最弱属性魔剣士の雷鳴轟く
219話 想いの高さ
「おい、何があったんだ?」
「ウェヌス盗賊団がいただろう!?」
「この街は大丈夫なの?」
これは予想外……というか考えもしなかった。
だが考えてみればそうだよな。突然襲撃されたと思ったらあのウェヌス盗賊団が誰かと戦い、そして去っていったのだ。カサドルの人からすれば前代未聞だろう。今まで仕掛けてくる事はなかったウェヌス盗賊団が出てきただけでも大騒ぎなわけだし……
そしてその疑問の矛先は戦っていた俺達に向けられるのも当然といえば当然。
答えないわけにもいかないよなぁと思いつつもこっちはエヴァ、シエラ、リンリが自分では歩けないほどダメージが溜まってるし、残りの四人もふらふらだ。
「えーっと……」
どうしたもんかと手をこまねいていると、人集りが二つに分かれ一人の老人が出てきた。傍らにはゼラとシャサールが居り、恐らく俺達の事を説明してくれたのだろう。民衆をサッと散らせ、俺達を宿に案内してくれた。
俺以外の六人を部屋に運び、俺は一人、町長と名乗った老人と話をする為、宿のロビーで向かい合う。
「シャサールもお世話になったとか……ウェヌス盗賊団の件も含め、誠にありがとうございます」
びっくりするぐらい深々と頭を下げる町長に逆に申し訳なくなってくる。
「あ、いえいえ。ウェヌス盗賊団はもう人を襲ったりしませんので安心してください」
ゼノンは思っていたよりも話の出来るタイプで、俺がした話とは別にもう街や人を襲わない事を約束してくれた。そもそもそういった行為はゼノンの本意とするところでは無かったようだ。ゼノンの行動原理は常に仲間の為であり、そこは信用してほしいとハザックのお墨付きももらってある。
ありがとうございますありがとうございますと繰り返し頭を下げていた町長の目からぽろっと涙が溢れる。
そんなに!?と思い、詳しく話を聞くとどうやらウェヌス盗賊団を恐れ仕事ができなくなった冒険者や逃げようにも逃げられない環境から町の活気は徐々に下がり、最近では以前の活気はなくなってしまっていたそうだ。
俺が見たときはそんな風に感じなかったが、それも空元気だという。
「時間はかかると思いますが、これから皆とともに頑張っていきます」
俺はうんうんと頷き、町長も嬉しそうに笑う。
更には事の終始を町民に話しておいてくれるそうなので俺達が質問責めされる心配も無くなった。
その後、俺も獄化・地装衣の連続使用や閻魔の暴走で身も心もボロボロだったため、後の事を町長に任せ、少し眠る事にした。
部屋は三部屋取られており、そのうち一番ロビーから近い部屋に入る。確かここが俺の割り当てと言われていたはずだ。
町長に「恩人に対し一人一部屋も取れずに申し訳無い……」と本当に申し訳なさそうに頭を下げていたが俺達は貴族でもなんでもない。そんなのは慣れっこだ。一部屋で三人は寝れる設計になっているため、一部屋目が俺とエヴァ、二部屋目にレオとリュウ、三部屋目がシエラ、リンリ、サエとなっているらしい。
サエは俺達とほぼ関わりがないが、大丈夫だろうか……いや、心配は起きてからしよう。倒れるようにしてベッドに入り、間髪入れず襲ってきた睡魔に抵抗せずまぶたを閉じる。
「おやすみ……」
◇
「……おはよ……っておわっ!?」
普段はエヴァが先に起きていて俺が起こされるのだが、珍しくそれがないななんて考えているとエヴァの顔が目の前にあり、思わず声を上げる。
先ほどから起きていたのか布団の端を鼻の上まで持ち上げたままこっちを見ていた。
「起きていたなら起こしてくれれば……」
「疲れてるかな~と思って!」
ニコニコと笑いながら答える。それは有り難いが、後から恥ずかしくなってくる。と、そんなことよりエヴァの顔色を改めてよく見る。
エヴァは何かついてるのかと疑問符を浮かべながら俺を見返してくる。
「どうしたの?」
「いや、俺のせいであれだけのダメージを受けたから……大丈夫かなって」
俺の言葉を聞いて逆に安心するように胸を撫で下ろし、まっすぐ俺の目を見つめる。
「クロト、私は無事だし、今まで私がかけてきた迷惑に比べれば全然大したことないよ!」
「でも……もしかしたら俺はエヴァを殺していたかもしれない……」
「クロトは私に殺されるかもしれないからって暴走した私を見捨てた?」
「そんなわけ……」
「それと一緒だよ。クロトが私を大事に思ってくれているように、私もクロトが大事!その想いに上や下はないと思う!」
優しく目を細めながら俺の髪を撫でる。
「ごめん……ありがとう」
俺の言葉にエヴァはニコッと笑い、そのまま撫で続ける。
「でも体は本当に大丈夫か?」
「氷纏・姫装束の反動でまだ魔力が回復しきってないから、全然体動かないけど、痛いところは全然ない!」
自分でも驚いているのだろう。
ライラックの癒術は本物だったんだな。ってか体動ないのに何故隣のベッドから俺が寝ているベッドまで移動できたんだ……
「ウェヌス盗賊団がいただろう!?」
「この街は大丈夫なの?」
これは予想外……というか考えもしなかった。
だが考えてみればそうだよな。突然襲撃されたと思ったらあのウェヌス盗賊団が誰かと戦い、そして去っていったのだ。カサドルの人からすれば前代未聞だろう。今まで仕掛けてくる事はなかったウェヌス盗賊団が出てきただけでも大騒ぎなわけだし……
そしてその疑問の矛先は戦っていた俺達に向けられるのも当然といえば当然。
答えないわけにもいかないよなぁと思いつつもこっちはエヴァ、シエラ、リンリが自分では歩けないほどダメージが溜まってるし、残りの四人もふらふらだ。
「えーっと……」
どうしたもんかと手をこまねいていると、人集りが二つに分かれ一人の老人が出てきた。傍らにはゼラとシャサールが居り、恐らく俺達の事を説明してくれたのだろう。民衆をサッと散らせ、俺達を宿に案内してくれた。
俺以外の六人を部屋に運び、俺は一人、町長と名乗った老人と話をする為、宿のロビーで向かい合う。
「シャサールもお世話になったとか……ウェヌス盗賊団の件も含め、誠にありがとうございます」
びっくりするぐらい深々と頭を下げる町長に逆に申し訳なくなってくる。
「あ、いえいえ。ウェヌス盗賊団はもう人を襲ったりしませんので安心してください」
ゼノンは思っていたよりも話の出来るタイプで、俺がした話とは別にもう街や人を襲わない事を約束してくれた。そもそもそういった行為はゼノンの本意とするところでは無かったようだ。ゼノンの行動原理は常に仲間の為であり、そこは信用してほしいとハザックのお墨付きももらってある。
ありがとうございますありがとうございますと繰り返し頭を下げていた町長の目からぽろっと涙が溢れる。
そんなに!?と思い、詳しく話を聞くとどうやらウェヌス盗賊団を恐れ仕事ができなくなった冒険者や逃げようにも逃げられない環境から町の活気は徐々に下がり、最近では以前の活気はなくなってしまっていたそうだ。
俺が見たときはそんな風に感じなかったが、それも空元気だという。
「時間はかかると思いますが、これから皆とともに頑張っていきます」
俺はうんうんと頷き、町長も嬉しそうに笑う。
更には事の終始を町民に話しておいてくれるそうなので俺達が質問責めされる心配も無くなった。
その後、俺も獄化・地装衣の連続使用や閻魔の暴走で身も心もボロボロだったため、後の事を町長に任せ、少し眠る事にした。
部屋は三部屋取られており、そのうち一番ロビーから近い部屋に入る。確かここが俺の割り当てと言われていたはずだ。
町長に「恩人に対し一人一部屋も取れずに申し訳無い……」と本当に申し訳なさそうに頭を下げていたが俺達は貴族でもなんでもない。そんなのは慣れっこだ。一部屋で三人は寝れる設計になっているため、一部屋目が俺とエヴァ、二部屋目にレオとリュウ、三部屋目がシエラ、リンリ、サエとなっているらしい。
サエは俺達とほぼ関わりがないが、大丈夫だろうか……いや、心配は起きてからしよう。倒れるようにしてベッドに入り、間髪入れず襲ってきた睡魔に抵抗せずまぶたを閉じる。
「おやすみ……」
◇
「……おはよ……っておわっ!?」
普段はエヴァが先に起きていて俺が起こされるのだが、珍しくそれがないななんて考えているとエヴァの顔が目の前にあり、思わず声を上げる。
先ほどから起きていたのか布団の端を鼻の上まで持ち上げたままこっちを見ていた。
「起きていたなら起こしてくれれば……」
「疲れてるかな~と思って!」
ニコニコと笑いながら答える。それは有り難いが、後から恥ずかしくなってくる。と、そんなことよりエヴァの顔色を改めてよく見る。
エヴァは何かついてるのかと疑問符を浮かべながら俺を見返してくる。
「どうしたの?」
「いや、俺のせいであれだけのダメージを受けたから……大丈夫かなって」
俺の言葉を聞いて逆に安心するように胸を撫で下ろし、まっすぐ俺の目を見つめる。
「クロト、私は無事だし、今まで私がかけてきた迷惑に比べれば全然大したことないよ!」
「でも……もしかしたら俺はエヴァを殺していたかもしれない……」
「クロトは私に殺されるかもしれないからって暴走した私を見捨てた?」
「そんなわけ……」
「それと一緒だよ。クロトが私を大事に思ってくれているように、私もクロトが大事!その想いに上や下はないと思う!」
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