最弱属性魔剣士の雷鳴轟く
215話 ライラック
飛んでくる黒雷をギリギリまで回避し、回避しきれないものをやむを得ず盾で防御。そして剣で攻撃する事で黒雷を使わせ、その一瞬の隙きにクロトの体へ触れる距離まで一気に詰める。
腰に抱きつき、ギュッと力を込める。もし雷化で逃げられたらと言う予想が一瞬過ぎったけど、そんな事はなくしっかりと捉えられた。
「捕まえた……」
「なんだ……離せ!」
クロトが振りほどこうとするのを維持でも離さないように掴む。
私が暴走した時も、体に触れるというのは大きな力を持っていた。今回だって例外ではないはず……
「クロト……戻ってきて!」
「離れろ!!」
バチッと嫌な音が聞こえると同時にクロトの全身から黒雷が放たれ、私へ襲いかかる。氷纏・姫装束を使ってなかったら一瞬で皮膚を焼かれていたと思う。
全身が痺れ、焼けるような感覚に耐えながら何とかその場に踏みとどまり、クロトを離すまいと必死に掴む。
「クロト……クロ……ト……」
放電が途切れ、私は力無く膝をつく。それでも絶対に離さないように手だけは腰に回したまま耐える。全身から黒い煙が上がっているけど、自分の身を心配してる暇はない。
「クロト……」
私の問いかけに意味がわからないという目でクロトが返す。その目をじっと見、視線を外さないようになんとか立ち上がる。
「……クロト、大好き」
その言葉に反応するよりも早く、クロトの頭に手を回し、唇と唇をそっとくっつける。クロトの身長に私の身長では背伸びしても届かず、少し引き寄せる事でなんとか届く。
暫くそうしているとバチッと一際大きな音と衝撃が起こり、クロトの獄化・地装衣が解ける。クロトが驚きと悲しさと、あとちょっと嬉しさが混ざった表情を見て、そのまま私の意識が遠のくのを感じる。
「……よか……った……」
◇
頭にかかっていた靄が晴れるような感覚に襲われた後、今までの記憶と、これまでの記憶が戻ってくる。
獄化・地装衣を使ってからの俺の言動を思いだし、俺に抱きつくようにしてぐったりしているエヴァを見る。
「ごめん……エヴァ、俺は……」
「ううん、今度は私の番だから……」
目を閉じ、安心したような表情のままエヴァが言う。
そんなエヴァを抱きかかえながらも俺は視界の延長線上で倒れているゼノンを見る。モード閻魔はその猛威を振るったようで、完全に勝負はついていた。
それを理解するや否や俺の膝がガクッと崩れ、地面に座り込む。ダメージは殆ど無かったが、閻魔の疲労はでか過ぎる。
「よく頑張ったな。ありがとう……エヴァ」
氷纏・姫装束ももう消えかかったエヴァの頭を撫でながら、一先ずは何事も無かったことを喜ぶ。
とは言えこの力……制御出来ないなら使えない。
もう二度とエヴァを傷つけるわけには行かない。俺が守るなんだと偉そうな事を考えておきながら自分で傷つけてたら世話ねーよな……
ごめんな、エヴァ……
◇
「……ッ!?」
最後の一振りがハザックへ届くと思われたその時、レオが体を無理矢理にひねって斬撃を地面にぶつける。地面に大きく一直線の亀裂が入り、そこから広がるように地面が崩れる。
突然の行動にシエラとリンリは驚くも、すぐにその理由を知る。レオとハザックの間に人が一人居たのだ。深いフードを被っている為顔までは見えないが、そこまで背は高くない。小柄だ。
「誰だ」
謎の人物はレオの問いに答えず、後ろに立つハザックへ顔を向ける。そして何を言うでもなく両手を向けて詠唱を唱える。
「癒術奥義 生者の特権」
その両手から溢れるように流れ出した光はゆっくりとハザックの体を包み込み、その傷跡を消してゆく。数日前、レオを助けた術と同じ術だ。
「まさか……しかし何故……」
ハザックは光を受けながらも、術者に困惑し、言葉を漏らす。
その間にも激戦で受けた傷はほぼ完治し、飛んだ腕さえも生えている。この術の大きな反動である暫くの昏睡をレオは強靭な精神力で耐えきったが、ハザックの場合は膨大な魔力を消費して耐えているらしく、体は元通りなのにかなり疲労した様子だ。
「貴女達も酷い傷ね。癒やしの雨」
シエラとリンリの容態を素早く見定め、術をかける。光が雨の様な小粒になり、二人を降り注ぐ。
「二人とも魔力を消費しすぎてるからゆっくり休んだ方がいいわよ」
二人の傷もすっかり治り、この場の戦闘雰囲気は完全に消滅した。
「あ、ありがとうござりんす……お主は一体……?」
「ライラック・エードラム……私の、妹です」
シエラの問いに答えたのは謎の人物ではなくハザックだった。
腰に抱きつき、ギュッと力を込める。もし雷化で逃げられたらと言う予想が一瞬過ぎったけど、そんな事はなくしっかりと捉えられた。
「捕まえた……」
「なんだ……離せ!」
クロトが振りほどこうとするのを維持でも離さないように掴む。
私が暴走した時も、体に触れるというのは大きな力を持っていた。今回だって例外ではないはず……
「クロト……戻ってきて!」
「離れろ!!」
バチッと嫌な音が聞こえると同時にクロトの全身から黒雷が放たれ、私へ襲いかかる。氷纏・姫装束を使ってなかったら一瞬で皮膚を焼かれていたと思う。
全身が痺れ、焼けるような感覚に耐えながら何とかその場に踏みとどまり、クロトを離すまいと必死に掴む。
「クロト……クロ……ト……」
放電が途切れ、私は力無く膝をつく。それでも絶対に離さないように手だけは腰に回したまま耐える。全身から黒い煙が上がっているけど、自分の身を心配してる暇はない。
「クロト……」
私の問いかけに意味がわからないという目でクロトが返す。その目をじっと見、視線を外さないようになんとか立ち上がる。
「……クロト、大好き」
その言葉に反応するよりも早く、クロトの頭に手を回し、唇と唇をそっとくっつける。クロトの身長に私の身長では背伸びしても届かず、少し引き寄せる事でなんとか届く。
暫くそうしているとバチッと一際大きな音と衝撃が起こり、クロトの獄化・地装衣が解ける。クロトが驚きと悲しさと、あとちょっと嬉しさが混ざった表情を見て、そのまま私の意識が遠のくのを感じる。
「……よか……った……」
◇
頭にかかっていた靄が晴れるような感覚に襲われた後、今までの記憶と、これまでの記憶が戻ってくる。
獄化・地装衣を使ってからの俺の言動を思いだし、俺に抱きつくようにしてぐったりしているエヴァを見る。
「ごめん……エヴァ、俺は……」
「ううん、今度は私の番だから……」
目を閉じ、安心したような表情のままエヴァが言う。
そんなエヴァを抱きかかえながらも俺は視界の延長線上で倒れているゼノンを見る。モード閻魔はその猛威を振るったようで、完全に勝負はついていた。
それを理解するや否や俺の膝がガクッと崩れ、地面に座り込む。ダメージは殆ど無かったが、閻魔の疲労はでか過ぎる。
「よく頑張ったな。ありがとう……エヴァ」
氷纏・姫装束ももう消えかかったエヴァの頭を撫でながら、一先ずは何事も無かったことを喜ぶ。
とは言えこの力……制御出来ないなら使えない。
もう二度とエヴァを傷つけるわけには行かない。俺が守るなんだと偉そうな事を考えておきながら自分で傷つけてたら世話ねーよな……
ごめんな、エヴァ……
◇
「……ッ!?」
最後の一振りがハザックへ届くと思われたその時、レオが体を無理矢理にひねって斬撃を地面にぶつける。地面に大きく一直線の亀裂が入り、そこから広がるように地面が崩れる。
突然の行動にシエラとリンリは驚くも、すぐにその理由を知る。レオとハザックの間に人が一人居たのだ。深いフードを被っている為顔までは見えないが、そこまで背は高くない。小柄だ。
「誰だ」
謎の人物はレオの問いに答えず、後ろに立つハザックへ顔を向ける。そして何を言うでもなく両手を向けて詠唱を唱える。
「癒術奥義 生者の特権」
その両手から溢れるように流れ出した光はゆっくりとハザックの体を包み込み、その傷跡を消してゆく。数日前、レオを助けた術と同じ術だ。
「まさか……しかし何故……」
ハザックは光を受けながらも、術者に困惑し、言葉を漏らす。
その間にも激戦で受けた傷はほぼ完治し、飛んだ腕さえも生えている。この術の大きな反動である暫くの昏睡をレオは強靭な精神力で耐えきったが、ハザックの場合は膨大な魔力を消費して耐えているらしく、体は元通りなのにかなり疲労した様子だ。
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