最弱属性魔剣士の雷鳴轟く

相鶴ソウ

173話 獅子竜vs猿狩りし者

「貴方達は下がっていて下さい。ここは私達が」

至天破邪剣征流してんはじゃけんせいりゅう 相殺の型!」

「鉄術 足殺封印そくさつふういん!」


 鉄の塊がレオの足首を拘束し、動きを止める。


「レオ!」

「あんたの相手はアタイ達っすよ!」


 ラスカの俊敏な動きでリュウとの距離を詰め、瞬時に数発の打撃を加える。鎧に守られているため、痛みは殆ど無いが、それでも衝撃は伝わる。
 鎧越しでも衝撃は大きく、それを避ける為、リュウは一気にジャンプし飛び上がる。強化された筋力でのジャンプは高さ五メートルを軽く超える。


「その程度!」


 ラスカはエルデナの肩を飛び台に余裕で追いついてくるが、リュウはそこまで読んで次の行動に移っている。
槍の柄の部分でラスカの胴を薙ぎ払い、退ける。


「てりゃ!」

「うぐっ……」

「からの……うりゃぁぁぁぁ!!」


 そのまま落下に合わせて槍を振り上げ、パンツェ目掛けて振り下ろす。パンツェの眉間に槍が突き刺さるというところでクレフィの光の結界に阻まれる。


「これは中々」

「クソッ……」

「よそ見してんじゃねぇぞ! ……『幻像実斬』!」


 足を拘束されていたレオは煙の様に消え、パンツェの目の前に本物のレオが現れる。銀月を振り上げ斬り付ける。が、それも寸前の所でエルデナが間に入り、それを防ぐ。


「チィ……」

「甘い!」


 レオは大剣に弾かれ、リュウは結界に弾かれ、後ろに下がる。


「おらァ!」


 更にエルデナが距離を詰め、レオに斬り掛かる。地上に落ちたラスカも復帰し、リュウに打撃とクレフィの聖術が襲いかかる。


「よく聞け、侵入者」


 レオに斬り掛かっているエルデナが他には聞こえないように小声でレオに話しかける。


「あァ?」

「このアジトの地下に一人の娘が捕まってる。昨日捕まったばかり、今なら助けられる」

「お前がそれを俺に教える意味がわからない。信用も出来ないが……?」

「支部長もそこにいる。お前がこのアジトを落としたいと考えてるならどちらにしろ地下へ行かなければならない」

「……至天破邪剣征流してんはじゃけんせいりゅう 薙払の型 『狂乱の太刀』!!」


 エルデナを弾き、連撃を繰り出す。
 エルデナはガードする様に大剣を構え、それを受ける。ジリジリと後退しながらもそれを受け切る。


至天破邪剣征流してんはじゃけんせいりゅう 突破の型」


 エルデナがレオに本気の攻撃を仕掛けてこないことを感じ取り、すぐに狙いを変える。
 リュウに高速で打撃を与え続けている少女と隙を伺って魔術を撃ち込む女。両方を視野に入れたまま技を繰り出す。


「『飛翔する鉤爪』!『突き立てる牙』!」


 飛ぶ斬撃はクレフィの足元を直撃し、砂煙を巻き起こす。外れたもののこれで視界を塞げれば結果オーライである。続けざまに放った突きは寸前の所でラスカに回避される。


「リュウ、こいつらは俺がやる。お前は地下に行け!」

「な、なんで!? それに、一人で四人なんて……こいつら強いぞ」

「いいから行け! そこに恐らく支部長とか言う奴がいる。強い奴をお前に渡すのは癪だが気になる事もできた。それに、この程度の奴ら四人まとめてやれないようじゃおれもまたその程度って事だ」

「……わ、わかったけど」

「行け!」


 レオの一声に後押しされ、リュウがアジトに向かって一直線に駆ける。だが、行く手には〈猿狩り〉も団員も多くいる。


「団員は自分でどうにかしろよ……『至天失斬烈風斬り』!!」


 ウェヌス盗賊団がリュウに注目している間に溜めを終わらせたレオがエルデナに強力な斬撃を浴びせる。
 とはいえエルデナも動きに対応し、それを受ける。だが、大剣がそれに耐えられずにポッキリと折れてしまう。


「お前は悪い奴に見えない。邪魔だから引っ込んでろ」


 レオはエルデナの肩を踏み台にしてパンツェに斬り掛かる。


至天破邪剣征流してんはじゃけんせいりゅう 相殺の型」

「隊長には手を出させないっすよ〜!」

「聖術 聖なる一撃セイクリッド・バーレッジ!」

「『廻し流し』!」


 ラスカの打撃とクレフィの弾幕をあらゆる関節を回転させて避け切り、二人をすり抜けてパンツェへ向かう。
 リュウも丁度パンツェを超える為に槍を回転させて勢いをつけている。


至天破邪剣征流してんはじゃけんせいりゅう 突破の型 『大空を舞う龍の轟爪ごうそう』!!」


 銀月を持った右腕を左腕で支え、最大馬力で撃ち放つ大砲の如き斬撃。技の威力を底上げする為にレオが習得した『飛翔する鉤爪』の上位互換に当たる技、『大空を舞う龍の轟爪ごうそう』。
 大和帝国を旅立つ前には習得できなかったレオも、いくつもの戦闘を経験し、この間の修行で遂にこの技を習得した。
 銀月から放たれた斬撃が、龍の上半身を型どりながら天を舞い、龍の腕が丁度地面に当たり着弾。
 大きな砂煙を起こし、パンツェの視界を塞ぐ。


「なんと……」

「うりゃぁ!」


 リュウはそのまま砂煙に突進し、槍の石突を横一文字に振り、パンツェの横腹を殴り飛ばして道を作る。
 〈猿狩り〉は抜けたが、団員達はまだ行く手を阻んでいる。


「どけぇ! 火竜砲カノン・オブ・サラマンダー!!」


 右手から噴出された業火が団員達を吹き飛ばし、リュウはわき目もふらずに直進する。


「ぐあ……やってくれましたね……」

「まさかアタイら四人全員を同時に足止めするとは……驚きっすね」

「でもこれは、貴方が完全に不利になるんじゃないかしら?」


 クレフィの言う通り、周りは〈猿狩り〉の四人に加えて全体の約三分の二を失った団員達。三分の一しか居ないとはいえ、その数は一人で相手するような数ではない。


「いいや、そうでもない。この状況なら、お前らを一掃できる」

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