最弱属性魔剣士の雷鳴轟く

アイズ

95話 叫び

女闘士軍じょとうしぐん アマゾネス〉をクロト達が連れて行ってから約五分が経過した。
未だに続く熾烈な戦闘はお互い一歩も引かない。
エンペラーオーガはその高い自己回復能力を活かし、我が身を盾として突き進む。
対する雨刃は自らが操れる最大本数の剣でエンペラーオーガを斬り刻む。


「無駄ということが……わからんかぁ!」


エンペラーオーガは更に腕を振るい片手剣を地面に叩きつける。
が、数は百。吹き飛ばしたところで別の片手剣に襲われる。
付けた傷はすぐに回復し、吹き飛ばした片手剣はすぐに戻ってくる。


「皮膚ハ硬イ 耐性モ有リソウダ
修復速度ハ傷ガ付イテカラ約三秒……
ナルホド……オ前ノ弱点モ見エテキタナ」

「弱点だと?」


激しい攻防が続く中、一人と一体は冷静に言葉を交わす。


「アア、オ前ガ自然ニ生マレタ魔物ナラ倒セナカッタカモシレナイガ、意図的ニ作ラレタ魔物ナラ、必ズ仕掛ケガアルハズダ」

「仕掛け……?」

「筋肉ダヨ オ前ハ皮膚ガ硬クテ耐性ガアルト思ッタガ、ソレハ間違ッテイタ
俺ノ剣ガ通ラナイノモ直グニ回復スルノモ、特殊ニ作リ変エラレタ筋肉ノセイダッタンダ」

「何を言ってやがる……皮膚も筋肉も変わらねーだろう!」

「皮膚ニソコマデノ強度ガ有レバソモソモ刃ガ通ラナイ
ダガ、硬質ナノハ筋肉……ナラ皮膚ハ傷付ク」

「なるほど
全身に張り巡らされた筋肉を改造されたならば……」

「行ケ、同胞リン


エンペラーオーガを襲っていた片手剣の動きが止まり、エンペラーオーガは自由になる。
が、エンペラーオーガが動き始めるよりも早くリンの太刀がエンペラーオーガの膝裏を断ち切った。


「関節や筋肉の薄い部分は同時に弱点になり得る」

「グ、グォォォ……おのれ……」


エンペラーオークは膝を付きながら悪態をつく。
雨刃の分析とリンの攻撃により、エンペラーオーガから勝利が遠のいた。


「コレデ終ワ……」

「グギャシャァァァァァァァァァァァッッッ!!」


今までと比べ物にならない怒号、咆哮、絶叫が鳴り響く。
耳が張り裂けそうな叫びの前に雨刃もリンも動きを止める。
糸の操作も途絶え、片手剣が地面に落ちる。
リンも膝を付き、耳を抑える。


「ナ、何ヲ……」

「足……音……?」


咆哮に混じってドタドタと足音が聞こえてくる。
それはオーガやエンペラーオーガが出てきた穴、つまりゴブリンの巣の奥から。


「数が少ないと思ったが……」

「少シ……面倒ダナ……」






アイゼンウルブス、冒険者ギルド。
ギルドマスター室にて、二人の男が会談していた。


「ギルドマスター ゴブリンの巣はどうしました?」

「ふむぅ、一応手は打った
と言うかギルドマスターはやめろ、普通にレザリオでいい」

「はは、そうですか レザリオ
ところでどんな手を?」

「冒険者を総動員にし、はぐれのゴブリンの討伐
腕の立つ複数の冒険者、及び冒険者パーティーに巣を叩いてもらっている」

「腕の立つ……冒険者か」

「本当は〈シルク・ド・リベルター〉の全メンバーに行ってほしかったんだが、国からの依頼の準備があるからな」

「ああ、今はラストサーカスの準備をしているのでしたね」

「おう、だからあそこんとこの雨刃とリンが行ってくれてる」

「雨刃にリンですか
それなら安心ですね」

「ああ、そうだろうよ」






「さっきの叫び……なんだ?」


俺達はディーナス達を担ぎながら来た道を小走りで引き返していた。
つい今しがた耳をつんざく咆哮が通路に響き渡った。


「わからないけど、エンペラーオーガが何かしたのかも?」

「そうか……雨刃とリンなら大丈夫だとは思うが」

「あの二人なら大丈夫だ
それより前だ!」

「来るでありんす
ゴブリンの群れ!!」






奥の通路から大量に押し寄せるのはゴブリンの群れ。
ゴブリン、ホブゴブリン、スペルゴブリン。
更には支配小鬼ゴブリンロードまでいる。
雨刃とリンは咆哮を終え、大量の味方を呼び出したエンペラーオーガと睨み合っていた。
エンペラーオーガの後ろには何十何百を越えるゴブリンの群れ。
雨刃とリン以外に味方は無し。状況は絶望的だ。


「ダガ、俺達ハミスリル級冒険者
コノ程度デ諦メルト思ウナヨ」


再び百本の剣を操り、ゴブリンの群れに向ける。
リンも腰に収めたままの刀を抜き、ゴブリンの群れに向ける。


「あの叫びがもし仲間を呼び寄せるものだとしたら、通路から帰ってくるゴブリンもいるかもしれない」

アイツラクロト達ナラ心配ハ要ラナイダロウ
今ハ眼前ノ敵ヲ滅ボスマデダ」


百の内、二十ほどの片手剣がゴブリンの群れへ飛ぶ。
ゴブリン、ホブゴブリンを一突きで絶命させ、戻す時にはまた別のゴブリンを引き裂く。
だが、動いているのはたかが二十。数百にも及ぶゴブリンの群れを倒し切るにはまだまだ至らない。
エンペラーオーガが動く事も考え、八十は待機させている。
リンも動かずにじっとエンペラーオーガを観察している。


「雨刃、あまり体力を使うなよ」

「アア」

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