最弱属性魔剣士の雷鳴轟く
222話 オリハルコン級同士の戦い
「今この大陸を攻撃している魔王の事は知ってるでしょ? 率直に言えばそれと戦ってほしいのよ」
マスターボウの言葉に三人とも一様に眉をひそめる。
それはそうだ。魔王からの攻撃で崩壊したのをいいことに町の一角を占領している三人が魔王と戦うなど想像すらしていない。
「真剣に言ってる?」
「私たちがそれを承諾するとでもお思いですか?」
この三人とマスターボウは浅はかならぬ縁があり、面識はある。
お互いの事情にもそれなりに精通しているため、それを頼むことがどれだけ希望のないことかをマスターボウは十分に理解している。
しかし、今この大陸において帝国軍の次に戦力を保有しているのは冒険者ギルド。その中でもトップに君臨する三人の力はこれからの戦いを有利に進めるためには必要不可欠と言ってもいい。
「……良い反応をするとは思ってないわよん。でも、今回ばかりは言うことを聞いてもらうわよ。力ずくでもっ!」
言葉が切れるのとほぼ同時に一本の剣筋がマスターボウを真っ二つに斬り裂いた。
「俺達の主義は弱肉強食! 力が欲しいなら力を見せな!」
「確かに貴方はお強いですが私達三人が揃ってる時に来るのは些か無謀かと」
ベンケイが傍らの立てかけてあった刀を素早く抜き、反応できないほどの速度でマスターボウを斬った。……ように見えたが、すぐにマスターボウの姿は揺らぎ、一陣の風と共に姿を消した。
「やはり風分身……が、私の気配察知まではごまかせませんよ」
サーキンの投げたナイフが床を転がっていた丸テーブルを貫き、陰に身を潜めていたマスターボウを突き刺す。苦痛の表情を浮かべながらもニヤリと笑った直後、再びその姿が揺らいで消えた。
「何っ!?」
「最初から戦いを想定していた私が何の対策もしてこないと思ったのかしらん?」
姿は見えず、声のみがその場に響いている。
三人は互いに背を向けながら周囲を警戒する。サーキンは影属性魔術の他に気配隠蔽や気配察知を得意としており、先ほどから何度もマスターボウの気配をとらえようとしているが、現れては消え、消えては現れるを繰り返しているせいではっきりと捉える事が出来ない。
「そこかっ!」
狙いを定めて伸ばした影の先、カウンターテーブルの上にマスターボウは居た。鋭利な槍の如く貫こうとする影を避けるでも防ぐでもなくただしっかりと見定める。
マスターボウの心臓に影が突き刺さろうとしたその瞬間、影は内部から破裂するように散り、跡形もなく消え去る。
「サーキン、あなたの高すぎる察知能力も応用性の高い影属性魔術も……私には効かないわよん」
「はぁぁぁぁ!!」
驚愕の表情を浮かべたサーキンの頭上をベンケイが飛び越え、マスターボウ目掛けて刀を振り下ろす。寸分の狂いなく振り下ろされた刀はマスターボウを真っ二つに斬り裂いた。確かに斬り裂いた……はずなのにマスターボウは再三風になって消えた。
「なんなの、その力……」
「以前よりもかなり魔術のレベルを上げていますね」
「しかもこっちはほぼ手の内を知られてる。知られているとリエラの術も効かないのは痛手だ」
「……風だけじゃないわね? その力」
二階部分に姿を現したマスターボウは流石というようにリエラを見る。
「気付くのが早すぎるわよん。でも、その通り……これはついこの間目覚めた新しい力。この場の風を支配して来た私はついにその究極形に至った! そう……名付けるなら空間魔術。今の私は、この空間を支配している」
「空間魔術……」
「人理限界……それも後天性の、ですか」
「ザシャシャ、こりゃ本気でやらねぇとやばそうだ」
三人の目の色が変わり雰囲気がガラッと変わる。
「手の内は出来るだけ隠しておきたかったのだけれど……」
「見せてあげましょう。我々のセカンドスペル」
「ザシャシャ、成長したのはお前だけじゃねーってよ」
直後、マスターボウのわき腹から血が噴き出す。犯人はベンケイ。が、マスターボウだけでなくこの場に居た誰も何が起きたのか瞬時には理解できなかった。
今まで攻撃を食らう直前に風分身と場所を入れ替えていたが、それが間に合わないほどの速度で攻撃を食らったのだとすぐに理解したが、理解したからと言って対処できるものではない。
「闘影武技……」
右手を手刀の形のまま前に構え、左手の拳を腕を曲げて構える。そして左腕に影がまとわりつく。そしてほぼ消えるように移動したサーキンが左拳をマスターボウに向かってねじ込むように放つ。
「……滅拳・絶影!!」
回避は無理と悟ったマスターボウは空間を歪め、空間そのものを盾にし、サーキンの拳を受ける。
「はぁぁぁぁ!!」
だが、捻じ曲げられた空間をさらに曲げながら拳は食い込み、防御を突き抜けマスターボウの腹に拳が刺さる。影の衝撃に吹き飛び、一階にまで落とされたマスターボウ。
埃が舞ってその姿は見えないが確実に大ダメージを受けたのは確かだ。
「私のセカンドスペルは見せる間もなかったわね」
「絶影は並みの人間では原形も留められねぇ、形が残ってるだけ流石だぜ」
「……む、これは?」
三人の足元に白い靄が立ち込める。
「まさか……あなたが姿を現しますか」
マスターボウの言葉に三人とも一様に眉をひそめる。
それはそうだ。魔王からの攻撃で崩壊したのをいいことに町の一角を占領している三人が魔王と戦うなど想像すらしていない。
「真剣に言ってる?」
「私たちがそれを承諾するとでもお思いですか?」
この三人とマスターボウは浅はかならぬ縁があり、面識はある。
お互いの事情にもそれなりに精通しているため、それを頼むことがどれだけ希望のないことかをマスターボウは十分に理解している。
しかし、今この大陸において帝国軍の次に戦力を保有しているのは冒険者ギルド。その中でもトップに君臨する三人の力はこれからの戦いを有利に進めるためには必要不可欠と言ってもいい。
「……良い反応をするとは思ってないわよん。でも、今回ばかりは言うことを聞いてもらうわよ。力ずくでもっ!」
言葉が切れるのとほぼ同時に一本の剣筋がマスターボウを真っ二つに斬り裂いた。
「俺達の主義は弱肉強食! 力が欲しいなら力を見せな!」
「確かに貴方はお強いですが私達三人が揃ってる時に来るのは些か無謀かと」
ベンケイが傍らの立てかけてあった刀を素早く抜き、反応できないほどの速度でマスターボウを斬った。……ように見えたが、すぐにマスターボウの姿は揺らぎ、一陣の風と共に姿を消した。
「やはり風分身……が、私の気配察知まではごまかせませんよ」
サーキンの投げたナイフが床を転がっていた丸テーブルを貫き、陰に身を潜めていたマスターボウを突き刺す。苦痛の表情を浮かべながらもニヤリと笑った直後、再びその姿が揺らいで消えた。
「何っ!?」
「最初から戦いを想定していた私が何の対策もしてこないと思ったのかしらん?」
姿は見えず、声のみがその場に響いている。
三人は互いに背を向けながら周囲を警戒する。サーキンは影属性魔術の他に気配隠蔽や気配察知を得意としており、先ほどから何度もマスターボウの気配をとらえようとしているが、現れては消え、消えては現れるを繰り返しているせいではっきりと捉える事が出来ない。
「そこかっ!」
狙いを定めて伸ばした影の先、カウンターテーブルの上にマスターボウは居た。鋭利な槍の如く貫こうとする影を避けるでも防ぐでもなくただしっかりと見定める。
マスターボウの心臓に影が突き刺さろうとしたその瞬間、影は内部から破裂するように散り、跡形もなく消え去る。
「サーキン、あなたの高すぎる察知能力も応用性の高い影属性魔術も……私には効かないわよん」
「はぁぁぁぁ!!」
驚愕の表情を浮かべたサーキンの頭上をベンケイが飛び越え、マスターボウ目掛けて刀を振り下ろす。寸分の狂いなく振り下ろされた刀はマスターボウを真っ二つに斬り裂いた。確かに斬り裂いた……はずなのにマスターボウは再三風になって消えた。
「なんなの、その力……」
「以前よりもかなり魔術のレベルを上げていますね」
「しかもこっちはほぼ手の内を知られてる。知られているとリエラの術も効かないのは痛手だ」
「……風だけじゃないわね? その力」
二階部分に姿を現したマスターボウは流石というようにリエラを見る。
「気付くのが早すぎるわよん。でも、その通り……これはついこの間目覚めた新しい力。この場の風を支配して来た私はついにその究極形に至った! そう……名付けるなら空間魔術。今の私は、この空間を支配している」
「空間魔術……」
「人理限界……それも後天性の、ですか」
「ザシャシャ、こりゃ本気でやらねぇとやばそうだ」
三人の目の色が変わり雰囲気がガラッと変わる。
「手の内は出来るだけ隠しておきたかったのだけれど……」
「見せてあげましょう。我々のセカンドスペル」
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直後、マスターボウのわき腹から血が噴き出す。犯人はベンケイ。が、マスターボウだけでなくこの場に居た誰も何が起きたのか瞬時には理解できなかった。
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「……滅拳・絶影!!」
回避は無理と悟ったマスターボウは空間を歪め、空間そのものを盾にし、サーキンの拳を受ける。
「はぁぁぁぁ!!」
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やっと、ふんたらの霧だー