最弱属性魔剣士の雷鳴轟く
121話 初撃
「おい、紅の伝説」
「ん?」
レオは俺を押しのけ、アジェンダの前に立つ。その姿にオリハルコン級への恐れ等は全く感じられず、闘志だけが場に満ちていた。
「おれと戦え……!」
やっぱりか……
この間、ミスリル級の雨刃と渡り合ったとはいえ、次にアジェンダは早すぎるんじゃないか? ちょっと見てみたい気もするけど……でも流石にアジェンダも安請け合いはしないよな。
「わかった、やろう」
うん、わかったんだ……
アジェンダは巨大な斧を使うぐらいしか俺も知らないけど、レオは本気で勝つつもりなのか?
「んまぁ、面白そうな事になってるじゃなーい」
若干苛立ちを覚えるような喋り方をした声が聞こえてくる。次に強風が駆け抜け、俺達は思わず目を瞑る。
それでもお構いなく風は吹き続け、竜巻を巻き起こしながら木々を揺らす。
「な、なんなんだ……」
歯を食いしばりながら声を絞り出す。
「あいつだ」
「あいつ?」
「この風は……」
アジェンダが言いかけた時、風が突如として止み、人間がそこに立っていた。黒いタキシードにシルクハットを被り、服の裾についた汚れをパンパンと落としている。
「久しぶりじゃない、アジェンダちゃん」
「相変わらず元気そうね、マスターボウ」
「マスター、ボウ……」
確か〈シルク・ド・リベルター〉のオーナーでアジェンダと同じオリハルコン級の……〈風神〉のマスターボウ!?
「あらぁ?あなた達もしかして雨刃ちゃんの言ってた飛び級した子かしらぁ?」
顔はワイルドなおっさんなのになんで喋り方は女みたいなんだ……
「そ、そうだけど……」
「んーーーーっまぁぁ! 一度会いたかったのよねぇ〜」
「ヨ! クロト、レオ」
「雨刃!」
いつの間にやら雨刃やリン、他にも〈シルク・ド・リベルター〉のメンバーと思わしき面々がマスターボウの後ろに集まっていた。
ピエロに蛇使いに……ただの長身の男? ザ・サーカスって面々だ。一番謎なのはマスターボウだが。
「大事な仕事があるって言ってなかったか?」
「アア、ダカラココ二来タ。正確ニハ第二之都市ニ、ダガ」
へぇ、セントレイシュタンで行う依頼でもあったのか?
「それで、ついでだから四ヶ月後に超決闘イベントを控えたアジェンダちゃんを応援しに来たったわけなのよぉ〜〜」
へぇ、結構仲良いんだな。
それにしてもファリオスとアジェンダの決闘か。真の目的は士気の向上らしいが、どうせやるなら勝ってほしい。でもアジェンダ、巨斧と二丁斧以外どうやって戦うんだろう。
まさかそれだけのゴリ押しはないだろう。そういう意味でも今回の決闘は楽しみだな。
「オーナー」
「何かしらん? 雨刃ちゃん」
「レオト紅ノ伝説ハ模擬戦ヲスルラシイ。ソロソロヤラセテヤレヨ」
「んぅっ! そうね!」
見た目に反しての喋り方が慣れない。仕草や表情は完全に女の人なのに、顔は男なんだもんな。いや、そういう差別が良くないのはわかってるが……笑いそうになる。
何はともあれ模擬戦をする為にブルーバードの前である程度の間隔を持ち、アジェンダとレオが向かい合った。
「これはこれで興奮するわねっ!」
「オーナー、少し落ち着いてください」
よほど楽しみなのか、マスターボウは飛んだり跳ねたり地面を這いずったりブルブル体を震わせたり、とにかく主張が激しい。それをなだめているのはピエロ姿の人だ。見た目に反した優しい声、口調でマスターボウをうまく抑え込んでいる。
「あ、クロト君だったよね。僕は〈シルク・ド・リベルター〉ピエロ担当のグラブスだよ、よろしくね」
「あ、よろしく」
マスターボウを挟んで座っているグラブスとしっかり握手を交わす。グラブスには悪いが、マスターボウがなにかしようとしていたので慌てて手は引いた。
「雨刃、もしやばくなったら止めてくれ!」
「アア」
やばくなったらって……そんなに本気でやるつもりなのか?アジェンダ。いや、俺もアジェンダの本気は見たことがない。是非とも見たいが……
「行くぜ……」
「来なさい」
レオは瞑想し、集中力を高めているように見える。
至天破邪剣征流は単純な技術に加えて、闘気を扱うものも多いらしい。闘気ってのはこっちで言う魔力で、大和では普通に用いられているらしい。
「ッ!!」
黒くて細い何かが目の前を落ちて……髪? 一陣の風が吹き抜け、俺の髪の毛が数本落ちた。なんだ……全く何が起こったのか見えなかった。
レオの姿が一瞬にして消え、アジェンダの巨斧に何かがぶつかった。それも半端な威力ではない。よくあの斧が折れなかったなと疑うレベルだ。
「至天破邪剣征流 突破の型 『至天失斬烈風斬り』!!」
レオはアジェンダの後ろに姿を現し、銀月を鞘に収める。とほぼ同時にアジェンダの体に浅い傷はを作り、そしてアジェンダの背後に広がる森を切り崩した。数十本の木が切り倒され、鳥たちが一斉に舞う。
「……防ぐか。この一撃を」
「ん?」
レオは俺を押しのけ、アジェンダの前に立つ。その姿にオリハルコン級への恐れ等は全く感じられず、闘志だけが場に満ちていた。
「おれと戦え……!」
やっぱりか……
この間、ミスリル級の雨刃と渡り合ったとはいえ、次にアジェンダは早すぎるんじゃないか? ちょっと見てみたい気もするけど……でも流石にアジェンダも安請け合いはしないよな。
「わかった、やろう」
うん、わかったんだ……
アジェンダは巨大な斧を使うぐらいしか俺も知らないけど、レオは本気で勝つつもりなのか?
「んまぁ、面白そうな事になってるじゃなーい」
若干苛立ちを覚えるような喋り方をした声が聞こえてくる。次に強風が駆け抜け、俺達は思わず目を瞑る。
それでもお構いなく風は吹き続け、竜巻を巻き起こしながら木々を揺らす。
「な、なんなんだ……」
歯を食いしばりながら声を絞り出す。
「あいつだ」
「あいつ?」
「この風は……」
アジェンダが言いかけた時、風が突如として止み、人間がそこに立っていた。黒いタキシードにシルクハットを被り、服の裾についた汚れをパンパンと落としている。
「久しぶりじゃない、アジェンダちゃん」
「相変わらず元気そうね、マスターボウ」
「マスター、ボウ……」
確か〈シルク・ド・リベルター〉のオーナーでアジェンダと同じオリハルコン級の……〈風神〉のマスターボウ!?
「あらぁ?あなた達もしかして雨刃ちゃんの言ってた飛び級した子かしらぁ?」
顔はワイルドなおっさんなのになんで喋り方は女みたいなんだ……
「そ、そうだけど……」
「んーーーーっまぁぁ! 一度会いたかったのよねぇ〜」
「ヨ! クロト、レオ」
「雨刃!」
いつの間にやら雨刃やリン、他にも〈シルク・ド・リベルター〉のメンバーと思わしき面々がマスターボウの後ろに集まっていた。
ピエロに蛇使いに……ただの長身の男? ザ・サーカスって面々だ。一番謎なのはマスターボウだが。
「大事な仕事があるって言ってなかったか?」
「アア、ダカラココ二来タ。正確ニハ第二之都市ニ、ダガ」
へぇ、セントレイシュタンで行う依頼でもあったのか?
「それで、ついでだから四ヶ月後に超決闘イベントを控えたアジェンダちゃんを応援しに来たったわけなのよぉ〜〜」
へぇ、結構仲良いんだな。
それにしてもファリオスとアジェンダの決闘か。真の目的は士気の向上らしいが、どうせやるなら勝ってほしい。でもアジェンダ、巨斧と二丁斧以外どうやって戦うんだろう。
まさかそれだけのゴリ押しはないだろう。そういう意味でも今回の決闘は楽しみだな。
「オーナー」
「何かしらん? 雨刃ちゃん」
「レオト紅ノ伝説ハ模擬戦ヲスルラシイ。ソロソロヤラセテヤレヨ」
「んぅっ! そうね!」
見た目に反しての喋り方が慣れない。仕草や表情は完全に女の人なのに、顔は男なんだもんな。いや、そういう差別が良くないのはわかってるが……笑いそうになる。
何はともあれ模擬戦をする為にブルーバードの前である程度の間隔を持ち、アジェンダとレオが向かい合った。
「これはこれで興奮するわねっ!」
「オーナー、少し落ち着いてください」
よほど楽しみなのか、マスターボウは飛んだり跳ねたり地面を這いずったりブルブル体を震わせたり、とにかく主張が激しい。それをなだめているのはピエロ姿の人だ。見た目に反した優しい声、口調でマスターボウをうまく抑え込んでいる。
「あ、クロト君だったよね。僕は〈シルク・ド・リベルター〉ピエロ担当のグラブスだよ、よろしくね」
「あ、よろしく」
マスターボウを挟んで座っているグラブスとしっかり握手を交わす。グラブスには悪いが、マスターボウがなにかしようとしていたので慌てて手は引いた。
「雨刃、もしやばくなったら止めてくれ!」
「アア」
やばくなったらって……そんなに本気でやるつもりなのか?アジェンダ。いや、俺もアジェンダの本気は見たことがない。是非とも見たいが……
「行くぜ……」
「来なさい」
レオは瞑想し、集中力を高めているように見える。
至天破邪剣征流は単純な技術に加えて、闘気を扱うものも多いらしい。闘気ってのはこっちで言う魔力で、大和では普通に用いられているらしい。
「ッ!!」
黒くて細い何かが目の前を落ちて……髪? 一陣の風が吹き抜け、俺の髪の毛が数本落ちた。なんだ……全く何が起こったのか見えなかった。
レオの姿が一瞬にして消え、アジェンダの巨斧に何かがぶつかった。それも半端な威力ではない。よくあの斧が折れなかったなと疑うレベルだ。
「至天破邪剣征流 突破の型 『至天失斬烈風斬り』!!」
レオはアジェンダの後ろに姿を現し、銀月を鞘に収める。とほぼ同時にアジェンダの体に浅い傷はを作り、そしてアジェンダの背後に広がる森を切り崩した。数十本の木が切り倒され、鳥たちが一斉に舞う。
「……防ぐか。この一撃を」
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