最弱属性魔剣士の雷鳴轟く
251話 初めての海上
「お待たせしました」
海岸に向かうと、船の操縦を担当する数人の団員と、エレルリーナさんが待っていた。
スーサの姿はない。周囲を見渡しても姿は確認できない。あの巨体を隠すのは難しいはず……ここにすら来てないのか。
「スーサは今朝から顔を見せないの。残念だけれどもう出発しましょう」
「あ、はい」
その後俺達は船上での簡単な注意だけ受け、船に乗り込んだ。船の上は予想以上に揺れるもんで、エヴァは乗って数十秒でダウンした。
「大丈夫かしら?」
「いつものことなんで……戦闘時は船の上にいないので大丈夫だと思います」
「……? わかりました。出航してしばらくしたら作戦会議しましょう。レヴィアタンの住処まではしばらくあるから安心して休んでいてください」
その後は海岸から見送ってくれる団員に手を振り、船は出航した。エヴァはエレルリーナさんの勧め通り、船内にある部屋に運び込んだ。
だいぶ辛そうなので、上に居るリュウ達に船室に居ることだけ伝え、エヴァと同じ部屋に居ることにした。
「その酔いも何とかする方法見つけないとな」
「うん……プリンセスコートを着てれば身体能力も大幅に上がるから、平衡感覚とかもしっかりするんだけど……」
「ずっと発動させておくわけにもいかないしな」
氷纏・姫装束は強力な反面反動も大きい。定期的に空に連れ出してやるか。
雷化・天装衣や獄化・地装衣を発動して居る時ならば、地表の電気と反発させて滞空していられるという事が発覚した。レヴィアタン戦において船上だけで戦うのは不利すぎると、出発前にエヴァが考案した技だ。
「とりあえず寝な。起きてるよりはマシだろう。なにかあればすぐ起こしてやる」
「うん、ありがと」
目を閉じ、しばらくはつらそうな表情が続いていたが、眠りにつくと安心したような表情をしている。連れ回している俺が言えたセリフじゃないが、エヴァにはなるべく苦労を掛けたくない。
そろそろ決断すべきだろう。大魔人との戦いを。
◇
「……ロト! おい、クロト!」
「ん……?」
いつの間にか寝ていたらしく、誰かの呼ぶ声で目が覚める。椅子に座ったまま寝ていたようで、腰が若干痛い。エヴァかと思いベッドに目を向けるが、先ほどと同じように寝息を立てている。
ドアのほうを見ると、リュウが立っていた。どうやら呼んでいたのはリュウらしい。
「どうした?」
「エレルリーナさんが作戦会議だって」
「わかった、すぐ行く」
手や足を伸ばしてからエヴァは起こさずに部屋を出る。時間的には昼頃か。
朝出航したことを考えればずいぶん寝ていた。この船上独特の揺れが妙に眠気を誘う。
「すいません、遅れました」
甲板に出ると、エレルリーナさんとサエ、リュウが待っており、あとは俺だけだった。
「いえ、大丈夫ですよ。エヴァリオンさんは?」
「今は下で寝てます」
「そうですか、ではそっとしておきましょう。レヴィアタンの海域に入るのは今日の深夜頃です。しかし、それは海域の末端に過ぎません。更にその辺りからシーサーペントが現れます」
「シーサーペント……?」
「魔物です。小型の海蛇で、一体であれば大した脅威にはなりません。しかし、奴らの脅威はその数です。レヴィアタンを女王とし、シーサーペントは言わば女王を守る兵士です」
つまりレヴィアタンと戦う上でシーサーペントとの戦闘は避けられない。数がかなりいるとなるとそっちに人を割かないと、船がやられてしまう、か……
「そんなのボコして進めばいいじゃない!」
「可能ではありますが、単純な人数が足りません。シーサーペント一体に対し、一人で対応できたとしても、団員全員が居なければ足りません。それにシーサーペントは数が脅威ではありますが一人で倒せるほど弱くもありません」
俺達四人がいるとは言え、船を囲まれると厳しい。船を気にしなければ問題にはならないが、沈むと本末転倒だ。
「レヴィアタンは巨大な海蛇……動くだけで波は荒れ、大渦が起こります。一週間前もシーサーペントに船を止められ、その間にレヴィアタンの咆哮で沈みました」
となると、取れる戦法は三人が船を守りながらシーサーペントと戦闘。一人でレヴィアタンを叩くぐらいか。エヴァに話を聞く必要はありそうだが……
「……!? なんだ?」
「ゆ、揺れる揺れる……」
突然船が大きく揺れる。さっきまで穏やかだった海が荒れている。急な天気の変化かと思ったが違う。空は快晴。
よくよく海を見れば細長い影がいくつも海の中に見える。
「そんな……まだその海域には入ってないはず……」
「エレルリーナさん、これは……!?」
「シーサーペントです! 気をつけてください。全方位から同時に来ます!」
エヴァを呼びに行っている時間は無い。
「ここは俺達だけで切り抜けるぞ! 雷化・天装衣!」
「竜鎧装 全身! 翼! 竜牙閃!!」
シュデュンヤーを抜くと同時に海面から海蛇が顔を現す。細長い胴体。半分ほど海中に入っている為、確認はできないが手足はない。
俺達に向けている顔には鱗が生え、牙が鋭く光る。数はおよそ十。だが、水中にまだいるかもしれない。
「リュウ! 私を連れて空へ!」
「え、あ、うん」
全身を鎧に包んだリュウがサエを抱えて空へ羽ばたく。何をするつもりか知らないが、サエなら大丈夫だろう。この場を一人で抑えることが先決。
「エレルリーナさん! 船内へ逃げてください。雷帝流 稲妻剣・獄!!」
正面から突進してくるシーサーペントに真っ向から剣を振り下ろす。小型のレヴィアタンとは聞いていたが、それでもデカいし力も強い。簡単にはいかないらしい。
海岸に向かうと、船の操縦を担当する数人の団員と、エレルリーナさんが待っていた。
スーサの姿はない。周囲を見渡しても姿は確認できない。あの巨体を隠すのは難しいはず……ここにすら来てないのか。
「スーサは今朝から顔を見せないの。残念だけれどもう出発しましょう」
「あ、はい」
その後俺達は船上での簡単な注意だけ受け、船に乗り込んだ。船の上は予想以上に揺れるもんで、エヴァは乗って数十秒でダウンした。
「大丈夫かしら?」
「いつものことなんで……戦闘時は船の上にいないので大丈夫だと思います」
「……? わかりました。出航してしばらくしたら作戦会議しましょう。レヴィアタンの住処まではしばらくあるから安心して休んでいてください」
その後は海岸から見送ってくれる団員に手を振り、船は出航した。エヴァはエレルリーナさんの勧め通り、船内にある部屋に運び込んだ。
だいぶ辛そうなので、上に居るリュウ達に船室に居ることだけ伝え、エヴァと同じ部屋に居ることにした。
「その酔いも何とかする方法見つけないとな」
「うん……プリンセスコートを着てれば身体能力も大幅に上がるから、平衡感覚とかもしっかりするんだけど……」
「ずっと発動させておくわけにもいかないしな」
氷纏・姫装束は強力な反面反動も大きい。定期的に空に連れ出してやるか。
雷化・天装衣や獄化・地装衣を発動して居る時ならば、地表の電気と反発させて滞空していられるという事が発覚した。レヴィアタン戦において船上だけで戦うのは不利すぎると、出発前にエヴァが考案した技だ。
「とりあえず寝な。起きてるよりはマシだろう。なにかあればすぐ起こしてやる」
「うん、ありがと」
目を閉じ、しばらくはつらそうな表情が続いていたが、眠りにつくと安心したような表情をしている。連れ回している俺が言えたセリフじゃないが、エヴァにはなるべく苦労を掛けたくない。
そろそろ決断すべきだろう。大魔人との戦いを。
◇
「……ロト! おい、クロト!」
「ん……?」
いつの間にか寝ていたらしく、誰かの呼ぶ声で目が覚める。椅子に座ったまま寝ていたようで、腰が若干痛い。エヴァかと思いベッドに目を向けるが、先ほどと同じように寝息を立てている。
ドアのほうを見ると、リュウが立っていた。どうやら呼んでいたのはリュウらしい。
「どうした?」
「エレルリーナさんが作戦会議だって」
「わかった、すぐ行く」
手や足を伸ばしてからエヴァは起こさずに部屋を出る。時間的には昼頃か。
朝出航したことを考えればずいぶん寝ていた。この船上独特の揺れが妙に眠気を誘う。
「すいません、遅れました」
甲板に出ると、エレルリーナさんとサエ、リュウが待っており、あとは俺だけだった。
「いえ、大丈夫ですよ。エヴァリオンさんは?」
「今は下で寝てます」
「そうですか、ではそっとしておきましょう。レヴィアタンの海域に入るのは今日の深夜頃です。しかし、それは海域の末端に過ぎません。更にその辺りからシーサーペントが現れます」
「シーサーペント……?」
「魔物です。小型の海蛇で、一体であれば大した脅威にはなりません。しかし、奴らの脅威はその数です。レヴィアタンを女王とし、シーサーペントは言わば女王を守る兵士です」
つまりレヴィアタンと戦う上でシーサーペントとの戦闘は避けられない。数がかなりいるとなるとそっちに人を割かないと、船がやられてしまう、か……
「そんなのボコして進めばいいじゃない!」
「可能ではありますが、単純な人数が足りません。シーサーペント一体に対し、一人で対応できたとしても、団員全員が居なければ足りません。それにシーサーペントは数が脅威ではありますが一人で倒せるほど弱くもありません」
俺達四人がいるとは言え、船を囲まれると厳しい。船を気にしなければ問題にはならないが、沈むと本末転倒だ。
「レヴィアタンは巨大な海蛇……動くだけで波は荒れ、大渦が起こります。一週間前もシーサーペントに船を止められ、その間にレヴィアタンの咆哮で沈みました」
となると、取れる戦法は三人が船を守りながらシーサーペントと戦闘。一人でレヴィアタンを叩くぐらいか。エヴァに話を聞く必要はありそうだが……
「……!? なんだ?」
「ゆ、揺れる揺れる……」
突然船が大きく揺れる。さっきまで穏やかだった海が荒れている。急な天気の変化かと思ったが違う。空は快晴。
よくよく海を見れば細長い影がいくつも海の中に見える。
「そんな……まだその海域には入ってないはず……」
「エレルリーナさん、これは……!?」
「シーサーペントです! 気をつけてください。全方位から同時に来ます!」
エヴァを呼びに行っている時間は無い。
「ここは俺達だけで切り抜けるぞ! 雷化・天装衣!」
「竜鎧装 全身! 翼! 竜牙閃!!」
シュデュンヤーを抜くと同時に海面から海蛇が顔を現す。細長い胴体。半分ほど海中に入っている為、確認はできないが手足はない。
俺達に向けている顔には鱗が生え、牙が鋭く光る。数はおよそ十。だが、水中にまだいるかもしれない。
「リュウ! 私を連れて空へ!」
「え、あ、うん」
全身を鎧に包んだリュウがサエを抱えて空へ羽ばたく。何をするつもりか知らないが、サエなら大丈夫だろう。この場を一人で抑えることが先決。
「エレルリーナさん! 船内へ逃げてください。雷帝流 稲妻剣・獄!!」
正面から突進してくるシーサーペントに真っ向から剣を振り下ろす。小型のレヴィアタンとは聞いていたが、それでもデカいし力も強い。簡単にはいかないらしい。
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