最弱属性魔剣士の雷鳴轟く
201話 聖なる一撃
「いえ、その仲間です」
「そうか……」
この男からはハザックのような経験で培った圧や恐怖は感じない。だが、危険な感じがする。触れちゃいけないような……そんな感じが。
「なら尚更だ。血祭りに上げてこいつらの死体でおびき寄せる」
レオがそんなのに乗るとは思えないが。いや、それよりも今は自分の心配だな。エヴァ一人逃がす時間を……いや、エヴァはそんな事望まないし、それで俺が死んだらエヴァにまた傷を背負わせる事になる。
両者生存の道は……
「お前アレだろ」
ゼノンは突然声色を変えて話しかけて来た。
「戦いとかでも考えるタイプだろ。オレは直感で突き進むタイプだからよ。勘でわかんだよ」
ゼノンの意図が読めず、若干困惑する。だが、言っている事は当たっている。
「ハザックが仕留めきれてねぇ所を見るに実力もそこそこありそうだ」
「……何が言いたい?」
「支部長の席が一つ空いてる。例の二人組を売ればお前ら仲間にしてやるよ。どうだ? いい話だろ」
あまりにも突拍子のない提案に、思わず動揺する。いつ本気の殺し合いが始まるかと考えていたが故に想定外だった。まさか仲間に引き入れてこようとしてくるとは……
「お前らの仲間を売れば、オレらの仲間にしてやる。命と仲間、どっちを取る?」
「フッ……当然仲間! 仲間を売って生き延びるぐらいなら、死んだほうがマシだ」
「いいなァ、素直に従ってたら殺すところだった」
「どちらにせよ殺すつもりってことじゃねーかっ!」
「まぁなっ!」
ゼノンと俺の拳がぶつかる。とは言ってもゼノンは謎の紫の液体。俺は雷を纏っているため直接ぶつかるわけじゃない。
ゼノンの二つ名は〈毒蛇〉。使う技も毒ってことか。
「触れるだけでも体溶けるぜ」
「そりゃ、ご親切にどうもっ!」
お互いの力は均衡し、弾ける。再びお互いに緊張が走り、一触即発のまま時間が流れる。着々と集まっているウェヌス盗賊団も命令なのか本能的に加わるべきでは無いと察しているのか、見守るだけで介入はしてこない。
「オラよっと!!」
ゼノンが右手から滲み出るようにして生成させた毒を地面に叩きつけ、俺は咄嗟にエヴァを抱えて上に回避する。
ゼノンとハザック。ハザックは俺とエヴァが全力の全力を出して倒せるかどうか。そして話によればゼノンはそれ以上の強さを持っている。
その上これだけの数に包囲されている。突破口はないか……どこかに……
「クロトあれ」
地面に着地し、抱きかかえられたままのエヴァが小声で呟きゼノンとハザックの間を小さく指差す。ハンターの時と言い、今回と言い……本当にタイミングが良い。
「聖なる一撃!」
矢に纏われた光が鹿を象り、ハザックとゼノンを目掛けて迫る。だが流石に対応され、ゼノンは腕から毒を噴射、ハザックは無詠唱で結界を発動させてガードする。が、鹿は触れると同時に激しく光り、一瞬全員の視界を奪う。
その隙にシエラとリンリが二人の間を走り抜けてこちら側まで来る。
「仲間が増えましたね」
「コイツらもお前の仲間?」
「ああ、そうだ」
「じゃあ、まとめて消えてもらうことになるな」
二人の参戦によって状況は良くなった、と言いたいところだが如何せん相手の戦力が高すぎる。四人まとめて捻り潰されてもおかしくない。
「クロト、この状況はどういう事でありんすか?」
「レオとリュウがウェヌス盗賊団に手を出した。その報復に来たそうだ」
「はぁ……やっぱりやったんでありんすね」
「……この二人、すごく強いですよね」
「うん、めちゃくちゃ強い」
四人で肩を並べ、二人に向く。絶望的なのに変わりはないが、それでも希望は見える。
俺とエヴァじゃどうしようも出来なくても、四人ならなんとかなる。四人で無理でも六人なら。仲間は居るだけで力を与えてくれる。
「ウェヌス盗賊団、全面戦争だな」
「仲間が増えたら強気になったなァ、だがその気持ちもわかるぜェ。仲間は偉大だ。お前名前は?」
「クロト・アルフガルノ」
「クロトか。消しちまった後も名前はちゃんと覚えとくぜ、久々に気持ちのいい奴に会った」
「消されるのはお前たちの方かもしれないがな」
「そちらの青髪の女性は私にやらせてもらいます。俄然興味が湧いてきましてね」
「望むところでありんす」
「私もシエラと一緒に……!」
「こっちは俺達に任せろ」
「二人とも気をつけてね」
こうして〈毒蛇〉ゼノンVSクロト、エヴァ。
〈煌龍〉ハザックVSシエラ、リンリ。
大陸最強候補の二人とクロト達との戦争が開始される。それは長くは続かない戦いの始まり。そして、この後の運命を大きく変える一戦になる。
「そうか……」
この男からはハザックのような経験で培った圧や恐怖は感じない。だが、危険な感じがする。触れちゃいけないような……そんな感じが。
「なら尚更だ。血祭りに上げてこいつらの死体でおびき寄せる」
レオがそんなのに乗るとは思えないが。いや、それよりも今は自分の心配だな。エヴァ一人逃がす時間を……いや、エヴァはそんな事望まないし、それで俺が死んだらエヴァにまた傷を背負わせる事になる。
両者生存の道は……
「お前アレだろ」
ゼノンは突然声色を変えて話しかけて来た。
「戦いとかでも考えるタイプだろ。オレは直感で突き進むタイプだからよ。勘でわかんだよ」
ゼノンの意図が読めず、若干困惑する。だが、言っている事は当たっている。
「ハザックが仕留めきれてねぇ所を見るに実力もそこそこありそうだ」
「……何が言いたい?」
「支部長の席が一つ空いてる。例の二人組を売ればお前ら仲間にしてやるよ。どうだ? いい話だろ」
あまりにも突拍子のない提案に、思わず動揺する。いつ本気の殺し合いが始まるかと考えていたが故に想定外だった。まさか仲間に引き入れてこようとしてくるとは……
「お前らの仲間を売れば、オレらの仲間にしてやる。命と仲間、どっちを取る?」
「フッ……当然仲間! 仲間を売って生き延びるぐらいなら、死んだほうがマシだ」
「いいなァ、素直に従ってたら殺すところだった」
「どちらにせよ殺すつもりってことじゃねーかっ!」
「まぁなっ!」
ゼノンと俺の拳がぶつかる。とは言ってもゼノンは謎の紫の液体。俺は雷を纏っているため直接ぶつかるわけじゃない。
ゼノンの二つ名は〈毒蛇〉。使う技も毒ってことか。
「触れるだけでも体溶けるぜ」
「そりゃ、ご親切にどうもっ!」
お互いの力は均衡し、弾ける。再びお互いに緊張が走り、一触即発のまま時間が流れる。着々と集まっているウェヌス盗賊団も命令なのか本能的に加わるべきでは無いと察しているのか、見守るだけで介入はしてこない。
「オラよっと!!」
ゼノンが右手から滲み出るようにして生成させた毒を地面に叩きつけ、俺は咄嗟にエヴァを抱えて上に回避する。
ゼノンとハザック。ハザックは俺とエヴァが全力の全力を出して倒せるかどうか。そして話によればゼノンはそれ以上の強さを持っている。
その上これだけの数に包囲されている。突破口はないか……どこかに……
「クロトあれ」
地面に着地し、抱きかかえられたままのエヴァが小声で呟きゼノンとハザックの間を小さく指差す。ハンターの時と言い、今回と言い……本当にタイミングが良い。
「聖なる一撃!」
矢に纏われた光が鹿を象り、ハザックとゼノンを目掛けて迫る。だが流石に対応され、ゼノンは腕から毒を噴射、ハザックは無詠唱で結界を発動させてガードする。が、鹿は触れると同時に激しく光り、一瞬全員の視界を奪う。
その隙にシエラとリンリが二人の間を走り抜けてこちら側まで来る。
「仲間が増えましたね」
「コイツらもお前の仲間?」
「ああ、そうだ」
「じゃあ、まとめて消えてもらうことになるな」
二人の参戦によって状況は良くなった、と言いたいところだが如何せん相手の戦力が高すぎる。四人まとめて捻り潰されてもおかしくない。
「クロト、この状況はどういう事でありんすか?」
「レオとリュウがウェヌス盗賊団に手を出した。その報復に来たそうだ」
「はぁ……やっぱりやったんでありんすね」
「……この二人、すごく強いですよね」
「うん、めちゃくちゃ強い」
四人で肩を並べ、二人に向く。絶望的なのに変わりはないが、それでも希望は見える。
俺とエヴァじゃどうしようも出来なくても、四人ならなんとかなる。四人で無理でも六人なら。仲間は居るだけで力を与えてくれる。
「ウェヌス盗賊団、全面戦争だな」
「仲間が増えたら強気になったなァ、だがその気持ちもわかるぜェ。仲間は偉大だ。お前名前は?」
「クロト・アルフガルノ」
「クロトか。消しちまった後も名前はちゃんと覚えとくぜ、久々に気持ちのいい奴に会った」
「消されるのはお前たちの方かもしれないがな」
「そちらの青髪の女性は私にやらせてもらいます。俄然興味が湧いてきましてね」
「望むところでありんす」
「私もシエラと一緒に……!」
「こっちは俺達に任せろ」
「二人とも気をつけてね」
こうして〈毒蛇〉ゼノンVSクロト、エヴァ。
〈煌龍〉ハザックVSシエラ、リンリ。
大陸最強候補の二人とクロト達との戦争が開始される。それは長くは続かない戦いの始まり。そして、この後の運命を大きく変える一戦になる。
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