最弱属性魔剣士の雷鳴轟く
90話 依頼、スタート
小鬼の巣へ行った冒険者から得た情報をまとめると、巣は森の中心にある巨大な岩石の根本、洞窟の中にある。
洞窟に入って少しすると後ろから奇襲され、その後洞窟の奥から現れた小鬼達は魔術師小鬼に率いられていた。しかもゴブリン達は剣や短剣、盾を持った前衛と弓を持った後衛に分かれていたようだが、混乱していた為はっきりとは覚えていないらしい。
だが、少なくとも魔術師小鬼以上の上位種が従える群れという事だ。
「入リ口ガ一ツトモ限ラン。パーティ毎デワカレ、見張リヤハグレノ小鬼ヲ倒シツツ全方位カラ巣へ接近。入リ口ヲ見ツケ次第、各自突入ダ」
って事で俺達も森に入っているわけだが……
「なんでお前らもいるんだよ!」
「ナンダ? 急ニ」
「すまんな 周りから見ればお前達は銅。私達が助けに入るとしたらここしかないんだ」
「まぁ、それはわかるけどよ」
俺達は今回の作戦の最高戦力とも言える雨刃とリンが居る事から巣の正面入口を担当する事になった。正確には最終的に全員正面入口に来るはずだが、他のパーティは別の入り口を探してから来る手はずになっていた。
俺達は一刻も早く、ゴブリン達を討伐する為、最短ルートで森を進んでいた。
シエラの“月の女神の投擲眼”と俺の耳で周囲を常に警戒しつつ、巣へと向かっている。
「おい、剣のお前」
「雨刃ダ。オ前ハ?」
「レオだ。その剣の仕組み、どうなってんだ?」
「……俺ハ糸ヲ操ル魔術、思糸術ヲ使ウ一族ノ末裔ナンダ
思糸術ハ糸ヲ操ル事ハ出来ルガ、ソノ性質マデハ変エラレナイ
ツマリハ“タダ操ルダケ”ナンダ」
「ただ操るだけ? どういう事だよ」
「例エバ糸ヲ束ネテ硬質化出来タラソレダケデ武器ニナルダロ? ダガ、ソンナ事ハ出来ナイ」
「で、それを補うために片手剣を括り付けてるのか?」
「ソウダ。マ、切レタ糸ヲ繋ゲタリ、糸ヲ伸バシタリ、ソレグライナラ出来ルゼ」
そう言えば昨日、レオに切られたはずの糸がいつの間にか繋がってた。そういう事だったのか。
「クロト!」
「どうした! シエラ」
「見えんした。巣の入り口でありんす!」
「イヨイヨダナ」
◇
巣を真上から見て、正面入口は西を向いている。
その方向にはアイゼンウルブスがあり、クロトや雨刃が通っているのは西ルートだ。そして南ルートはシルバー級冒険者パーティ〈三首の鬼〉が担当していた。先頭を歩くのは金髪のレイピア使い、ラフ。その後ろにフーバとドダラが続く。
「こんなちまちました事やってらんねぇぜ、ちくしょう。おい!どうだラフ、何かいるか?」
「今の所は何も感じないわ」
「ひひ、早く……早く血を浴びたい……ひひひ」
「相変わらず気持ち悪いな。ドダラ」
「もう気にならなくなって来たわ」
「ひひ……何か……来るぞ?」
ドダラが言い終える前に草むらから多数のゴブリンが飛び出してきた。数は二十を軽く超えている。
全方位から一斉に飛び出してきた為、周りを囲まれている。
巣の中に居た奴に比べると装備は貧弱だが、それでもゴブリンが付けているものにしてはかなり良い方だった。
「ちぃっ! まさか囲まれるなんてな」
「でも、問題ないわ。見たところただのゴブリンばかり」
「ひひ……殺戮だ」
◇
北ルートを進んでいるのは女の子だけのシルバー級冒険者パーティ〈女闘士軍 アマゾネス〉。
四人ではあるが、四人ともが次期ゴールドと噂される程の実力者である。
「これは……」
北から巣に向かって進んでいた四人は途中で巨大な段差に当たった。地盤がズレたかのようなこの段差は大きく裂けており、洞窟として奥に続いていた。
「別の入り口ってやつだにゃ」
「雨刃のヤローが言ってたやつか」
「こらこら、コモエフ。雨刃さんでしょ? ミスリル級冒険者なんだから、敬意を払わなくちゃ」
「チッ、うるせーよディーナス 行くのか?行かないのか?」
「勿論……行きますわ」
「別の入り口だって、アストロレイ。頑張ろうね」
◇
「ったく……何がゴブリンだよ。めんどくせーなー」
東ルートは東北ルートと東南ルートに分かれ、探索を進めていた。東北ルートを担当するのはゴールド級冒険者〈舞姫のナイアリス〉。
普段は弱気なフリをしているが、一人になるとその本性が出る。
「ギシャァァ!」
「シャグァァァァ」
前方から飛び出した二匹のゴブリンをちらりと見ただけで腰に三本さしている三日月刀を二本抜き、体を回転させて流れるようにゴブリンの急所を斬った。
踊るように回っただけでゴブリン共は確実に急所を抉られて絶命している。この演舞にも見える戦闘法から舞姫と呼ばれ、外見も相まってひそかな人気は高い。性格にはやや難あり。
◇
「ふん 雑魚が」
「ふう、なんとかなりましたね。ランシエ」
東南ルートを進むのはシルバー級冒険者ペアパーティ〈蒼紅の絁〉。
金棒を振り回すランシエと棍を振り回すベポのパーティだ。つい先程襲ってきたゴブリンを討伐したばかりである。二人の周りには五十程度のゴブリンの死体が転がっていた。
洞窟に入って少しすると後ろから奇襲され、その後洞窟の奥から現れた小鬼達は魔術師小鬼に率いられていた。しかもゴブリン達は剣や短剣、盾を持った前衛と弓を持った後衛に分かれていたようだが、混乱していた為はっきりとは覚えていないらしい。
だが、少なくとも魔術師小鬼以上の上位種が従える群れという事だ。
「入リ口ガ一ツトモ限ラン。パーティ毎デワカレ、見張リヤハグレノ小鬼ヲ倒シツツ全方位カラ巣へ接近。入リ口ヲ見ツケ次第、各自突入ダ」
って事で俺達も森に入っているわけだが……
「なんでお前らもいるんだよ!」
「ナンダ? 急ニ」
「すまんな 周りから見ればお前達は銅。私達が助けに入るとしたらここしかないんだ」
「まぁ、それはわかるけどよ」
俺達は今回の作戦の最高戦力とも言える雨刃とリンが居る事から巣の正面入口を担当する事になった。正確には最終的に全員正面入口に来るはずだが、他のパーティは別の入り口を探してから来る手はずになっていた。
俺達は一刻も早く、ゴブリン達を討伐する為、最短ルートで森を進んでいた。
シエラの“月の女神の投擲眼”と俺の耳で周囲を常に警戒しつつ、巣へと向かっている。
「おい、剣のお前」
「雨刃ダ。オ前ハ?」
「レオだ。その剣の仕組み、どうなってんだ?」
「……俺ハ糸ヲ操ル魔術、思糸術ヲ使ウ一族ノ末裔ナンダ
思糸術ハ糸ヲ操ル事ハ出来ルガ、ソノ性質マデハ変エラレナイ
ツマリハ“タダ操ルダケ”ナンダ」
「ただ操るだけ? どういう事だよ」
「例エバ糸ヲ束ネテ硬質化出来タラソレダケデ武器ニナルダロ? ダガ、ソンナ事ハ出来ナイ」
「で、それを補うために片手剣を括り付けてるのか?」
「ソウダ。マ、切レタ糸ヲ繋ゲタリ、糸ヲ伸バシタリ、ソレグライナラ出来ルゼ」
そう言えば昨日、レオに切られたはずの糸がいつの間にか繋がってた。そういう事だったのか。
「クロト!」
「どうした! シエラ」
「見えんした。巣の入り口でありんす!」
「イヨイヨダナ」
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巣を真上から見て、正面入口は西を向いている。
その方向にはアイゼンウルブスがあり、クロトや雨刃が通っているのは西ルートだ。そして南ルートはシルバー級冒険者パーティ〈三首の鬼〉が担当していた。先頭を歩くのは金髪のレイピア使い、ラフ。その後ろにフーバとドダラが続く。
「こんなちまちました事やってらんねぇぜ、ちくしょう。おい!どうだラフ、何かいるか?」
「今の所は何も感じないわ」
「ひひ、早く……早く血を浴びたい……ひひひ」
「相変わらず気持ち悪いな。ドダラ」
「もう気にならなくなって来たわ」
「ひひ……何か……来るぞ?」
ドダラが言い終える前に草むらから多数のゴブリンが飛び出してきた。数は二十を軽く超えている。
全方位から一斉に飛び出してきた為、周りを囲まれている。
巣の中に居た奴に比べると装備は貧弱だが、それでもゴブリンが付けているものにしてはかなり良い方だった。
「ちぃっ! まさか囲まれるなんてな」
「でも、問題ないわ。見たところただのゴブリンばかり」
「ひひ……殺戮だ」
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北ルートを進んでいるのは女の子だけのシルバー級冒険者パーティ〈女闘士軍 アマゾネス〉。
四人ではあるが、四人ともが次期ゴールドと噂される程の実力者である。
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北から巣に向かって進んでいた四人は途中で巨大な段差に当たった。地盤がズレたかのようなこの段差は大きく裂けており、洞窟として奥に続いていた。
「別の入り口ってやつだにゃ」
「雨刃のヤローが言ってたやつか」
「こらこら、コモエフ。雨刃さんでしょ? ミスリル級冒険者なんだから、敬意を払わなくちゃ」
「チッ、うるせーよディーナス 行くのか?行かないのか?」
「勿論……行きますわ」
「別の入り口だって、アストロレイ。頑張ろうね」
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「ったく……何がゴブリンだよ。めんどくせーなー」
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普段は弱気なフリをしているが、一人になるとその本性が出る。
「ギシャァァ!」
「シャグァァァァ」
前方から飛び出した二匹のゴブリンをちらりと見ただけで腰に三本さしている三日月刀を二本抜き、体を回転させて流れるようにゴブリンの急所を斬った。
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