最弱属性魔剣士の雷鳴轟く
133話 羅鬼降臨
「おい、お前ら」
森に入って三十分程度が経過した頃、森の中をぐるぐると歩いていたレオとナイアリスに一人の男が声をかけてきた。
ボロボロの服装で上半身は裸。鍛え上げられた肉体からは一目で只者ではないとわかる。
「誰だ? お前」
すかさずレオが銀月に手をかける。
「ああ、この近くの山小屋に住んでる者だ。道に迷ってるように見えたんでな」
「ああ、そうか。なら一つ聞きたい」
「なんだ?」
「この辺りにオーガは出るか?」
「……? いや、オーガが出たという話は聞いたことがない」
「レオ」
「……?」
「とりあえず冒険者ギルドに戻ろう。詳しい話を聞いてからじゃないと判断できないよ」
「……そうだな」
「下山するなら送ろう、この辺りは迷いやすいからな」
「いや、大丈夫だ」
「……わかった。気をつけてな」
「安心するなっ! 後ろから襲われるぞ」
突然、森に第四者の声が響いた。
「チッ、やっぱ殺しとくべきだったか」
男の呟きに対し、レオは一瞬の迷いもなく動いた。
男を敵と認識し、抜刀の構えをとって飛びかかる。だが、男も速く、レオの銀月が握られた右腕を素早く蹴り上げ、レオの胴に回し蹴りを叩き込む。
その衝撃でレオは吹き飛ばざれ、木に激突する。
「レオ!」
「次はお前だ!」
レオの方へ駆け寄ろうとしたナイアリス目掛けて男は拳を振るう。だが、それを寸前で大男が受け止めた。全身に黒光りする鱗があり、リザードマンによく似た男。
先程の警告をした第四者だ。
「まだそんな力が残っていたか」
「お嬢さん、早く連れを」
「……わかった」
ナイアリスはそのままレオに駆け寄り、体を起こす。レオは吐血してはいるが、肋骨は無事だったようですぐに立ち上がった。
「……ふんっ!」
男の拳を受け止めていたリザードマンだが、限界が来たのか受け止めきれず投げ飛ばされてしまう。
木を数本なぎ倒し、リザードマンは痛みに呻く。
「お前、何者だ。上裸筋肉ダルマ」
「俺は魔族のエンデル。その不愉快な言葉はやめてもらおうか」
「魔族……こんな所に?」
「お前らが探してるオーガってのは恐らく俺の事だろうよ。異能解放! 羅鬼降臨」
その言葉の後、エンデルの体に変化が訪れた。
元々ムキムキだった筋肉は更にゴリゴリと盛り上がり、体長は三メートル近くまで伸びた。腕は大きく長くなり、皮膚も赤く染まる。額からは巨大な二本の角が生え、牙が鋭く伸びている。その姿はまさにオーガそのもの。
「オーガ……?」
「あれが行商人を襲ったっていうオーガだな。行商人ならオーガを見た事が無く、アレをオーガと間違えても仕方ない」
「やっぱり俺の事を倒しに来た冒険者だったか。あの時取り逃がした男は追いかけてでも殺すべきだったなぁ……この半竜野郎が邪魔しなければ」
「至天破邪剣征流 突破の型 『飛翔する鉤爪』!」
銀月を抜刀する時の勢いで放たれた斬撃が空を斬り、エンデルを襲う。だが、その鋼鉄の赤皮膚はやわな斬撃程度ではビクともしない。
「さぁ、来いや。お前らもあいつらの様にバラバラにしてやるよ」
「やってみろよクソ鬼が」
エンデルは巨大な腕で木の幹を掴み、根本からへし折る。そしてそのまま槍投げの構えを取り、一直線に投げつける。
「至天破邪剣征流 薙払の型 『剣征之斬・大風車』!」
前転に合わせて斬撃を放ち、飛んでくる木の幹を縦に斬り裂く。だが、エンデルの猛攻はそれだけでは終わらない。まるで投げているのが槍かと錯覚する程、軽そうに木を折っては投げている。
それをレオは真っ二つに斬り落とすか軌道をずらすかして被弾しないようにしている。後ろにナイアリスが居る為、大きく避ける事ができないのだ。
「チッ……だがこの鋼鉄の体は斬れねぇだろう」
エンデルは幹を投げるのを止め、レオに向かい突進していく。
しかしレオは抜刀の構えを取ったまま動かない。まずいと感じたナイアリスがレオの後ろから飛び出し、回転に合わせて三日月刀を踊らせる。
突進するエンデルとすれ違いざまに流れる様に斬ったが、硬すぎる皮膚は斬れず、逆に弾かれてしまった。
なんとかブレーキをかけてとどまるがエンデルは止まってくれない。その鋼鉄の体が盾となり矛となりレオを襲う。
「粉砕!粉砕!粉砕! お前も行商人と同じくこの体でぐちゃぐちゃだァ!」
「『大輪』!」
大きく横に斬り裂いた斬撃がエンデルの胴を捉えた。が、それも簡単に弾かれた。
エンデルは斬撃など最初から無かったかの様に豪腕を振り、レオの頭を砕かんと迫る。だがスピードで勝るレオは既にエンデルの頭上に飛び上がっており、エンデルは空を殴る結果となる。
「『天降』」
上空から地面へ振り下ろした斬撃がエンデルの脊髄を捉える。レオはそのまま少し前のめりになったエンデルの後ろに着地する。
「やりやが……」
「『花火』」
エンデルが振り返ったと同時に下から斬り上げ、顎を捉える。だがどちらの斬撃も大した効果は無い。
上から斬り下ろす天降と下から斬り上げる花火。二つとも“斬る”事よりも“衝撃”を重視した技だが、それでもエンデルの異能『羅鬼降臨』は破れない。この異能は鬼化に加えてかなり骨格が強化も行われている為、衝撃にも強いのだ。
「確かにお前は硬いがそれだけだ。スピードは無いしこっちの技がその強度を上回れれば倒せる」
「それができるのかって言ってんだよォ」
「できるさ、この最後の一撃なら」
剣征之斬、最後の一撃はその前に技を積めば積む程威力が上がる。
現在大風車、大輪、天降、花火と四段階積んだ状態に加え、デッテツに鍛えられた銀月ならば大抵の物は斬れるだろう。
「至天破邪剣征流 薙払の型」
「こいつ、雰囲気が……」
「『剣征之斬・画竜点睛……」
フッと力が抜けたようにレオの体がガクンと前のめりになり姿が消えた。
今までの比にならない速度でエンデルに突っ込んでいく。全身は脱力したまま右腕を振る。だがエンデルも既に手を打っていた。
ストレートに打ち込まれた左拳とレオの銀月がぶつかり合い……
「ぐぁぁぁぁぁぁ……」
銀月がエンデルの左手の甲から入り、手首、前腕、上腕、胸部を通り右肩まで斬り裂いた。
だが、それだけでは終わらない。レオは既に二撃目の体勢に入っていた。すぐさま手の中で刃の向きを反対にしたレオは大きく振り下ろした。銀月は再び右肩から入り、胸部を、そして左脇まで駆け抜けた。二重袈裟斬り。
「……二撃』」
エンデルの体はクロス型に切断され、四つに分かれた。
森に入って三十分程度が経過した頃、森の中をぐるぐると歩いていたレオとナイアリスに一人の男が声をかけてきた。
ボロボロの服装で上半身は裸。鍛え上げられた肉体からは一目で只者ではないとわかる。
「誰だ? お前」
すかさずレオが銀月に手をかける。
「ああ、この近くの山小屋に住んでる者だ。道に迷ってるように見えたんでな」
「ああ、そうか。なら一つ聞きたい」
「なんだ?」
「この辺りにオーガは出るか?」
「……? いや、オーガが出たという話は聞いたことがない」
「レオ」
「……?」
「とりあえず冒険者ギルドに戻ろう。詳しい話を聞いてからじゃないと判断できないよ」
「……そうだな」
「下山するなら送ろう、この辺りは迷いやすいからな」
「いや、大丈夫だ」
「……わかった。気をつけてな」
「安心するなっ! 後ろから襲われるぞ」
突然、森に第四者の声が響いた。
「チッ、やっぱ殺しとくべきだったか」
男の呟きに対し、レオは一瞬の迷いもなく動いた。
男を敵と認識し、抜刀の構えをとって飛びかかる。だが、男も速く、レオの銀月が握られた右腕を素早く蹴り上げ、レオの胴に回し蹴りを叩き込む。
その衝撃でレオは吹き飛ばざれ、木に激突する。
「レオ!」
「次はお前だ!」
レオの方へ駆け寄ろうとしたナイアリス目掛けて男は拳を振るう。だが、それを寸前で大男が受け止めた。全身に黒光りする鱗があり、リザードマンによく似た男。
先程の警告をした第四者だ。
「まだそんな力が残っていたか」
「お嬢さん、早く連れを」
「……わかった」
ナイアリスはそのままレオに駆け寄り、体を起こす。レオは吐血してはいるが、肋骨は無事だったようですぐに立ち上がった。
「……ふんっ!」
男の拳を受け止めていたリザードマンだが、限界が来たのか受け止めきれず投げ飛ばされてしまう。
木を数本なぎ倒し、リザードマンは痛みに呻く。
「お前、何者だ。上裸筋肉ダルマ」
「俺は魔族のエンデル。その不愉快な言葉はやめてもらおうか」
「魔族……こんな所に?」
「お前らが探してるオーガってのは恐らく俺の事だろうよ。異能解放! 羅鬼降臨」
その言葉の後、エンデルの体に変化が訪れた。
元々ムキムキだった筋肉は更にゴリゴリと盛り上がり、体長は三メートル近くまで伸びた。腕は大きく長くなり、皮膚も赤く染まる。額からは巨大な二本の角が生え、牙が鋭く伸びている。その姿はまさにオーガそのもの。
「オーガ……?」
「あれが行商人を襲ったっていうオーガだな。行商人ならオーガを見た事が無く、アレをオーガと間違えても仕方ない」
「やっぱり俺の事を倒しに来た冒険者だったか。あの時取り逃がした男は追いかけてでも殺すべきだったなぁ……この半竜野郎が邪魔しなければ」
「至天破邪剣征流 突破の型 『飛翔する鉤爪』!」
銀月を抜刀する時の勢いで放たれた斬撃が空を斬り、エンデルを襲う。だが、その鋼鉄の赤皮膚はやわな斬撃程度ではビクともしない。
「さぁ、来いや。お前らもあいつらの様にバラバラにしてやるよ」
「やってみろよクソ鬼が」
エンデルは巨大な腕で木の幹を掴み、根本からへし折る。そしてそのまま槍投げの構えを取り、一直線に投げつける。
「至天破邪剣征流 薙払の型 『剣征之斬・大風車』!」
前転に合わせて斬撃を放ち、飛んでくる木の幹を縦に斬り裂く。だが、エンデルの猛攻はそれだけでは終わらない。まるで投げているのが槍かと錯覚する程、軽そうに木を折っては投げている。
それをレオは真っ二つに斬り落とすか軌道をずらすかして被弾しないようにしている。後ろにナイアリスが居る為、大きく避ける事ができないのだ。
「チッ……だがこの鋼鉄の体は斬れねぇだろう」
エンデルは幹を投げるのを止め、レオに向かい突進していく。
しかしレオは抜刀の構えを取ったまま動かない。まずいと感じたナイアリスがレオの後ろから飛び出し、回転に合わせて三日月刀を踊らせる。
突進するエンデルとすれ違いざまに流れる様に斬ったが、硬すぎる皮膚は斬れず、逆に弾かれてしまった。
なんとかブレーキをかけてとどまるがエンデルは止まってくれない。その鋼鉄の体が盾となり矛となりレオを襲う。
「粉砕!粉砕!粉砕! お前も行商人と同じくこの体でぐちゃぐちゃだァ!」
「『大輪』!」
大きく横に斬り裂いた斬撃がエンデルの胴を捉えた。が、それも簡単に弾かれた。
エンデルは斬撃など最初から無かったかの様に豪腕を振り、レオの頭を砕かんと迫る。だがスピードで勝るレオは既にエンデルの頭上に飛び上がっており、エンデルは空を殴る結果となる。
「『天降』」
上空から地面へ振り下ろした斬撃がエンデルの脊髄を捉える。レオはそのまま少し前のめりになったエンデルの後ろに着地する。
「やりやが……」
「『花火』」
エンデルが振り返ったと同時に下から斬り上げ、顎を捉える。だがどちらの斬撃も大した効果は無い。
上から斬り下ろす天降と下から斬り上げる花火。二つとも“斬る”事よりも“衝撃”を重視した技だが、それでもエンデルの異能『羅鬼降臨』は破れない。この異能は鬼化に加えてかなり骨格が強化も行われている為、衝撃にも強いのだ。
「確かにお前は硬いがそれだけだ。スピードは無いしこっちの技がその強度を上回れれば倒せる」
「それができるのかって言ってんだよォ」
「できるさ、この最後の一撃なら」
剣征之斬、最後の一撃はその前に技を積めば積む程威力が上がる。
現在大風車、大輪、天降、花火と四段階積んだ状態に加え、デッテツに鍛えられた銀月ならば大抵の物は斬れるだろう。
「至天破邪剣征流 薙払の型」
「こいつ、雰囲気が……」
「『剣征之斬・画竜点睛……」
フッと力が抜けたようにレオの体がガクンと前のめりになり姿が消えた。
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ストレートに打ち込まれた左拳とレオの銀月がぶつかり合い……
「ぐぁぁぁぁぁぁ……」
銀月がエンデルの左手の甲から入り、手首、前腕、上腕、胸部を通り右肩まで斬り裂いた。
だが、それだけでは終わらない。レオは既に二撃目の体勢に入っていた。すぐさま手の中で刃の向きを反対にしたレオは大きく振り下ろした。銀月は再び右肩から入り、胸部を、そして左脇まで駆け抜けた。二重袈裟斬り。
「……二撃』」
エンデルの体はクロス型に切断され、四つに分かれた。
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