最弱属性魔剣士の雷鳴轟く

相鶴ソウ

229話 『STRONGER』一部抜粋

 ……ここ二週間程で目立った動きを見せたパーティが一組ある。
 以前より存在はしており、結成してすぐに伝説級魔物、皇帝鬼エンペラーオーガを倒すなどの高い実績を誇っていたが、取材拒否や情報口止めによってその存在は謎のままであった。
 そんなパーテイが幾ばくの時を経て、現在活動を活発化させている。


 町人の話によれば、以前帝国を恐怖に陥れたハンターの討伐、街へ攻めてきたウェヌス盗賊団を撃退するという信じられない功績を残しており、記者が確認したその実力は確かに本物だった。
 ここ二週間で彼らが遂行させた依頼の数は約五十件を越え、倒した魔物の数は三百以上にもなっている。
 彼らはカサドルの街で活動している為、討伐依頼の難易度がそもそも高い。加えてアルバレス公爵領は最も冒険者業が盛んでライバルも多い。そんな中、周囲を抑えてここまで注目を集めるパーティの取材に今回は成功した。
 今回はその戦力評価について触れていこうと思う。


 パーティの最大戦力の一角と称される〈獅子の牙〉レオ。階級ミスリル。
 魔術は不明だが、戦闘スタイルは刀を使った接近戦を得意としている。しかし空を飛ぶ魔物を撃ち落としていた事から中距離の戦闘も可能。また異様なオーラを纏った攻撃が多く、魔術による援護も考えられる。
 一行がセントレイシュタンに滞在している時はミスリル級冒険者パーティ〈地獄の炎帝ヘル・フォース〉のリーダー、ダダンを倒したという情報も確認されている。真偽のほどは別件でセントレイシュタンに取材に行っていた記者が〈舞姫〉のナイアリスから聞いた情報であるため、疑いようはないだろう。
 異常な戦績を誇るパーティの要と言っても過言ではない。
 階級こそミスリルではあるが、パーティのリーダーに次ぐ実力で次期オリハルコンであるとも言われている。


 続いてはパーティ唯一の遠距離攻撃を可能とする〈月女神アルテミス〉のシエラ・アグリアス。階級ゴールド。
 基本装備は弓矢とナイフで魔術は光属性を確認。森の中での機動力の高さ、足場の悪い中での正確な狙撃。さらに回復や結界にも優れており、接近戦も可能。
 百メートル以上離れた魔物への正確な射撃は超遠距離と呼ぶにふさわしい。
 その高すぎる視力と弓の腕は右目の月の女神の投擲眼アルテミス・シュス・アイが大きく関係している。能力の詳細は不明。


 そして上記の二人を凌ぐ実力者、〈氷姫ひょうき〉と名高いエヴァリオン。階級ミスリル。
 人理限界とされる氷術を使い、その威力、効果範囲も常軌を逸している。見た目こそ可憐な少女だが、数体のオーガを一瞬にして氷漬けにしている場面を目撃した。
 魔術のみの観点で見ればパーティ内トップ。外と比べれば〈風神〉ともいい勝負が出来るであろう。更に特筆すべきは氷でできた衣装を身にまとった時の実力だ。今まで見たこともない黒い氷を使いこなし、近距離中距離を完全に掌握した戦闘を行う。
 相当高度な炎使いか、馬鹿でない限り戦うのは避けるべきであろう。


 次、〈炎刀の巫女〉リンリ。階級シルバー。
 三人と比べれば確かに格は一つ落ちるものの、その実力はシルバーの域では無い。
 炎を纏った剣技を使う彼女は上記三人のような規格外の能力ではないものの、逆にシンプルな戦い方を極めた形とも言える。
 特に注目すべきは色の変わる炎である。確認しただけで赤、青、白の炎を操っていた。ただ色が変わるだけでなく威力、範囲や温度も変わっていると推定。また、独自の流派を持っていることから予想できない剣技、手数の多さも脅威と言える。


 未知数な二人の新参者。〈凱龍〉のリュウと〈海の現身〉サエ。階級はリュウがブロンズ、サエがアイアン。
 龍鎧装と呼ばれる特殊な鎧を虚空から呼び出す能力を持っているリュウ。飛行、槍の召喚、手のひらから炎やエネルギー弾を放出。これらの戦闘方法をを確認。
 単純な耐久力と攻撃手段が厄介。が、頭の切れが悪いのか一人ではそこまで脅威にならない。
 続いて、サエは以前より冒険者として活動していたが最近パーティに加入。水術は非常にレベルが高く、川や池の水を操っている場面も目撃。水術にそう言った術がないことから何か特別な力を持っていると推察されるが詳細は不明。
 大規模な物量戦を得意とし、その魔力は常人とはかけ離れたレベルの域である。場所に左右される反面、川や海が近くにあれば無類の強さを誇るといっても過言ではない。
 二人とも最近パーティに加入した為、階級は他の五人に比べて大きく劣る。しかし、この二人もパーティ内での戦力であることに間違いはなく、すぐに階級も追いつくと予想される。


 最後は雷撃ライトニングボルト クロト・アルフガルノ。階級ミスリル。
 これだけ大きな戦力を保有するパーティのリーダー。その実力も当然本物。
 これまでに見た戦闘能力が限界とは思えないが、彼の操る雷撃は非常に強力で、とても不遇と呼ばれている雷術の威力ではない。
 全身が黄色みがかった状態になった時の速度と威力は人間の域を超えている。目撃情報によればさらに強大な力も隠し持っているようで、実力的にはオリハルコン級ともそう差はないだろう。
 更に我々が特に感じたのは彼の強い目的意識である。現在大陸を攻撃している魔族に故郷を滅ぼされたという情報もあり、人一倍復讐への気持ちが強い。
 冒険者業もそのための準備だと言い、その行動力の高さも評価すべきであろう。


 以上が七名の戦力評価だ。パーティの階級はミスリルだが、パーティ内にミスリルが三名もおり、実力だけで言えば階級以上の実力があるともいえる。
 階級を超えた力の持ち主が多数所属するこのパーティのこれからに期待したいところではあるが、残念な事に彼らはカサドルを離れ、次の目的地へ向かうそうだ。


 本誌で彼らを扱うこともしばらくは無いだろう。


 そうだ。最後に彼らの名を刻んでおこう。魔族を狩ると宣言し、世界に衝撃を多く与える彼らはまさに雷。
 故に彼らはこう呼ばれる。


 ミスリル級冒険者パーティ〈魔狩りの雷鳴ディアブロ・トニトルス

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