきているが、エレルリーナさんは居ない。
「危ないから船内に! それから船室で寝ているエヴァを引きずり出してきてくれ!」
団員にすかさず指示を出し、団員も逆らうことなくそれに従う。俺もシュデュンヤーを抜き、それが現れるのを待つ。
「来ると同時に仕掛けるぞ。獄化・地装衣 モード雷神!」
「わかった! 竜鎧装 全身!」
「任せて」
リュウは鎧を呼び、サエは近くにあった樽を蹴り倒し、水を甲板にまき散らす。この辺りに設置された樽は全てサエが操れるようにした水が入っているものだ。毎回海に入って、大規模な水を操るのは燃費が悪い為、事前に準備しておいたのだ。
「来るぞ……」
地震が起きているのかと思うほど波が荒れ、爆発したように海面が弾ける。姿を現したのは一見シーサーペントだが、その大きさは軽く三倍に近い。
ギラギラと光る鱗に鋭い牙。口部分に生えた数本の触角がにょろにょろと動いている。
「行くぞ! 雷帝流不完全奥義 雷式・黒雷滅破!」
「我龍弾!」
「激流龍咆哮!」
レヴィアタンが俺達を認識するよりも早く三人の技をぶつける。黒雷とエネルギー弾、そして高水圧の合わせ技がレヴィアタンの顔面にヒットし、煙がレヴィアタンの本体を隠すほど立ち昇る。
「流石にこれじゃやられないか」
煙の中で二つの瞳が光り、奴の健在を示す。
モード閻魔は前回の事を考えるとここでは使えない。もし船を沈めてしまったら取り返しがつかないからだ。
となればかなり戦力を抑えた状態で戦う必要がある。
「グルギャァァァァァ!!!」
吠えると同時に煙から抜け出し、その鼻先で船を貫かんと迫る。あれは避けてはいけない。受けるか跳ね返すかしないと船が沈む。
「リュウ! 迎え撃つぞ。サエは海に行ってくれ、流石に二人じゃ止めきれない!」
「う、うん!」
「わかったわ!」
リュウは槍、俺はシュデュンヤーを鞘にしまい、右手指を伸ばしてまっすぐ構える。レヴィアタンは俺とリュウに狙いをつけたらしく、まっすぐこちらへ迫る。
その隙にサエは甲板から海に飛び降りる。
「獄気硬化……食らえ、武雷針!!」
「ハァァァァッ!!」
最強の突きとリュウの全力の槍凪ぎ。それに対するレヴィアタンの頭突きが衝突し、強い衝撃が走る。両足が木製の甲板に食い込み、全身の骨が悲鳴を上げている。
このままじゃ俺やリュウごと船を貫かれて終わりだ。ならば……
「開け! 地獄の鍵よ!!」
右手の痣が光り、久方ぶりに門が開かれ、俺の体を通って地獄の瘴気が溢れ出す。獄気を右腕に集約し、黒雷の槍と化してレヴィアタンと拮抗する。
「クロト、リュウ。行くわよ!」
サエの声と共にレヴィアタンの体が若干後ろに引っ張られ、こちらに余裕が出来る。とは言え、サエの力であってもシーサーペントの様に圧倒することは出来ない。力の強さもそうだが、単純な大きさが違い過ぎる。
「氷の弾丸!」
突如飛来した氷柱がレヴィアタンの左目に突き刺さり、痛みのあまり突進を止め、体を仰け反らせて吠える。
「エヴァ!」
「ごめん……遅れた」
いや、ベストタイミングだ。
すぐにエヴァを抱えて空へ飛びあがり、状況の把握とエヴァの復活を行う。レヴィアタンはサエの操る海流に乗せられ、徐々に船から離れている。リュウも俺に続き空へ飛んでいるため一旦船の心配をする必要がなくなった。
「いきなりで悪いが、行けるか? エヴァ」
「うん、任せて」
エヴァが俺の腕の中から飛び出し、海に落下する。海に落ちる刹那、エヴァの胸の魔石が光り、海面が凍る。
「氷纏・姫装束!」
氷の上に降り立ったエヴァは指を鳴らすだけでレヴィアタンを氷漬けにし、動きを封じる。真っ赤な目に長い黒髪。その上に乗った氷のティアラと真っ白なドレスが印象的なエヴァのもう一つの姿。
「ちょっと! すごく寒くなったわよ!」
少し離れたところでサエが声を上げている。確かに海の中に居るサエにとってはたまったもんじゃないだろう。
「あ、今引き上げるよ」
リュウがサエを引き上げに行き、俺とエヴァはレヴィアタンの様子を見る。この程度で死んだとは思えない。とどめを刺すなら迅速に……
「でもクロト、いいの?」
エレルリーナさんの件をエヴァは知らないはずだが、その質問には様々な思慮が含まれている気がする。
「悠長なことは言ってられない……」
シュデュンヤーを強く握り、レヴィアタンに向ける。氷の中で見開かれた目がぎょろっと動き、氷に亀裂が入る。
「エヴァ!」
「黒き氷は舞い踊る剣となり我に顕現せし」
エヴァが投げた黒氷剣を受け取り、両手を振り上げてレヴィアタンに狙いをつける。氷から解放されたレヴィアタンは真っ先に俺目掛けて吠え、その強大な顎で嚙み砕かんと迫る。
「これで沈め……雷帝流奥義 雷神式・霹靂神!!」
レヴィアタンを一撃で仕留めるにはこの技しかない。轟雷と黒雷を捩じる様にレヴィアタンに叩き落とす。
剣自体の耐久力が氷であるためにそう強力な攻撃は剣が耐えられない。この一撃で沈んでくれ。
まだ海中に居るが、わかる。これはシーサーペントではない。もう来ている、奴が、すぐそこまで。
「エレルリーナさんは?」
「廊下ですれ違ったきり見てないわ」
何事かと大慌てで団員たちが甲板に出てきているが、エレルリーナさんは居ない。
「危ないから船内に! それから船室で寝ているエヴァを引きずり出してきてくれ!」
団員にすかさず指示を出し、団員も逆らうことなくそれに従う。俺もシュデュンヤーを抜き、それが現れるのを待つ。
「来ると同時に仕掛けるぞ。獄化・地装衣 モード雷神!」
「わかった! 竜鎧装 全身!」
「任せて」
リュウは鎧を呼び、サエは近くにあった樽を蹴り倒し、水を甲板にまき散らす。この辺りに設置された樽は全てサエが操れるようにした水が入っているものだ。毎回海に入って、大規模な水を操るのは燃費が悪い為、事前に準備しておいたのだ。
「来るぞ……」
地震が起きているのかと思うほど波が荒れ、爆発したように海面が弾ける。姿を現したのは一見シーサーペントだが、その大きさは軽く三倍に近い。
ギラギラと光る鱗に鋭い牙。口部分に生えた数本の触角がにょろにょろと動いている。
「行くぞ! 雷帝流不完全奥義 雷式・黒雷滅破!」
「我龍弾!」
「激流龍咆哮!」
レヴィアタンが俺達を認識するよりも早く三人の技をぶつける。黒雷とエネルギー弾、そして高水圧の合わせ技がレヴィアタンの顔面にヒットし、煙がレヴィアタンの本体を隠すほど立ち昇る。
「流石にこれじゃやられないか」
煙の中で二つの瞳が光り、奴の健在を示す。
モード閻魔は前回の事を考えるとここでは使えない。もし船を沈めてしまったら取り返しがつかないからだ。
となればかなり戦力を抑えた状態で戦う必要がある。
「グルギャァァァァァ!!!」
吠えると同時に煙から抜け出し、その鼻先で船を貫かんと迫る。あれは避けてはいけない。受けるか跳ね返すかしないと船が沈む。
「リュウ! 迎え撃つぞ。サエは海に行ってくれ、流石に二人じゃ止めきれない!」
「う、うん!」
「わかったわ!」
リュウは槍、俺はシュデュンヤーを鞘にしまい、右手指を伸ばしてまっすぐ構える。レヴィアタンは俺とリュウに狙いをつけたらしく、まっすぐこちらへ迫る。
その隙にサエは甲板から海に飛び降りる。
「獄気硬化……食らえ、武雷針!!」
「ハァァァァッ!!」
最強の突きとリュウの全力の槍凪ぎ。それに対するレヴィアタンの頭突きが衝突し、強い衝撃が走る。両足が木製の甲板に食い込み、全身の骨が悲鳴を上げている。
このままじゃ俺やリュウごと船を貫かれて終わりだ。ならば……
「開け! 地獄の鍵よ!!」
右手の痣が光り、久方ぶりに門が開かれ、俺の体を通って地獄の瘴気が溢れ出す。獄気を右腕に集約し、黒雷の槍と化してレヴィアタンと拮抗する。
「クロト、リュウ。行くわよ!」
サエの声と共にレヴィアタンの体が若干後ろに引っ張られ、こちらに余裕が出来る。とは言え、サエの力であってもシーサーペントの様に圧倒することは出来ない。力の強さもそうだが、単純な大きさが違い過ぎる。
「氷の弾丸!」
突如飛来した氷柱がレヴィアタンの左目に突き刺さり、痛みのあまり突進を止め、体を仰け反らせて吠える。
「エヴァ!」
「ごめん……遅れた」
いや、ベストタイミングだ。
すぐにエヴァを抱えて空へ飛びあがり、状況の把握とエヴァの復活を行う。レヴィアタンはサエの操る海流に乗せられ、徐々に船から離れている。リュウも俺に続き空へ飛んでいるため一旦船の心配をする必要がなくなった。
「いきなりで悪いが、行けるか? エヴァ」
「うん、任せて」
エヴァが俺の腕の中から飛び出し、海に落下する。海に落ちる刹那、エヴァの胸の魔石が光り、海面が凍る。
「氷纏・姫装束!」
氷の上に降り立ったエヴァは指を鳴らすだけでレヴィアタンを氷漬けにし、動きを封じる。真っ赤な目に長い黒髪。その上に乗った氷のティアラと真っ白なドレスが印象的なエヴァのもう一つの姿。
「ちょっと! すごく寒くなったわよ!」
少し離れたところでサエが声を上げている。確かに海の中に居るサエにとってはたまったもんじゃないだろう。
「あ、今引き上げるよ」
リュウがサエを引き上げに行き、俺とエヴァはレヴィアタンの様子を見る。この程度で死んだとは思えない。とどめを刺すなら迅速に……
「でもクロト、いいの?」
エレルリーナさんの件をエヴァは知らないはずだが、その質問には様々な思慮が含まれている気がする。
「悠長なことは言ってられない……」
シュデュンヤーを強く握り、レヴィアタンに向ける。氷の中で見開かれた目がぎょろっと動き、氷に亀裂が入る。
「エヴァ!」
「黒き氷は舞い踊る剣となり我に顕現せし」
エヴァが投げた黒氷剣を受け取り、両手を振り上げてレヴィアタンに狙いをつける。氷から解放されたレヴィアタンは真っ先に俺目掛けて吠え、その強大な顎で嚙み砕かんと迫る。
「これで沈め……雷帝流奥義 雷神式・霹靂神!!」
レヴィアタンを一撃で仕留めるにはこの技しかない。轟雷と黒雷を捩じる様にレヴィアタンに叩き落とす。
剣自体の耐久力が氷であるためにそう強力な攻撃は剣が耐えられない。この一撃で沈んでくれ。
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