最弱属性魔剣士の雷鳴轟く
109話 予想外の決着
「さてと」
「アリス様の元へ戻ろうか」
レオが倒されてからすぐ、一息ついたエンリとリンリはアリスの元へ戻る為振り返った。
現在は砲撃の様な音が森に鳴り響き、アリスの生み出した巨人はその足元へ全身から土の塊を放出しているところだった。
「あれは奥の手でもある凝土雨弾。魔力を普通の凝土弾の半分、尚かつ数は数倍になる魔術」
「アリス様しか出来ないけどね……魔力半分であれを使うなんて」
通常は地面から土を上空に打ち上げ凝土。そして標的に向けて放つのだが、巨人から放出するアリスの凝土雨弾はその工程の半分を無視できる為、魔力の消費も半分で済むというわけだ。
「しかし、呆気ない男だった」
「紫髪の彼?」
「ああ、強さで言えばクロトと同等かそれ以上かと思ったが、大した事はなかっ……」
「大した事……ない?」
エンリはハッと目を見開き、振り返る。
そこにはエンリとリンリの連撃、更には阿吽の太刀を受け地面に倒れていたはずのレオが立っていた。銀月を杖のようにし、立ち上がるだけで息も上がっている。
だが、どこか楽しそうな雰囲気の笑みを浮かべ、レオは立ち上がった。
「そんな……エンリ、すぐにとどめを刺そう」
「ああ……!」
あの連撃と最後の阿吽の太刀はエンリとリンリの必勝パターンでもあった。
今までそれを防いだ者すら片手で数えるほどしか居らず、食らってなお立ち上がってくる者などただの一人たりとも居なかった。
それが一日で二人も現れたのだからクロト一行を強敵と認めざる得ない。
エンリとリンリはレオを標的の一人から危険な存在へと認識を変え、再び武器を構えた。
「確かにお前らは強い。だが、圧倒的に足りないものがある」
「く……このっ!!」
「エ、エンリ!」
レオから放たれる殺気と自分たちの必勝パターンが破られたという焦りが、冷静な判断力を狂わせる。
エンリは槍をこれでもかと言わんばかりに回し、リンリはワンテンポ遅れながらもそれに続いた。
「至天破邪剣征流 薙払の型 『狂乱の太刀』!!」
飛翔する鉤爪よりも荒々しく、早い斬撃が放たれる。この狂乱の太刀は、レオですら狙いを定めきれない無差別な斬撃。
前方に放たれた四本の斬撃をエンリとリンリはそれぞれの武器で破ってくる。が、その時にはもう遅い。
既にレオは次の技に移っている。
「突破の型 『虎武璃』!」
神速の居合がエンリを襲う。殆ど無意識、本能的に槍でガードしたが、その速度とパワーに圧倒され、エンリは動きを止めた。
リンリはなんとか目で追いついたものの体が動かない。
「『突き立てる牙』!」
エンリのすぐ後ろでブレーキを掛けたレオはそのまま無理矢理踏み込みリンリに接近。スピードをそのまま乗せた一突きがリンリの左胸を捉えた。
幸か不幸かリンリは胸当てを着けていた為、刀が生身に触れる事は無かったが、衝撃で吹き飛ばされ、木々に直撃。ノックアウトだ。
「……っ! リンリ!!」
「よそ見してんじゃねぇ!! おれらがやってんのはガキのチャンバラごっこじゃねーんだ、殺し合いだぞ!」
「……くっ!」
レオの一喝にエンリは怯むも槍を握り直し、レオの攻撃に備える。だが、すでに勝負はついていた。
「…………くっ」
エンリは膝を付きそのまま倒れた。体からは血が滴り地面を赤く濡らす。
「至天破邪剣征流 相殺の型 『幻像実斬』」
幻像実斬、あえて相手を追い込み極限状態にする事で感覚を鈍らせ、圧倒的闘気で錯覚を起こさせる至天破邪剣征流の中でもトップクラスに難しく、それでいて不確定な技だ。
「お前達に足りないのは敵を憎む圧倒的な憎悪、そして生と勝ちへの執着心。あとは容赦無く敵にとどめを刺す無慈悲さ」
「無慈悲さに関しては……はぁ……はぁ……お前も人の事言えないだろ」
エンリは起き上がる事が出来ず、倒れたままレオに反論する。
「リンリを……生かしただろう。“わざと”胸当てを突いた。私にも情けをかけたな この傷は殺すには浅すぎる」
「…………」
レオは無言で足元に這いつくばるエンリを見ていた。既に銀月は納刀され、勝負はついたと態度で示していた。
いつの間にかアリスの凝土雨弾も収まり、辺りはシンっと静まり返っている。
「お前たちがクロトの知り合いらしいからな。それに、おれがこの大陸に来たのは強い奴に勝つためであって殺すためじゃない。勝負がついたのならわざわざとどめを刺したりはしない」
「甘い……な……」
「……レオ? レオっ!!」
草むらをかき分け、エヴァが顔を出した。シエラと分かれた後、戦闘音を頼りにここまで来たのだ。
「エヴァリオンか。悪いがこっちは片付いたぞ」
「みたいだね……アリスはこっちに来なかった?」
「いや、知らないな」
「そう……っ! なに、この……」
「殺気……?」
突如としてこの辺り一体を謎の殺気が覆う。レオは銀月に手を当てながら周りの木々を睨みつけている。
エヴァもキョロキョロと見回しながら殺気の出処を探している。
「闇術 死刀」
森に声が響いた途端、ある一角より紫色の靄を纏った黒い短刀が飛んでくる。
すかさずレオは抜刀し弾き飛ばしたが、黒い短刀は空中をクルクルと回転し、急降下し止まった。
「……!?」
「ちっ……」
「エン……リ……?」
いつの間にか意識を取り戻していたリンリが目を見開き、倒れたまま手を伸ばす。黒い短刀の刺さった先はエンリの背中、ちょうど心臓の部分だった。
「ぐ、ぐぁぁぁぁ……」
黒い短刀が刺さったかと思うと、紫の靄がエンリの全身を包み、エンリは苦しいのかうめき声をあげる。
エヴァは困惑し、エンリを見つめるばかりで体が動かない。
「う、くそぉ…………」
もがくにももがけず、逃げようにも逃げられない。リンリは涙を流しながら自分の姉に手を伸ばすが、レオとの戦いで想像以上にダメージを負い、それも空を掴むばかりでとても届かない。
そしてその言葉を最後に、エンリは動かなくなった。
エンリは死んだ。
それはその場にいる全員が確かめずとも感じた事であり、事実としてエンリは死んだ。
「ひぇひぇひぇひぇひぇ」
それを待っていたかの様に男は姿を現した。
レオと同じく紫の髪をチャラチャラとかきあげ、赤のフロックスーツ、黒いマントに見を包んだ四魔王の一角……
「不死不滅の……フロリエルッ!!」
エヴァの怒りの声が森に響いた。
「アリス様の元へ戻ろうか」
レオが倒されてからすぐ、一息ついたエンリとリンリはアリスの元へ戻る為振り返った。
現在は砲撃の様な音が森に鳴り響き、アリスの生み出した巨人はその足元へ全身から土の塊を放出しているところだった。
「あれは奥の手でもある凝土雨弾。魔力を普通の凝土弾の半分、尚かつ数は数倍になる魔術」
「アリス様しか出来ないけどね……魔力半分であれを使うなんて」
通常は地面から土を上空に打ち上げ凝土。そして標的に向けて放つのだが、巨人から放出するアリスの凝土雨弾はその工程の半分を無視できる為、魔力の消費も半分で済むというわけだ。
「しかし、呆気ない男だった」
「紫髪の彼?」
「ああ、強さで言えばクロトと同等かそれ以上かと思ったが、大した事はなかっ……」
「大した事……ない?」
エンリはハッと目を見開き、振り返る。
そこにはエンリとリンリの連撃、更には阿吽の太刀を受け地面に倒れていたはずのレオが立っていた。銀月を杖のようにし、立ち上がるだけで息も上がっている。
だが、どこか楽しそうな雰囲気の笑みを浮かべ、レオは立ち上がった。
「そんな……エンリ、すぐにとどめを刺そう」
「ああ……!」
あの連撃と最後の阿吽の太刀はエンリとリンリの必勝パターンでもあった。
今までそれを防いだ者すら片手で数えるほどしか居らず、食らってなお立ち上がってくる者などただの一人たりとも居なかった。
それが一日で二人も現れたのだからクロト一行を強敵と認めざる得ない。
エンリとリンリはレオを標的の一人から危険な存在へと認識を変え、再び武器を構えた。
「確かにお前らは強い。だが、圧倒的に足りないものがある」
「く……このっ!!」
「エ、エンリ!」
レオから放たれる殺気と自分たちの必勝パターンが破られたという焦りが、冷静な判断力を狂わせる。
エンリは槍をこれでもかと言わんばかりに回し、リンリはワンテンポ遅れながらもそれに続いた。
「至天破邪剣征流 薙払の型 『狂乱の太刀』!!」
飛翔する鉤爪よりも荒々しく、早い斬撃が放たれる。この狂乱の太刀は、レオですら狙いを定めきれない無差別な斬撃。
前方に放たれた四本の斬撃をエンリとリンリはそれぞれの武器で破ってくる。が、その時にはもう遅い。
既にレオは次の技に移っている。
「突破の型 『虎武璃』!」
神速の居合がエンリを襲う。殆ど無意識、本能的に槍でガードしたが、その速度とパワーに圧倒され、エンリは動きを止めた。
リンリはなんとか目で追いついたものの体が動かない。
「『突き立てる牙』!」
エンリのすぐ後ろでブレーキを掛けたレオはそのまま無理矢理踏み込みリンリに接近。スピードをそのまま乗せた一突きがリンリの左胸を捉えた。
幸か不幸かリンリは胸当てを着けていた為、刀が生身に触れる事は無かったが、衝撃で吹き飛ばされ、木々に直撃。ノックアウトだ。
「……っ! リンリ!!」
「よそ見してんじゃねぇ!! おれらがやってんのはガキのチャンバラごっこじゃねーんだ、殺し合いだぞ!」
「……くっ!」
レオの一喝にエンリは怯むも槍を握り直し、レオの攻撃に備える。だが、すでに勝負はついていた。
「…………くっ」
エンリは膝を付きそのまま倒れた。体からは血が滴り地面を赤く濡らす。
「至天破邪剣征流 相殺の型 『幻像実斬』」
幻像実斬、あえて相手を追い込み極限状態にする事で感覚を鈍らせ、圧倒的闘気で錯覚を起こさせる至天破邪剣征流の中でもトップクラスに難しく、それでいて不確定な技だ。
「お前達に足りないのは敵を憎む圧倒的な憎悪、そして生と勝ちへの執着心。あとは容赦無く敵にとどめを刺す無慈悲さ」
「無慈悲さに関しては……はぁ……はぁ……お前も人の事言えないだろ」
エンリは起き上がる事が出来ず、倒れたままレオに反論する。
「リンリを……生かしただろう。“わざと”胸当てを突いた。私にも情けをかけたな この傷は殺すには浅すぎる」
「…………」
レオは無言で足元に這いつくばるエンリを見ていた。既に銀月は納刀され、勝負はついたと態度で示していた。
いつの間にかアリスの凝土雨弾も収まり、辺りはシンっと静まり返っている。
「お前たちがクロトの知り合いらしいからな。それに、おれがこの大陸に来たのは強い奴に勝つためであって殺すためじゃない。勝負がついたのならわざわざとどめを刺したりはしない」
「甘い……な……」
「……レオ? レオっ!!」
草むらをかき分け、エヴァが顔を出した。シエラと分かれた後、戦闘音を頼りにここまで来たのだ。
「エヴァリオンか。悪いがこっちは片付いたぞ」
「みたいだね……アリスはこっちに来なかった?」
「いや、知らないな」
「そう……っ! なに、この……」
「殺気……?」
突如としてこの辺り一体を謎の殺気が覆う。レオは銀月に手を当てながら周りの木々を睨みつけている。
エヴァもキョロキョロと見回しながら殺気の出処を探している。
「闇術 死刀」
森に声が響いた途端、ある一角より紫色の靄を纏った黒い短刀が飛んでくる。
すかさずレオは抜刀し弾き飛ばしたが、黒い短刀は空中をクルクルと回転し、急降下し止まった。
「……!?」
「ちっ……」
「エン……リ……?」
いつの間にか意識を取り戻していたリンリが目を見開き、倒れたまま手を伸ばす。黒い短刀の刺さった先はエンリの背中、ちょうど心臓の部分だった。
「ぐ、ぐぁぁぁぁ……」
黒い短刀が刺さったかと思うと、紫の靄がエンリの全身を包み、エンリは苦しいのかうめき声をあげる。
エヴァは困惑し、エンリを見つめるばかりで体が動かない。
「う、くそぉ…………」
もがくにももがけず、逃げようにも逃げられない。リンリは涙を流しながら自分の姉に手を伸ばすが、レオとの戦いで想像以上にダメージを負い、それも空を掴むばかりでとても届かない。
そしてその言葉を最後に、エンリは動かなくなった。
エンリは死んだ。
それはその場にいる全員が確かめずとも感じた事であり、事実としてエンリは死んだ。
「ひぇひぇひぇひぇひぇ」
それを待っていたかの様に男は姿を現した。
レオと同じく紫の髪をチャラチャラとかきあげ、赤のフロックスーツ、黒いマントに見を包んだ四魔王の一角……
「不死不滅の……フロリエルッ!!」
エヴァの怒りの声が森に響いた。
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