最弱属性魔剣士の雷鳴轟く
96話 荒業中の荒業
狭い通路から現れたのはゴブリンが五体、ホブゴブリンが二体、スペルゴブリンが三体。
俺は背中にディーナス、レオは両肩にイズとコモエフを抱えている。シエラはステラに肩を貸しており、両手が空いているのはエヴァのみ。
この状況でどうする……
「ここは私に任せて」
「でも……」
明らかにエヴァは氷術を使う事に躊躇いを見せていた。
さっきの雹絶帝砲だって普段にに比べればかなり威力が落ちていた。
「そもそもこの狭い通路じゃ、クロトやレオの力は半減される。この場面じゃ私が適任だよ」
振り返ってニコッと笑うエヴァを見て、俺は確信した。そしてこの局面で自分がやると言い切った勇気。今エヴァに必要なのは哀れみや慰め、助太刀じゃない。
仲間からの絶対的な信頼。それがすなわちエヴァへの力になる。
「頼むぞ! エヴァ!」
俺達は進むスピードを落とさずに進む。エヴァは魔力を高め、一点を狙う。
「氷術 武器具現 『トライデント』 氷槍猪突猛進撃!」
両手を重ね、そこから生成した氷の槍を回転させながら一直線に飛ばす。ホブ二体、スペル一体を貫通し、洞窟の出口に向けて更に飛んでいく。
残ったゴブリンの一体がエヴァに飛び掛かるが、エヴァが片手で作り出した氷の盾に阻まれ、更に続く氷の弾丸によりその身を串刺しにされる。
「グシャァァァァ」
スペルゴブリンが叫びと共に火球を放つ。それに対し……
「氷術 氷刃」
エヴァの氷の刃が相殺、いや、火球をも斬り裂きスペルゴブリンの首を飛ばした。目の前にゴブリンは消え、俺達はそのまま通過しようとする。が、
「グシャァァッッ!!」
通路の窪み、影になっている場所に最後のゴブリンが隠れており、俺に飛びかかって来た。
ディーナスを抱えたままでは剣は抜けないし、仲間が近すぎて危険だ。
「クロト!」
「……雷術」
俺は両手の内、左手をディーナスから離す。
ディーナスが半分崩れ落ちるような形になるが、少し前のめりになってそれを支え、左手に雷を纏い、右から飛び込んでくるゴブリンの胴体を掴む。
「グギャァ!?」
「雷撃」
高電圧の放電を受けたゴブリンの皮膚は焦げ、白目を向いている。だが、構う暇は無い。俺はゴブリンを投げ捨て、そのまま出口を目指す。
「あ! 光が見えてきたよ!」
エヴァが指差すすぐ先には洞窟の入り口、俺達にとっては出口があった。
「なんとか着いたでありんすな」
俺達は洞窟から抜け出し、森に出た。
長らく太陽の光を見ていなかっただけに突然刺す陽光に目がくらむ。だが、なんとか出てこれた。
雨刃とリンがまだ中だけど、あの二人がやられるところは想像がつかない。〈女闘士軍 アマゾネス〉のメンバーも全員無事。
後は二人に任せて……
「な、なんだ」
「嘘だろ?」
ディーナス達を洞窟から離れた草原に寝かせていると、突如として洞窟に亀裂が入る。その亀裂は別の亀裂と合わさって徐々に洞窟全体に広がり……そのまま崩れ落ちた。
◇
クロト達が脱出する少し前。
「グガァァァァァァ」
未だに二十の片手剣で相手をしていた雨刃だが、エンペラーオーガの叫びにより、ただやられているだけだったゴブリンたちが雨刃達に向けて攻め始めた。
その数は数百にも及びいくら二人が強くても不利である事に変わりはなかった。
だが……
「ナンダコイツラ」
「どうやら、数が多すぎたみたいだな」
数百にも及ぶゴブリンの群れ、それはこの空洞に入るには少し多過ぎたらしく、お互いがお互いに道を塞ぎ、雨刃達の前に来れるのはせいぜい十匹同時がいいところであった。
そんな数に劣る雨刃ではなく、むしろ狙いが集中されやりやすくもあった。
「肉の壁の方が向いてるな」
「全クダ」
「グガァァァァァァッッッ!!!」
エンペラーオーガはそのもどかしさからか持っていた大剣でつっかえているゴブリン達を斬り捨て、後ろでまだ待機中のゴブリン達に何度か吠える。
「ホォ……」
エンペラーオーガが吠えるとまずはただのゴブリンが一斉に雨刃達に迫る。大きさも小さく、つっかえる事も無い。
雨刃はすぐさま剣の数を増やしゴブリンを捌く。だが、圧倒的物量戦。対する雨刃も物量戦を得意とするがその数は僅か百。二百を超えるゴブリン達を捌き切るには至らない。
雨刃の攻撃を掻い潜ってきたゴブリンはリンに斬られ雨刃達に攻撃は届かない。
だが、雨刃達がゴブリンに気を取られている間にホブは隊列を組み、スペルは後ろに回り火球を放つ準備をしている。
エンペラーオーガの叫び一つでここまで統制が整えられた。
「このまま相手してはジリ貧だぞ!」
「分カッテル。ダカラ、コノ巣ヲ潰ス 数分頼ムゾ」
言い終わると同時にゴブリンの相手をしていた片手剣が空洞の天井部分目掛けて上がっていき、突き刺さる。
片手剣を全て上に回したことで無防備になった雨刃を守るようにリンはその周りを駆け続け、ゴブリン達を寄せ付けない防壁となる。
点と点が繋がるように亀裂が入り天井部分を崩れさせる。
「脆イ部分ヲ突ケバ簡単ニ亀裂ガ入り、崩レル」
「お、お前……まさか……やめろぉぉぉぉ!!」
エンペラーオーガの叫びを最後に空洞、及びゴブリンの巣は崩れ落ちた。が、ゴブリン達を道連れに雨刃達自らも、瓦礫に埋もれた。
俺は背中にディーナス、レオは両肩にイズとコモエフを抱えている。シエラはステラに肩を貸しており、両手が空いているのはエヴァのみ。
この状況でどうする……
「ここは私に任せて」
「でも……」
明らかにエヴァは氷術を使う事に躊躇いを見せていた。
さっきの雹絶帝砲だって普段にに比べればかなり威力が落ちていた。
「そもそもこの狭い通路じゃ、クロトやレオの力は半減される。この場面じゃ私が適任だよ」
振り返ってニコッと笑うエヴァを見て、俺は確信した。そしてこの局面で自分がやると言い切った勇気。今エヴァに必要なのは哀れみや慰め、助太刀じゃない。
仲間からの絶対的な信頼。それがすなわちエヴァへの力になる。
「頼むぞ! エヴァ!」
俺達は進むスピードを落とさずに進む。エヴァは魔力を高め、一点を狙う。
「氷術 武器具現 『トライデント』 氷槍猪突猛進撃!」
両手を重ね、そこから生成した氷の槍を回転させながら一直線に飛ばす。ホブ二体、スペル一体を貫通し、洞窟の出口に向けて更に飛んでいく。
残ったゴブリンの一体がエヴァに飛び掛かるが、エヴァが片手で作り出した氷の盾に阻まれ、更に続く氷の弾丸によりその身を串刺しにされる。
「グシャァァァァ」
スペルゴブリンが叫びと共に火球を放つ。それに対し……
「氷術 氷刃」
エヴァの氷の刃が相殺、いや、火球をも斬り裂きスペルゴブリンの首を飛ばした。目の前にゴブリンは消え、俺達はそのまま通過しようとする。が、
「グシャァァッッ!!」
通路の窪み、影になっている場所に最後のゴブリンが隠れており、俺に飛びかかって来た。
ディーナスを抱えたままでは剣は抜けないし、仲間が近すぎて危険だ。
「クロト!」
「……雷術」
俺は両手の内、左手をディーナスから離す。
ディーナスが半分崩れ落ちるような形になるが、少し前のめりになってそれを支え、左手に雷を纏い、右から飛び込んでくるゴブリンの胴体を掴む。
「グギャァ!?」
「雷撃」
高電圧の放電を受けたゴブリンの皮膚は焦げ、白目を向いている。だが、構う暇は無い。俺はゴブリンを投げ捨て、そのまま出口を目指す。
「あ! 光が見えてきたよ!」
エヴァが指差すすぐ先には洞窟の入り口、俺達にとっては出口があった。
「なんとか着いたでありんすな」
俺達は洞窟から抜け出し、森に出た。
長らく太陽の光を見ていなかっただけに突然刺す陽光に目がくらむ。だが、なんとか出てこれた。
雨刃とリンがまだ中だけど、あの二人がやられるところは想像がつかない。〈女闘士軍 アマゾネス〉のメンバーも全員無事。
後は二人に任せて……
「な、なんだ」
「嘘だろ?」
ディーナス達を洞窟から離れた草原に寝かせていると、突如として洞窟に亀裂が入る。その亀裂は別の亀裂と合わさって徐々に洞窟全体に広がり……そのまま崩れ落ちた。
◇
クロト達が脱出する少し前。
「グガァァァァァァ」
未だに二十の片手剣で相手をしていた雨刃だが、エンペラーオーガの叫びにより、ただやられているだけだったゴブリンたちが雨刃達に向けて攻め始めた。
その数は数百にも及びいくら二人が強くても不利である事に変わりはなかった。
だが……
「ナンダコイツラ」
「どうやら、数が多すぎたみたいだな」
数百にも及ぶゴブリンの群れ、それはこの空洞に入るには少し多過ぎたらしく、お互いがお互いに道を塞ぎ、雨刃達の前に来れるのはせいぜい十匹同時がいいところであった。
そんな数に劣る雨刃ではなく、むしろ狙いが集中されやりやすくもあった。
「肉の壁の方が向いてるな」
「全クダ」
「グガァァァァァァッッッ!!!」
エンペラーオーガはそのもどかしさからか持っていた大剣でつっかえているゴブリン達を斬り捨て、後ろでまだ待機中のゴブリン達に何度か吠える。
「ホォ……」
エンペラーオーガが吠えるとまずはただのゴブリンが一斉に雨刃達に迫る。大きさも小さく、つっかえる事も無い。
雨刃はすぐさま剣の数を増やしゴブリンを捌く。だが、圧倒的物量戦。対する雨刃も物量戦を得意とするがその数は僅か百。二百を超えるゴブリン達を捌き切るには至らない。
雨刃の攻撃を掻い潜ってきたゴブリンはリンに斬られ雨刃達に攻撃は届かない。
だが、雨刃達がゴブリンに気を取られている間にホブは隊列を組み、スペルは後ろに回り火球を放つ準備をしている。
エンペラーオーガの叫び一つでここまで統制が整えられた。
「このまま相手してはジリ貧だぞ!」
「分カッテル。ダカラ、コノ巣ヲ潰ス 数分頼ムゾ」
言い終わると同時にゴブリンの相手をしていた片手剣が空洞の天井部分目掛けて上がっていき、突き刺さる。
片手剣を全て上に回したことで無防備になった雨刃を守るようにリンはその周りを駆け続け、ゴブリン達を寄せ付けない防壁となる。
点と点が繋がるように亀裂が入り天井部分を崩れさせる。
「脆イ部分ヲ突ケバ簡単ニ亀裂ガ入り、崩レル」
「お、お前……まさか……やめろぉぉぉぉ!!」
エンペラーオーガの叫びを最後に空洞、及びゴブリンの巣は崩れ落ちた。が、ゴブリン達を道連れに雨刃達自らも、瓦礫に埋もれた。
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