最弱属性魔剣士の雷鳴轟く
209話 折れた意思
「フッ……ハァ!!」
残った片手で器用にも三つの魔法陣を操り、レオの猛攻に耐えていた。
「至天破邪剣征流 突破の型 『突き立てる牙』!!」
一瞬の隙も逃さずにレオは攻撃を打ち込む。ハザックは大ダメージを負い、腕を片方なくしているがそれでもレオと相対する力は残っている。
そんな戦いを見ているシエラは違和感を感じていた。ハザックの動きが鈍っているのは当然といえば当然の話だが、レオの動きも悪く見えるのだ。今まで何度も戦いを共に経験しているが、今のレオの動きは明らかに悪い。身体的な不調というよりは何かに遠慮しているように見える。
「流石に……あの時よりは強く感じますね」
「そりゃあお前も手負いだし、おれも全快してるからな」
喋っている間も攻防は止まらない。
基本的にはレオの攻撃をハザックが受けているという図だが、だからと言ってレオが優勢とは限らない。レオの至天破邪剣征流は確実に疲労を伴うし、ハザックの魔力はまだまだ残っている。
「突破の型 『飛翔する鉤爪』!」
連続の斬撃で間合いを取る。
やはりシエラの目には不審に映る。レオならばもっと強力な技を次々に打ち込むはずだ。 技の威力も抑えられ、度々飛んでくるハザックの攻撃を受けるのではなく躱している。
身体的な疲労を避ける為? いや、レオがそこまで考えているとは思えない。
「レオ! どうしたでありんすっ!」
シエラは思わず声をかける。レオはそれに目線を動かすだけの反応をし、何か文言を発することは無い。が、何か決意したように銀月を鞘に仕舞うと、腰を低く下げてハザックを見据える。
「どんな攻撃が来ようとも、防御だけに専念しているこの私を破れますかね」
「さぁ……どうだろうなっ……!!」
消える様な速さでレオはハザックの目の前まで移動し、それにも反応してきているハザックを睨めつけたたま足を伸ばし、上へ飛ぶ。
ハザックの頭上を取った。
「確かに速いですが……追いつけないことはない!」
それにも対応し結界を自分とレオの間に挟む。だがレオはそれすらも問題ないと言わんばかりにニヤリと笑い、銀月をゆっくりと抜刀する。
「薙払の型 『麒麟駆け』!!」
抜刀と同時に斬撃の嵐が起き、ハザックの結界を何度も何度も斬撃が叩く。
僅か数秒の間に数十の斬撃を叩き込むが、結界を破るには至らず、レオはハザックの結界を逆に足場として使い、ジャンプしてハザックから距離を取る。
「中々の攻撃、もう少し長く続けば結界が保ちませんでしたね」
言葉通り、ハザックが展開していた三つの魔法陣にヒビが入り、ガラスのように砕けた。
「いや……こっちが保たなかった」
レオが鞘に仕舞わず、両手で持っていた二代銀月に亀裂が走った。
レオが何かを遠慮するように戦っていたのも、威力を落とした技を使い続けていたのもこれが理由だ。
ハルバーとの戦いで既に銀月が限界である事をレオは知っていた。戦いを終えたレオが霞む意識の中呟いた「ここまで、か」という一言。これは自分では無くこの大陸に来てからずっとレオの愛刀としてその猛威を奮い続けてくれた銀月へ向けたものだったのだ。
「出来れば折らずに供養してやりたかったんだがな……」
「刀の心配をしていられますか? もう私には対抗できないわけですよ?」
「ああ、万事休すだ」
「そこの白髪の少女から剣を受け取って戦う、という選択肢もありますが、貴方は取らないでしょうね」
「ああ、刀でなければ至天破邪剣征流は使えん」
「では、ここまでですね。アルバレス支部を壊滅させた償いをしていただきましょう」
「…………」
何も答えずに銀月を鞘へ戻すレオを見ながらシエラは焦っていた。この状況を打開できる唯一の望みが今消えた。シエラもリンリも既に限界。レオは対抗する武器を失った。
「せめて痛み無く……浄化の殲滅光」
◇
地面を凍らせる事で滑るように移動しながら戦うエヴァ。だがそれもジリジリと追い詰められつつあった。
ゼノンの毒が先程までと違い、威力をましていることがその原因だ。盾で攻撃を受けながら剣で攻撃しているが、どちらも毒に触れれば使い物にならない。
その度にもう一度生成しているが、ジリ貧と言わざる得ない。
「あっ……守れ!!」
うまくゼノンの背後に回り込んだが、背後には毒で出来た尻尾があり、何より全身が毒な為、どこからでも攻撃が仕掛けられる。
尻尾と細い管による毒攻撃をいくつかの盾を犠牲にして身を守るが、犠牲になるだけでそれを活かせない。近づくことさえ難しく、近づけたとしても刃が本体まで届かない。
「ゼハァ! ハァッ!」
ゼノンは楽しむように次々と攻撃を仕掛けてくるが、エヴァに楽しむ余裕はない。全身から毒が飛んでくるだけでなく巨大な腕にも注意しなければならない。そんなある意味無謀とも取れる攻防は苦戦を強いられ、徐々にエヴァの被弾が増えていく。
僅かに肩を掠っただけでも痛みが走る。
おまけに毒は常に気化しており、この周辺の空気は毒に侵されている。
「やばいかも……クロト……」
毒を吸い込みすぎたせいで膝をついたエヴァに、毒大蛇の腕が迫る。
残った片手で器用にも三つの魔法陣を操り、レオの猛攻に耐えていた。
「至天破邪剣征流 突破の型 『突き立てる牙』!!」
一瞬の隙も逃さずにレオは攻撃を打ち込む。ハザックは大ダメージを負い、腕を片方なくしているがそれでもレオと相対する力は残っている。
そんな戦いを見ているシエラは違和感を感じていた。ハザックの動きが鈍っているのは当然といえば当然の話だが、レオの動きも悪く見えるのだ。今まで何度も戦いを共に経験しているが、今のレオの動きは明らかに悪い。身体的な不調というよりは何かに遠慮しているように見える。
「流石に……あの時よりは強く感じますね」
「そりゃあお前も手負いだし、おれも全快してるからな」
喋っている間も攻防は止まらない。
基本的にはレオの攻撃をハザックが受けているという図だが、だからと言ってレオが優勢とは限らない。レオの至天破邪剣征流は確実に疲労を伴うし、ハザックの魔力はまだまだ残っている。
「突破の型 『飛翔する鉤爪』!」
連続の斬撃で間合いを取る。
やはりシエラの目には不審に映る。レオならばもっと強力な技を次々に打ち込むはずだ。 技の威力も抑えられ、度々飛んでくるハザックの攻撃を受けるのではなく躱している。
身体的な疲労を避ける為? いや、レオがそこまで考えているとは思えない。
「レオ! どうしたでありんすっ!」
シエラは思わず声をかける。レオはそれに目線を動かすだけの反応をし、何か文言を発することは無い。が、何か決意したように銀月を鞘に仕舞うと、腰を低く下げてハザックを見据える。
「どんな攻撃が来ようとも、防御だけに専念しているこの私を破れますかね」
「さぁ……どうだろうなっ……!!」
消える様な速さでレオはハザックの目の前まで移動し、それにも反応してきているハザックを睨めつけたたま足を伸ばし、上へ飛ぶ。
ハザックの頭上を取った。
「確かに速いですが……追いつけないことはない!」
それにも対応し結界を自分とレオの間に挟む。だがレオはそれすらも問題ないと言わんばかりにニヤリと笑い、銀月をゆっくりと抜刀する。
「薙払の型 『麒麟駆け』!!」
抜刀と同時に斬撃の嵐が起き、ハザックの結界を何度も何度も斬撃が叩く。
僅か数秒の間に数十の斬撃を叩き込むが、結界を破るには至らず、レオはハザックの結界を逆に足場として使い、ジャンプしてハザックから距離を取る。
「中々の攻撃、もう少し長く続けば結界が保ちませんでしたね」
言葉通り、ハザックが展開していた三つの魔法陣にヒビが入り、ガラスのように砕けた。
「いや……こっちが保たなかった」
レオが鞘に仕舞わず、両手で持っていた二代銀月に亀裂が走った。
レオが何かを遠慮するように戦っていたのも、威力を落とした技を使い続けていたのもこれが理由だ。
ハルバーとの戦いで既に銀月が限界である事をレオは知っていた。戦いを終えたレオが霞む意識の中呟いた「ここまで、か」という一言。これは自分では無くこの大陸に来てからずっとレオの愛刀としてその猛威を奮い続けてくれた銀月へ向けたものだったのだ。
「出来れば折らずに供養してやりたかったんだがな……」
「刀の心配をしていられますか? もう私には対抗できないわけですよ?」
「ああ、万事休すだ」
「そこの白髪の少女から剣を受け取って戦う、という選択肢もありますが、貴方は取らないでしょうね」
「ああ、刀でなければ至天破邪剣征流は使えん」
「では、ここまでですね。アルバレス支部を壊滅させた償いをしていただきましょう」
「…………」
何も答えずに銀月を鞘へ戻すレオを見ながらシエラは焦っていた。この状況を打開できる唯一の望みが今消えた。シエラもリンリも既に限界。レオは対抗する武器を失った。
「せめて痛み無く……浄化の殲滅光」
◇
地面を凍らせる事で滑るように移動しながら戦うエヴァ。だがそれもジリジリと追い詰められつつあった。
ゼノンの毒が先程までと違い、威力をましていることがその原因だ。盾で攻撃を受けながら剣で攻撃しているが、どちらも毒に触れれば使い物にならない。
その度にもう一度生成しているが、ジリ貧と言わざる得ない。
「あっ……守れ!!」
うまくゼノンの背後に回り込んだが、背後には毒で出来た尻尾があり、何より全身が毒な為、どこからでも攻撃が仕掛けられる。
尻尾と細い管による毒攻撃をいくつかの盾を犠牲にして身を守るが、犠牲になるだけでそれを活かせない。近づくことさえ難しく、近づけたとしても刃が本体まで届かない。
「ゼハァ! ハァッ!」
ゼノンは楽しむように次々と攻撃を仕掛けてくるが、エヴァに楽しむ余裕はない。全身から毒が飛んでくるだけでなく巨大な腕にも注意しなければならない。そんなある意味無謀とも取れる攻防は苦戦を強いられ、徐々にエヴァの被弾が増えていく。
僅かに肩を掠っただけでも痛みが走る。
おまけに毒は常に気化しており、この周辺の空気は毒に侵されている。
「やばいかも……クロト……」
毒を吸い込みすぎたせいで膝をついたエヴァに、毒大蛇の腕が迫る。
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