最弱属性魔剣士の雷鳴轟く
164話 猿VS小鬼
「いやー、昼間のウルフはびっくりしましたね」
「今まで何もなかったっすからね〜」
結局、ウルフ戦の後処理に追われその日はそれ以上進む事なく夜を迎えた。
一刻も早く進みたいところではあるが、取れる時に休息を取っておかねばいざという時に響くというパンツェの判断で馬を止め、焚き火を囲っている。
「この辺りはオークやゴブリン、ウルフの様に群れを形成している魔物が多いですから、注意しないといけませんね」
「これから先も戦いは複数戦闘が多くなるって事だな」
「大丈夫でしょうか?」
依頼人のアルさんが心配そうに尋ねる。
確かにこの旅は一瞬も気は抜けない。寝ている間ですら奇襲が考えられるからだ。特に群れを形成している魔物やウェヌス盗賊団ともなればそれだけで全滅しかねない。
「大丈夫、と断言は出来ませんが、私達もある程度は名のある冒険者です。たとえ我々の誰がいつどこで欠けようとも皆さんを安全にカサドルまでお送りしますよ」
「あ、ありがとうございます」
「でも、皆さんも気をつけてくださいね。私達の為に誰かが……その、欠けるなんて……」
アルさんに続き依頼人のミアさんが呟く。
「大丈夫っすよ〜 アタイらは強いっすから!」
「……はい、そうですよね」
全員が恐怖を感じながらもその日は考え過ぎても逆に悪いという事で眠る事にした。
「じゃあ見張りはやっておくわ」
「クレフィさん、よろしくお願いします」
「私もやるわ」
サエは木にもたれかかっていた体を起こし、疲れた体に鞭を打つ。
「いえ、サエさんは休んでください」
「そうよ、サエちゃん。貴女はうちの切り札なんだから。昼間の戦闘でもかなり疲れてるみたいだし、ここは休んで明日またお願いね」
「……わかったわ」
◇
翌日。マスターボウと会話した次の日。
「こんな急に行くとはな。だが、止はしないぞ」
俺達は出発を済ませ、ブルーバードの前でお別れを言っていた。
ナイアリスや〈シルク・ド・リベルター〉も同じくして移動するらしく、一気に人が減るのでヴァランも若干寂しがっているように見える。
因みにナイアリスはアイゼンウルブスへ帰るらしく、〈シルク・ド・リベルター〉は俺達とは別ルートでケルターメンへ向かう。
「いつも悪いな、ヴァラン。急に来たり出ていったりで」
「いや、気にするなよ。しかも今回はうちの事を考えてくれたんだろ。いつでも帰ってこいよ」
「ああ、その時は頼む」
「じゃあ私達は行くわねーん! クロトちゃーん! 昨日の話、忘れないでよん〜!」
「ああ、わかってるよ!」
「マタ生キテ会エルトイイナ」
「また会おう!」
「雨刃とリンも色々とありがとう!またな!」
「またな、クロト」
「あの修行忘れるなボーン」
〈シルク・ド・リベルター〉の面々は自身達の舞台であるテントを丸々運べるほどの巨大な馬車に乗り込み、出発した。
テントを丸ごとと言っても解体してあって、俺達の馬車の十倍程度の大きさだ。
その馬車を引いているのは二十頭を越える白馬で、流石大陸一のサーカス団と言ったところだ。
「じゃ、私も帰るわね! また会いましょ!」
ナイアリスはあっさりとした挨拶で歩いていってしまった。アイゼンウルブスとは逆の方向へ……
「よし、俺達も行くか。昨日説明した通り、ここからまずはクエイターンというヘレリル公爵領とアルバレス公爵領の境目にある街へ向かう。その街までは六人全員で行動するが、その街からカサドルへ向かう時はウェヌス盗賊団が遭遇した時、機動性を上げれるように二人一組で移動する。取りあえずは夜までにクエイターンへたどり着こう!」
「うん!」
「ああ」
「わかりんした!」
「了解です」
「みんな一緒でよかった……ほっ……」
「よし、行くぞ。ヴァラン、レッグ! 世話になった!」
「ばいばい!」
俺達はブルーバードに大きく手を振りながら、クエイターンを目指して森へ入った。
◇
〈猿狩り〉指名依頼から二日が経過した日の夕方。
その日は昨日のウルフ戦から反省として出たサエの負担が大きい事と近くに水場が無ければ厳しいという二点を考慮した新しい対複数陣形を考えていた。が、やはり物量戦には物量戦でしか対向できないという判断から解決案は出ていない。
そんなこんなで日も半分ほど沈み、今日はもう休もうかと言う雰囲気になった頃……
「魔物だ。ゴブリンだな」
「ゴブリン程度なら問題ないでしょう?」
「いえいえサエさん、ゴブリンだからと高を括ってはいけません。ゴブリンの執念やずる賢さ、連帯の強さを侮った駆け出し冒険者が全滅するというのはよくある話です」
「あ、侮ってるわけじゃないわよ……で、どうするの?」
「お〜、あれは支配者小鬼が率いてる群れっすね〜魔術師は見た感じ居ないっすけど大物が結構居るっす。おまけに騎乗小鬼までいるっすね」
騎乗小鬼とは、一般的に同じ三級魔物のウルフと協力、またはウルフを飼い慣らすことによってウルフに騎乗したゴブリンの事である。過去に発見されたケースではジャイアントウルフに小鬼王が騎乗しているというものもあり、決して侮れない実力を持っている。
「総数は?」
「二十……いや、三十だな。新しい陣形は思いついてねーんだろ? 今までの陣形でやるぞ」
「了解っす〜」
「アルさん、昨日の様に」
「わかりました!」
「私も行くわ。近くに川が流れてたはずだから!」
サエが飛び降り、続けて〈猿狩り〉のメンバーも対複数陣形を取る。
「ギャガシャァァァァ!」
支配者小鬼の雄叫びと共に戦闘が始まる。
「今まで何もなかったっすからね〜」
結局、ウルフ戦の後処理に追われその日はそれ以上進む事なく夜を迎えた。
一刻も早く進みたいところではあるが、取れる時に休息を取っておかねばいざという時に響くというパンツェの判断で馬を止め、焚き火を囲っている。
「この辺りはオークやゴブリン、ウルフの様に群れを形成している魔物が多いですから、注意しないといけませんね」
「これから先も戦いは複数戦闘が多くなるって事だな」
「大丈夫でしょうか?」
依頼人のアルさんが心配そうに尋ねる。
確かにこの旅は一瞬も気は抜けない。寝ている間ですら奇襲が考えられるからだ。特に群れを形成している魔物やウェヌス盗賊団ともなればそれだけで全滅しかねない。
「大丈夫、と断言は出来ませんが、私達もある程度は名のある冒険者です。たとえ我々の誰がいつどこで欠けようとも皆さんを安全にカサドルまでお送りしますよ」
「あ、ありがとうございます」
「でも、皆さんも気をつけてくださいね。私達の為に誰かが……その、欠けるなんて……」
アルさんに続き依頼人のミアさんが呟く。
「大丈夫っすよ〜 アタイらは強いっすから!」
「……はい、そうですよね」
全員が恐怖を感じながらもその日は考え過ぎても逆に悪いという事で眠る事にした。
「じゃあ見張りはやっておくわ」
「クレフィさん、よろしくお願いします」
「私もやるわ」
サエは木にもたれかかっていた体を起こし、疲れた体に鞭を打つ。
「いえ、サエさんは休んでください」
「そうよ、サエちゃん。貴女はうちの切り札なんだから。昼間の戦闘でもかなり疲れてるみたいだし、ここは休んで明日またお願いね」
「……わかったわ」
◇
翌日。マスターボウと会話した次の日。
「こんな急に行くとはな。だが、止はしないぞ」
俺達は出発を済ませ、ブルーバードの前でお別れを言っていた。
ナイアリスや〈シルク・ド・リベルター〉も同じくして移動するらしく、一気に人が減るのでヴァランも若干寂しがっているように見える。
因みにナイアリスはアイゼンウルブスへ帰るらしく、〈シルク・ド・リベルター〉は俺達とは別ルートでケルターメンへ向かう。
「いつも悪いな、ヴァラン。急に来たり出ていったりで」
「いや、気にするなよ。しかも今回はうちの事を考えてくれたんだろ。いつでも帰ってこいよ」
「ああ、その時は頼む」
「じゃあ私達は行くわねーん! クロトちゃーん! 昨日の話、忘れないでよん〜!」
「ああ、わかってるよ!」
「マタ生キテ会エルトイイナ」
「また会おう!」
「雨刃とリンも色々とありがとう!またな!」
「またな、クロト」
「あの修行忘れるなボーン」
〈シルク・ド・リベルター〉の面々は自身達の舞台であるテントを丸々運べるほどの巨大な馬車に乗り込み、出発した。
テントを丸ごとと言っても解体してあって、俺達の馬車の十倍程度の大きさだ。
その馬車を引いているのは二十頭を越える白馬で、流石大陸一のサーカス団と言ったところだ。
「じゃ、私も帰るわね! また会いましょ!」
ナイアリスはあっさりとした挨拶で歩いていってしまった。アイゼンウルブスとは逆の方向へ……
「よし、俺達も行くか。昨日説明した通り、ここからまずはクエイターンというヘレリル公爵領とアルバレス公爵領の境目にある街へ向かう。その街までは六人全員で行動するが、その街からカサドルへ向かう時はウェヌス盗賊団が遭遇した時、機動性を上げれるように二人一組で移動する。取りあえずは夜までにクエイターンへたどり着こう!」
「うん!」
「ああ」
「わかりんした!」
「了解です」
「みんな一緒でよかった……ほっ……」
「よし、行くぞ。ヴァラン、レッグ! 世話になった!」
「ばいばい!」
俺達はブルーバードに大きく手を振りながら、クエイターンを目指して森へ入った。
◇
〈猿狩り〉指名依頼から二日が経過した日の夕方。
その日は昨日のウルフ戦から反省として出たサエの負担が大きい事と近くに水場が無ければ厳しいという二点を考慮した新しい対複数陣形を考えていた。が、やはり物量戦には物量戦でしか対向できないという判断から解決案は出ていない。
そんなこんなで日も半分ほど沈み、今日はもう休もうかと言う雰囲気になった頃……
「魔物だ。ゴブリンだな」
「ゴブリン程度なら問題ないでしょう?」
「いえいえサエさん、ゴブリンだからと高を括ってはいけません。ゴブリンの執念やずる賢さ、連帯の強さを侮った駆け出し冒険者が全滅するというのはよくある話です」
「あ、侮ってるわけじゃないわよ……で、どうするの?」
「お〜、あれは支配者小鬼が率いてる群れっすね〜魔術師は見た感じ居ないっすけど大物が結構居るっす。おまけに騎乗小鬼までいるっすね」
騎乗小鬼とは、一般的に同じ三級魔物のウルフと協力、またはウルフを飼い慣らすことによってウルフに騎乗したゴブリンの事である。過去に発見されたケースではジャイアントウルフに小鬼王が騎乗しているというものもあり、決して侮れない実力を持っている。
「総数は?」
「二十……いや、三十だな。新しい陣形は思いついてねーんだろ? 今までの陣形でやるぞ」
「了解っす〜」
「アルさん、昨日の様に」
「わかりました!」
「私も行くわ。近くに川が流れてたはずだから!」
サエが飛び降り、続けて〈猿狩り〉のメンバーも対複数陣形を取る。
「ギャガシャァァァァ!」
支配者小鬼の雄叫びと共に戦闘が始まる。
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