最弱属性魔剣士の雷鳴轟く
124話 嵐の前兆?
「オラ飲め飲めっ!」
「決闘イベント、アジェンダ勝利の前夜祭だぁ!」
「クロ坊! 何ぼーっとしてやがる。酒だよ酒!酒酒酒!」
地獄から帰ると既に地上は深夜の時間になっており、森はシンっと静まり返っていた。
だが、ブルーバードはそんな事関係ない。いかついおっさん達が酒の入ったコップを振り回しながら歌え踊れの大騒ぎ。おまけに四ヶ月後の超決闘イベントの前夜祭も行われている。と言ってもこの一週間殆ど毎日が前夜祭なのだが。
おそらくイベント当日までは前夜祭が続くんだろう。
「お、帰ったか。クロト」
「悪い、遅くなった」
「いや、気にしなくていいけどよ」
カウンター席に腰掛けながらヴァランが手を振る。
周りにレッグの姿はあるものの、レオやシエラ、アジェンダ、マルスが見当たらない。
「シエラとレオはどこに行ったんだ?」
「シエラはあの白髪の子を面倒見てる。レオはまだ帰ってきてないな」
そうか、リンリはまだ……
なんとかしてやりたいけど、俺より女の子の気持ちがわかるシエラがいいのかもな。レオに関しては……まぁ死にはしないだろう。
「アジェンダは?」
「レオの様子を見に行ってるよ。自分のせいでふさぎ込んでるかもってな」
アジェンダには悪いがそれは絶対無いな。レオがふさぎ込む? それは嵐の前兆だ。
「マルスは?」
「えーっと……」
「街に顔出してくると言っていた」
頭を抱えるヴァランにレッグが助け舟を出す。
「まぁ居ないなら居ないでいいか。エヴァはどうしてる?」
「寝てるはずだ。少し前に身体を拭くのと着替えをシエラにやってもらった時は小さく寝息を立ててたらしい」
「そうか、わかった。俺はとりあえずそっちが気になるから先に見てくるよ。その後手伝いならするから」
「おう!」
あらくれ共に酒をもってこいのコールを受けながら俺はブルーバードの地下へ降りる。階段を降りると、右に通路がつながっている。左右の壁には扉がいくつも並んでおり、一番奥には更に地下へ通じる階段がある。ワインやら酒やらが貯蔵してあるらしく、レッグの機嫌を損ねるといけないので俺も入った事は無い。
そして酒場へ続く階段から数えて三つ目の左側、ここがリンリの部屋で今はシエラも一緒にいるらしい。
そこから更に二つ奥に俺とエヴァの使っている部屋がある。
「入るぞ」
もし目覚めて着替えでもしてたら悪いと思い、毎回ノックと声掛けはするようにしている。だが、今日も目覚めた様子はなく、ベッドの上で寝ていた。
服装が今までの服ではなく、白いワンピースだった為、一瞬違う人かと思った。でもこのワンピース俺達の荷物の中には無かったよな。
どこから出てきたんだろう。
「まぁいいか」
俺は一先ず自分の使っているベッドに腰掛け、すぐ隣で寝ているエヴァを見る。顔色も比較的良いし呼吸も安定してるし、どう見ても寝顔なんだよな。でも眠るように死ぬ人もいるわけだから、安心する理由にはならないか。
遠くで酒場の馬鹿騒ぎする音が聞こえてくるが、部屋の中はシンとしていて心地が良い。俺はそっとエヴァの手を握る。
「さ、行くか」
俺はエヴァの手を毛布の中に戻し、エプロンを腰に巻いて酒場へ戻った。今日も今日とて、バカの相手だ。
◇
ブルーバードを囲う森。そのとある場所にて。
「……ッ」
巨大な蜂を模した二級魔物、マーダラービー十数体を相手に奮闘する男が居た。
奮闘と言っても、マーダラービーは即死毒の付いた針をレオに刺そうと躍起になって飛び回っているが、レオはそれをただ避け続けている。だが、相手の数は十を越え、夜である為に視界も悪い。その中で気配だけを感じ取り避け続ける。
これはレオが編み出した修行方法だった。
掠っただけでも死ぬ様な緊張感の中、ただひたすらに気配を読み、動き続ける。基礎体力を補い、戦闘中の視野を広げる効率のいい修行方法と言える。
だが、問題はそこではない。
この修行をアジェンダに敗れてから、つまり数時間前から続けているという点だ。既に体力的にも精神的にもかなり来ているはず。
だが、レオはやめない。やめれないと言ったほうが正しいかもしれない。二代銀月を置いた場所が遠過ぎて取れないのである。
「……っ」
そんな状態が長く続けば、どんな超人だって限界が来る。
一匹のマーダラービーを避けた時に体がよろけ、隙を作ってしまう。何時間も追い回している獲物が見せた初めての隙をマーダラービーが逃すはずも無く、一斉に飛びかかる。
流石にまずいと感じたレオだが、この状況を打破する術は持っていない。
万事休す。
「はぁぁぁ!」
流石に死んだなとレオが覚悟を決めたその時、紅の髪がなびき、マーダラービー達を真っ二つに斬り裂いた。
「決闘イベント、アジェンダ勝利の前夜祭だぁ!」
「クロ坊! 何ぼーっとしてやがる。酒だよ酒!酒酒酒!」
地獄から帰ると既に地上は深夜の時間になっており、森はシンっと静まり返っていた。
だが、ブルーバードはそんな事関係ない。いかついおっさん達が酒の入ったコップを振り回しながら歌え踊れの大騒ぎ。おまけに四ヶ月後の超決闘イベントの前夜祭も行われている。と言ってもこの一週間殆ど毎日が前夜祭なのだが。
おそらくイベント当日までは前夜祭が続くんだろう。
「お、帰ったか。クロト」
「悪い、遅くなった」
「いや、気にしなくていいけどよ」
カウンター席に腰掛けながらヴァランが手を振る。
周りにレッグの姿はあるものの、レオやシエラ、アジェンダ、マルスが見当たらない。
「シエラとレオはどこに行ったんだ?」
「シエラはあの白髪の子を面倒見てる。レオはまだ帰ってきてないな」
そうか、リンリはまだ……
なんとかしてやりたいけど、俺より女の子の気持ちがわかるシエラがいいのかもな。レオに関しては……まぁ死にはしないだろう。
「アジェンダは?」
「レオの様子を見に行ってるよ。自分のせいでふさぎ込んでるかもってな」
アジェンダには悪いがそれは絶対無いな。レオがふさぎ込む? それは嵐の前兆だ。
「マルスは?」
「えーっと……」
「街に顔出してくると言っていた」
頭を抱えるヴァランにレッグが助け舟を出す。
「まぁ居ないなら居ないでいいか。エヴァはどうしてる?」
「寝てるはずだ。少し前に身体を拭くのと着替えをシエラにやってもらった時は小さく寝息を立ててたらしい」
「そうか、わかった。俺はとりあえずそっちが気になるから先に見てくるよ。その後手伝いならするから」
「おう!」
あらくれ共に酒をもってこいのコールを受けながら俺はブルーバードの地下へ降りる。階段を降りると、右に通路がつながっている。左右の壁には扉がいくつも並んでおり、一番奥には更に地下へ通じる階段がある。ワインやら酒やらが貯蔵してあるらしく、レッグの機嫌を損ねるといけないので俺も入った事は無い。
そして酒場へ続く階段から数えて三つ目の左側、ここがリンリの部屋で今はシエラも一緒にいるらしい。
そこから更に二つ奥に俺とエヴァの使っている部屋がある。
「入るぞ」
もし目覚めて着替えでもしてたら悪いと思い、毎回ノックと声掛けはするようにしている。だが、今日も目覚めた様子はなく、ベッドの上で寝ていた。
服装が今までの服ではなく、白いワンピースだった為、一瞬違う人かと思った。でもこのワンピース俺達の荷物の中には無かったよな。
どこから出てきたんだろう。
「まぁいいか」
俺は一先ず自分の使っているベッドに腰掛け、すぐ隣で寝ているエヴァを見る。顔色も比較的良いし呼吸も安定してるし、どう見ても寝顔なんだよな。でも眠るように死ぬ人もいるわけだから、安心する理由にはならないか。
遠くで酒場の馬鹿騒ぎする音が聞こえてくるが、部屋の中はシンとしていて心地が良い。俺はそっとエヴァの手を握る。
「さ、行くか」
俺はエヴァの手を毛布の中に戻し、エプロンを腰に巻いて酒場へ戻った。今日も今日とて、バカの相手だ。
◇
ブルーバードを囲う森。そのとある場所にて。
「……ッ」
巨大な蜂を模した二級魔物、マーダラービー十数体を相手に奮闘する男が居た。
奮闘と言っても、マーダラービーは即死毒の付いた針をレオに刺そうと躍起になって飛び回っているが、レオはそれをただ避け続けている。だが、相手の数は十を越え、夜である為に視界も悪い。その中で気配だけを感じ取り避け続ける。
これはレオが編み出した修行方法だった。
掠っただけでも死ぬ様な緊張感の中、ただひたすらに気配を読み、動き続ける。基礎体力を補い、戦闘中の視野を広げる効率のいい修行方法と言える。
だが、問題はそこではない。
この修行をアジェンダに敗れてから、つまり数時間前から続けているという点だ。既に体力的にも精神的にもかなり来ているはず。
だが、レオはやめない。やめれないと言ったほうが正しいかもしれない。二代銀月を置いた場所が遠過ぎて取れないのである。
「……っ」
そんな状態が長く続けば、どんな超人だって限界が来る。
一匹のマーダラービーを避けた時に体がよろけ、隙を作ってしまう。何時間も追い回している獲物が見せた初めての隙をマーダラービーが逃すはずも無く、一斉に飛びかかる。
流石にまずいと感じたレオだが、この状況を打破する術は持っていない。
万事休す。
「はぁぁぁ!」
流石に死んだなとレオが覚悟を決めたその時、紅の髪がなびき、マーダラービー達を真っ二つに斬り裂いた。
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