最弱属性魔剣士の雷鳴轟く
154話 〈猿狩り〉
「皆さん、お待たせしました」
「パンツェ隊長! おかえりなさいっす!」
「あら? そちらの子は?」
「隊長、また人を連れてたんすね!」
「隊長はやめてくださいよ。ラスカさん」
ギルドから少し離れたところの広場に〈猿狩り〉の残り三人のメンバーは座っていた。この広場には切り株で出来た椅子が何個か置かれている。メンバーの口ぶりからしてこうやって臨時でパーティに人を連れてくるのはよくある事なのだろう。
「紹介します。サエさんです」
「あ、よろしくお願いします……」
サエの挨拶は尻すぼみしていき、最後の方はほとんど声になっていなかった。普段は強気な態度を取っているが、こういった経験はあまりなく、緊張には弱いのだ。
「サエちゃんすね! よろしくっす!」
あぐらをかきながらビシッと敬礼ポーズを決めたのはラスカ。女の子。赤髪をポニーテールにしているが、髪質のせいかツンツンと尖っている。パンツェを隊長と呼ぶ〈猿狩り〉の中で一番元気なメンバーだ。
「よろしくお願いします」
切り株の椅子に上品な佇まいで座っているの女性は緑の髪がストレートで綺麗なクレフィ。料理に始まりほぼ全ての事をこなせる上に物腰柔らかな雰囲気でメンバーからかなり好かれている。
何でもできるのが仇となっているのか、クレフィがいないと〈猿狩り〉は何もできないとメンバーですら自覚している。
「ちっこい奴だな。ちゃんと食ってるのか?」
腕を組みながら座っている男性はエルデナ。黒髪を短く刈り込み、大剣を背中に背負っている。体格が良く、〈猿狩り〉の中で一番の腕力を持っている。
「そして私がリーダーのパンツェと申します。改めてよろしくお願いしますね、サエさん」
「よ、よろしく!」
「まだ緊張してるみたいですね」
「リラックスするっす。アタイらは他のパーティよりもゆるいっすから」
「大丈夫よ、サエちゃん」
アットホームな雰囲気にサエも少しずつ緊張を解いていく。
「で、隊長。仕事持ってきたっすか?」
「ええ、いつもどおりの仕事ですが」
「まったく、たまには別の依頼もやらしてくれャ。いいぜ、明日は俺が行ってくらァ」
エルデナが後頭部をガシガシと掻きながら立ち上がり、パンツェが持ってきた依頼書を受け取る。
「私達〈猿狩り〉は現在ゴールド級でして、そこそこの仕事がもらえるんですよ。ですからサエさんもここで活躍して、あの依頼に挑戦するといいですよ」
「ええ、そうさせてもらうわ」
「その依頼ってどんな依頼っすか?」
「ウェヌス盗賊団の討伐よ」
ウェヌス盗賊団。
クロトやグレイド達がクリュを奪還する為に戦った盗賊団がミネルヴァ盗賊団。そして同じくクロト達と東の地にあるキンニー村で戦ったアグリアやラディが率いているユーノ盗賊団。
その二つの盗賊団に並ぶ、大陸を代表する三つの盗賊団の一角、それがウェヌス盗賊団。
ウェヌス盗賊団は何より規模が大きく、アルバレス公爵、エレノア公爵、セバルツァ公爵、シルバス公爵、コムラ公爵の五公爵の領地に支部を持っており小さな盗賊団を吸収してどんどん大きくなっている盗賊団である。
サエの受けようとした依頼はウェヌス盗賊団アルバレス支部の討伐だが、支部がやられれば必ず本部からの応報がある。その為、誰も受けず、ギルド側もオリハルコン級やそのレベルならば……と条件をつけている。
「あー、あの依頼っすか。隊長が目をつけるわけっすね」
「今まで何人も挑戦していますが、必ずウェヌス盗賊団の他支部や本部に消されています」
「なら私が初めての依頼達成者ね。本部ごと潰してやるわ」
「ええ、その時は私達もお手伝いしますよ」
「とりあえず仕事行くっすよ。ウェヌス盗賊団の事は一旦忘れるっす」
◇
その後、サエをメンバーに加えた〈猿狩り〉はよく受けているというオーク討伐の依頼へ向かった。
アルバレス公爵領のうち、クエイターンのある北東部分はウェヌス盗賊団の息がかかっており、アルバレス公爵のバンリも手を焼いているが、本部の力が強大なだけに手が出せずにいる。
おまけに、ウェヌス盗賊団がなにか悪さをするかといえば、特に被害もなく縄張り宣言だけで他に大きな被害を出さない。というのも討伐に踏み切れない理由である。更にはクエイターンの冒険者ギルドをホームとして活動する冒険者にはオリハルコン級がおらず、それも理由としてあげられる。
が、いくら実害がないとはいえ、夜道で襲われたなどの噂は絶えない。
そんなウェヌス盗賊団の息がかかった領地でも常に盗賊団がいるわけではなく、普段の依頼で盗賊団と出会うことはほとんどない。
〈猿狩り〉がやってきた森もそうだ。この森には大型の魔物が多く、オークやトロールも確認されている。
「さーて、狩るっすよ〜!」
「パンツェ隊長! おかえりなさいっす!」
「あら? そちらの子は?」
「隊長、また人を連れてたんすね!」
「隊長はやめてくださいよ。ラスカさん」
ギルドから少し離れたところの広場に〈猿狩り〉の残り三人のメンバーは座っていた。この広場には切り株で出来た椅子が何個か置かれている。メンバーの口ぶりからしてこうやって臨時でパーティに人を連れてくるのはよくある事なのだろう。
「紹介します。サエさんです」
「あ、よろしくお願いします……」
サエの挨拶は尻すぼみしていき、最後の方はほとんど声になっていなかった。普段は強気な態度を取っているが、こういった経験はあまりなく、緊張には弱いのだ。
「サエちゃんすね! よろしくっす!」
あぐらをかきながらビシッと敬礼ポーズを決めたのはラスカ。女の子。赤髪をポニーテールにしているが、髪質のせいかツンツンと尖っている。パンツェを隊長と呼ぶ〈猿狩り〉の中で一番元気なメンバーだ。
「よろしくお願いします」
切り株の椅子に上品な佇まいで座っているの女性は緑の髪がストレートで綺麗なクレフィ。料理に始まりほぼ全ての事をこなせる上に物腰柔らかな雰囲気でメンバーからかなり好かれている。
何でもできるのが仇となっているのか、クレフィがいないと〈猿狩り〉は何もできないとメンバーですら自覚している。
「ちっこい奴だな。ちゃんと食ってるのか?」
腕を組みながら座っている男性はエルデナ。黒髪を短く刈り込み、大剣を背中に背負っている。体格が良く、〈猿狩り〉の中で一番の腕力を持っている。
「そして私がリーダーのパンツェと申します。改めてよろしくお願いしますね、サエさん」
「よ、よろしく!」
「まだ緊張してるみたいですね」
「リラックスするっす。アタイらは他のパーティよりもゆるいっすから」
「大丈夫よ、サエちゃん」
アットホームな雰囲気にサエも少しずつ緊張を解いていく。
「で、隊長。仕事持ってきたっすか?」
「ええ、いつもどおりの仕事ですが」
「まったく、たまには別の依頼もやらしてくれャ。いいぜ、明日は俺が行ってくらァ」
エルデナが後頭部をガシガシと掻きながら立ち上がり、パンツェが持ってきた依頼書を受け取る。
「私達〈猿狩り〉は現在ゴールド級でして、そこそこの仕事がもらえるんですよ。ですからサエさんもここで活躍して、あの依頼に挑戦するといいですよ」
「ええ、そうさせてもらうわ」
「その依頼ってどんな依頼っすか?」
「ウェヌス盗賊団の討伐よ」
ウェヌス盗賊団。
クロトやグレイド達がクリュを奪還する為に戦った盗賊団がミネルヴァ盗賊団。そして同じくクロト達と東の地にあるキンニー村で戦ったアグリアやラディが率いているユーノ盗賊団。
その二つの盗賊団に並ぶ、大陸を代表する三つの盗賊団の一角、それがウェヌス盗賊団。
ウェヌス盗賊団は何より規模が大きく、アルバレス公爵、エレノア公爵、セバルツァ公爵、シルバス公爵、コムラ公爵の五公爵の領地に支部を持っており小さな盗賊団を吸収してどんどん大きくなっている盗賊団である。
サエの受けようとした依頼はウェヌス盗賊団アルバレス支部の討伐だが、支部がやられれば必ず本部からの応報がある。その為、誰も受けず、ギルド側もオリハルコン級やそのレベルならば……と条件をつけている。
「あー、あの依頼っすか。隊長が目をつけるわけっすね」
「今まで何人も挑戦していますが、必ずウェヌス盗賊団の他支部や本部に消されています」
「なら私が初めての依頼達成者ね。本部ごと潰してやるわ」
「ええ、その時は私達もお手伝いしますよ」
「とりあえず仕事行くっすよ。ウェヌス盗賊団の事は一旦忘れるっす」
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その後、サエをメンバーに加えた〈猿狩り〉はよく受けているというオーク討伐の依頼へ向かった。
アルバレス公爵領のうち、クエイターンのある北東部分はウェヌス盗賊団の息がかかっており、アルバレス公爵のバンリも手を焼いているが、本部の力が強大なだけに手が出せずにいる。
おまけに、ウェヌス盗賊団がなにか悪さをするかといえば、特に被害もなく縄張り宣言だけで他に大きな被害を出さない。というのも討伐に踏み切れない理由である。更にはクエイターンの冒険者ギルドをホームとして活動する冒険者にはオリハルコン級がおらず、それも理由としてあげられる。
が、いくら実害がないとはいえ、夜道で襲われたなどの噂は絶えない。
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