最弱属性魔剣士の雷鳴轟く

相鶴ソウ

132話 居場所もわからずに……

「我流 熊ノ太刀」

「雷帝流 稲妻剣」


 リンリの炎を纏った剣と俺の雷を纏ったテンペスターがぶつかり合う。
 リンリの技は不思議で剣だけを打ち合わせた時よりも力が強い。恐らく俺の雷を纏えば威力が上がるのと同じ理屈だろう。


「炎によるアシスト……」


 均衡した力は反発し、お互いに後ろへ下がる。リンリの素の戦闘力が高いだけにアシストの意味は大きい。


「その剣、随分とボロボロだな」


 見ればリンリの剣は普通の片手剣で、刃もそうだが柄や鍔、鞘ですらボロボロだ。手入れが良かったのか折れてこそいないが、いつ折れても不思議ではない。


「そういえば、この剣とは奴隷になった頃から一緒で……」


 そりゃボロボロになるはずだ。


「なら、これを使ってみろよ」


 俺はテンペスターを鞘に戻し、鞘ごと渡す。本当は適当な剣があればいいんだが……ローズレインはあるが、あれは片手剣よりレイピアに近い為リンリ向きではない。


「え、でも……」

「いいからやってみろよ」


 テンペスターはミスリルという魔力をよく通す素材からできている。俺の雷に耐えれたんだから炎にも耐えれるはずだ。


「わかりました」


 リンリがテンペスターに魔力を込めると大きく発火。今までより威力がかなり上がっている。
 やはり普通の剣とテンペスターでは魔力の通しやすさが違うんだ。


「行くぞ」

「え、でも」

「雷帝流 稲妻剣・獄」

「我流 虎ノ太刀」


 上段からの斬り込みにに対し、リンリは下からの斬り上げで対抗してくる。炎は雷獣トゥルエノティーグレに似た形を象っている。
 剣を変えるだけでここまで強さが変わるのか。下からの斬り上げにも関わらず、俺を押し返すほどの力を発揮した。


「しばらくそれを使ってみろよ。テンペスターっていうんだ、俺の相棒」

「いいんですか? 困るんじゃ……」

「俺にはシュデュンヤーもあるからな。気にしなくて大丈夫」


 どうしてもやばい時はローズレインを使えばいい。その時手元にあるかはわからないが。


「あっらぁ、いいわねいいわね。友情じゃなーい」


 そこへマスターボウがやってきた。街の方へ行くって言っていたのでその帰りだろう。相変わらずの口調で体をくねらせながら近づいてくる。
 リンリはサッとシエラの後ろに隠れた。どうやら怯えているらしい。


「あんたビビられてるぞ」

「うっそーん。そんなこと無いわ! 私から溢れ出る母性に……」

「リンリ、とりあえずはここまでにしよう」

「あ、わかりました」


 俺はシュデュンヤーを鞘に戻してブルーバードに戻ろうと歩き出す。
 途中リンリがテンペスターを返そうとして来たが、とりあえずは持たせておいた。あの剣じゃいざって時に危なそうだし。


「……ってちょっと聞いてる!?」





「おい」

「なに? レオ」

「オーガが出たってのはこの森なのか?」

「私に道を聞く? 普通」


 レオとナイアリスはろくに話も聞かずに出てきた為、森の位置もオーガの特徴も何もわからない。


「しかしオーガか」

「どっちにしても皇帝鬼エンペラーオーガ程の力は無いよ。あんなのがポンポン出てくるわけないし」

「ああ、そうだな。一つ、問題があるとすれば……おれ達の両方があの皇帝鬼エンペラーオーガとは直接対峙してないって点だ」





 一方その頃、冒険者ギルドにある依頼人室では。
 ここでは主に依頼人が依頼を出す為にギルド役員と話をする部屋である。報酬金、対象、詳しい内容などを話すのだ。


「落ち着きましたか?」

「はい……ありがとうございます」


 行商人は受付嬢から水を貰い、やっと落ち着いてきたところだ。


「では御二方は行ってしまわれましたが、詳しい依頼内容をお願いします」

「はい、俺の名前はジャンと言います。ダンブ商会の運搬を任されてます。今回はディルから木材を運んでいました 今回が初めてというわけではなく、良く通る道でしたので油断もしていたと思います。道中には強力な魔物も出現せず、襲われる事も今まではありませんでした」

「という事は今まで居なかった魔物が突然現れたということですね?」

「はい、そうです。でも、全く気配が無くて……とにかく突然でした。今回は助っ人も居たのに、一瞬で壊滅状態に……」

「助っ人、ですか?」

「はい、旅をしていると言っていました。とても大きな体でフードを深くかぶっている男の方です」

「なるほど、わかりました。レオさんもナイアリスさんも詳しい場所を知りません すぐに帰ってくると思いますので、その時に改めて」

「あっ!」

「どうされました?」

「一つだけ、思い出したことがあります。そのオーガは最初……人間の姿をしていました」

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