最弱属性魔剣士の雷鳴轟く
165話 魔術の天才
「このウルフ、昨日の奴っすね〜」
一面水浸しの中で、〈猿狩り〉のメンバーは倒したゴブリン達の処理を行っていた。
騎乗小鬼が乗っていたウルフを処理していたラスカが気づいたように声をあげた。
「昨日のウルフがゴブリンの群れに助けを求めて協力したって事? 魔物にそんな知性あるの?」
「以前も言った通り営みを持つ魔物は人間と同じような生活をします。自分達を守る為に近くの群れと協力する事も十分ありえるでしょう」
黙々と処理をしながらもパンツェが解説を入れる。サエも「ふーん」と言いながら手を動かし、処理を続ける。
一見すればサエはどこかの貴族でもおかしくない風格を持っており、死体の処理など縁がなくてもおかしくはない。そんなサエが泥や血に塗れて死体処理をしているのはどこか異質でもあり、〈猿狩り〉のメンバーも若干の違和感は抱いていた。
「ギャギャー!」
「「「ギャァーー!!」」」
その時、森の方向からゴブリンと思わしき鳴き声が聞こえてくる。
とほぼ同時にあたり一面が炎上。火の海に包まれた。
「な、なんすか!?」
「落ち着いてください」
「怪我はない?」
「生き残りがいやがったのか」
火はどんどん勢いを強め、足元に無数に散らばる死体にも引火し、〈猿狩り〉は徐々に追い詰められていく。本来ならサエの攻撃で一面水浸しになっていた事もあり引火することはなかったはずだが、その水をも蒸発させる程の火力で燃え盛っているのだ。
「先程のゴブリンの声が聞こえました 魔術師小鬼が居たと考えられます。ここは……サエさん、炎を消せますか?」
「消してもまた攻撃が飛んでくるかもしれないわよ? 私の体力的にも火を消せるのは一回が限度……」
「その一回で決めますので!」
「……わかったわ!」
サエはしゃがみ込み、泥の中に右手を付け、集中する。
サエは触れればそこから連動する水を自在に操る事が出来る。だが、その代償として凄まじいまでの精神力と魔力を使用する為、川を一本操った後は耳鳴りや目眩が襲う。規模は小さくなるとはいえ、連続で二回も発動させればかなり疲労するはず。しかしこの局面での突破口はそれしかない。
「んっ…………はぁっ!!」
地面に染み込んでいた水が沸騰したようにボコボコと地表に浮き上がり、爆発するように上へ噴く。炎の壁は水蒸気となって空気中に消え、周りは今まで炎で赤く照らされていたせいか、急に冷え込んだように雰囲気が変わった。
「ギャギャー!」
「「「ギャァーー!!」」」
「く、来るっすよ!」
森の中で一瞬だけ赤く光り、そこから炎の塊が四つ天へ昇る。
「あそこだな」
「行くっすよ」
「鉄術 飛鉄甲!」
地面から四つの鉄塊が飛び出し、炎と衝突。花火のような爆発を起こし、森を照らす。
「ラスカ!」
「わかってるっすよ〜!」
エルデナが大剣を振るのに合わせてラスカが剣を踏み台にして飛ぶ。ラスカとエルデナの必勝コンボであり、距離を詰めるにはこれが一番早い。
ほぼ地面と平行に飛び、草むらの影に居た魔術師小鬼の首をラリアットで捉える。
バキッという音が鳴り、一体がぐったりと倒れる。
「今のうちに我々も接近しますよ」
「ラスカ! こっちへ飛ばせ!」
エルデナの声を聞き、ラスカはまだ戸惑っているゴブリンの一体を回し蹴りで捉え、エルデナ達の方向へ一匹飛ばす。
「おぉぉらぁぁ!」
宙を舞って飛んできたゴブリンをエルデナが地面に落ちると同時に大剣を叩き落とし、首を切断する。
「ギ、ギャギャ!」
「鉄術 足殺封印」
咄嗟の判断で逃げようとしたゴブリンを鉄の塊が足枷となりそれを止める。
「はぁぁ!!」
「聖術 聖なる一撃」
ラスカの一撃とクレフィの光の弾幕で残った二匹も撃沈。周りから別のゴブリンの反応は無く、残っていたゴブリンもこの四体だけらしい。
「サエちゃん!」
「大丈夫っすか!」
パンツェとエルデナが死体を調べる中、クレフィとラスカがサエに駆け寄る。
「ハァ……だ、大丈夫……」
「隊長!」
「ええ、今日はここまでですね。オルさん達を呼びましょう」
◇
「どうですか? サエさん」
日も暮れ、サエの体調も考慮し、少し離れた森の近くで焚き火を囲んでいた。
「なんとか大丈夫よ まだだいぶ頭がくらくらするけど……寝れば治るわ」
「そうですか、ではゆっくり休んでください。夕食ができたら起こしますので……あと、見張りもしっかりしておきますので」
「ごめんなさい……ありがとう」
それだけ言うと、首をコトっと落として眠りについた。
魔術の中でも属性毎に魔力の消費量は変わる。例えば炎水風土術の四属性は殆ど均一な魔力消費量に対し、雷属性は圧倒的に魔力を多く消費する。その他にも魔術のタイプによっても魔力消費量は変わってくる。タイプは大きく分けると三つあり、自分の周囲から自分と同じ属性の物を放出するタイプ、腕や足、体に直接纏うタイプ、そしてサエが得意とする自然物を操るタイプの三つだ。
この自然物を操るというのは、魔力を体外に放出し、その魔力を属性に変換する他のタイプと違い、魔力を自然物に流し込み操る為、自然物が大きければ大きいほど魔力を多く消費してしまう。
「昨日のウルフ戦、今日のゴブリン戦で合計三回。それだけの魔力がこのちいせぇ体に入ってるとはとても思えないが……末恐ろしい小娘だ」
「サエちゃんは魔術の天才……それも本物だわ」
「だからこそ……いえ、なんでもありません。夕食の準備をしましょう」
「隊長! 今日のご飯何っすか〜?」
「今日はゴブリンの丸焼きです」
「ま、不味そうっすね……」
一面水浸しの中で、〈猿狩り〉のメンバーは倒したゴブリン達の処理を行っていた。
騎乗小鬼が乗っていたウルフを処理していたラスカが気づいたように声をあげた。
「昨日のウルフがゴブリンの群れに助けを求めて協力したって事? 魔物にそんな知性あるの?」
「以前も言った通り営みを持つ魔物は人間と同じような生活をします。自分達を守る為に近くの群れと協力する事も十分ありえるでしょう」
黙々と処理をしながらもパンツェが解説を入れる。サエも「ふーん」と言いながら手を動かし、処理を続ける。
一見すればサエはどこかの貴族でもおかしくない風格を持っており、死体の処理など縁がなくてもおかしくはない。そんなサエが泥や血に塗れて死体処理をしているのはどこか異質でもあり、〈猿狩り〉のメンバーも若干の違和感は抱いていた。
「ギャギャー!」
「「「ギャァーー!!」」」
その時、森の方向からゴブリンと思わしき鳴き声が聞こえてくる。
とほぼ同時にあたり一面が炎上。火の海に包まれた。
「な、なんすか!?」
「落ち着いてください」
「怪我はない?」
「生き残りがいやがったのか」
火はどんどん勢いを強め、足元に無数に散らばる死体にも引火し、〈猿狩り〉は徐々に追い詰められていく。本来ならサエの攻撃で一面水浸しになっていた事もあり引火することはなかったはずだが、その水をも蒸発させる程の火力で燃え盛っているのだ。
「先程のゴブリンの声が聞こえました 魔術師小鬼が居たと考えられます。ここは……サエさん、炎を消せますか?」
「消してもまた攻撃が飛んでくるかもしれないわよ? 私の体力的にも火を消せるのは一回が限度……」
「その一回で決めますので!」
「……わかったわ!」
サエはしゃがみ込み、泥の中に右手を付け、集中する。
サエは触れればそこから連動する水を自在に操る事が出来る。だが、その代償として凄まじいまでの精神力と魔力を使用する為、川を一本操った後は耳鳴りや目眩が襲う。規模は小さくなるとはいえ、連続で二回も発動させればかなり疲労するはず。しかしこの局面での突破口はそれしかない。
「んっ…………はぁっ!!」
地面に染み込んでいた水が沸騰したようにボコボコと地表に浮き上がり、爆発するように上へ噴く。炎の壁は水蒸気となって空気中に消え、周りは今まで炎で赤く照らされていたせいか、急に冷え込んだように雰囲気が変わった。
「ギャギャー!」
「「「ギャァーー!!」」」
「く、来るっすよ!」
森の中で一瞬だけ赤く光り、そこから炎の塊が四つ天へ昇る。
「あそこだな」
「行くっすよ」
「鉄術 飛鉄甲!」
地面から四つの鉄塊が飛び出し、炎と衝突。花火のような爆発を起こし、森を照らす。
「ラスカ!」
「わかってるっすよ〜!」
エルデナが大剣を振るのに合わせてラスカが剣を踏み台にして飛ぶ。ラスカとエルデナの必勝コンボであり、距離を詰めるにはこれが一番早い。
ほぼ地面と平行に飛び、草むらの影に居た魔術師小鬼の首をラリアットで捉える。
バキッという音が鳴り、一体がぐったりと倒れる。
「今のうちに我々も接近しますよ」
「ラスカ! こっちへ飛ばせ!」
エルデナの声を聞き、ラスカはまだ戸惑っているゴブリンの一体を回し蹴りで捉え、エルデナ達の方向へ一匹飛ばす。
「おぉぉらぁぁ!」
宙を舞って飛んできたゴブリンをエルデナが地面に落ちると同時に大剣を叩き落とし、首を切断する。
「ギ、ギャギャ!」
「鉄術 足殺封印」
咄嗟の判断で逃げようとしたゴブリンを鉄の塊が足枷となりそれを止める。
「はぁぁ!!」
「聖術 聖なる一撃」
ラスカの一撃とクレフィの光の弾幕で残った二匹も撃沈。周りから別のゴブリンの反応は無く、残っていたゴブリンもこの四体だけらしい。
「サエちゃん!」
「大丈夫っすか!」
パンツェとエルデナが死体を調べる中、クレフィとラスカがサエに駆け寄る。
「ハァ……だ、大丈夫……」
「隊長!」
「ええ、今日はここまでですね。オルさん達を呼びましょう」
◇
「どうですか? サエさん」
日も暮れ、サエの体調も考慮し、少し離れた森の近くで焚き火を囲んでいた。
「なんとか大丈夫よ まだだいぶ頭がくらくらするけど……寝れば治るわ」
「そうですか、ではゆっくり休んでください。夕食ができたら起こしますので……あと、見張りもしっかりしておきますので」
「ごめんなさい……ありがとう」
それだけ言うと、首をコトっと落として眠りについた。
魔術の中でも属性毎に魔力の消費量は変わる。例えば炎水風土術の四属性は殆ど均一な魔力消費量に対し、雷属性は圧倒的に魔力を多く消費する。その他にも魔術のタイプによっても魔力消費量は変わってくる。タイプは大きく分けると三つあり、自分の周囲から自分と同じ属性の物を放出するタイプ、腕や足、体に直接纏うタイプ、そしてサエが得意とする自然物を操るタイプの三つだ。
この自然物を操るというのは、魔力を体外に放出し、その魔力を属性に変換する他のタイプと違い、魔力を自然物に流し込み操る為、自然物が大きければ大きいほど魔力を多く消費してしまう。
「昨日のウルフ戦、今日のゴブリン戦で合計三回。それだけの魔力がこのちいせぇ体に入ってるとはとても思えないが……末恐ろしい小娘だ」
「サエちゃんは魔術の天才……それも本物だわ」
「だからこそ……いえ、なんでもありません。夕食の準備をしましょう」
「隊長! 今日のご飯何っすか〜?」
「今日はゴブリンの丸焼きです」
「ま、不味そうっすね……」
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