最弱属性魔剣士の雷鳴轟く
87話 vs針鼠
「至天破邪剣征流 薙払の型 『狂乱の太刀』!!」
レオから放たれた無差別な斬撃が、包帯男の片手剣にぶつかり辛うじて防御する。
「レオ!」
「待たせた……こいつは?」
「わかんねーけど、相当強いぞ!」
包帯男は防がれたのが意外だったのか空中で片手剣を遊ばせながら興味深そうにレオを見ている。
「オ前ラ、ヤケニ強イナ。強イ冒険者ナラ俺ガ見タ事無イハズ無インダガ、オ前ラハ見タ事ガ無イナ」
「そりゃそうだろ。おれ達は昨日冒険者になったばかりのブロンズだからな」
「ナニ? 最低位?」
包帯男が遊ばせていた片手剣は地面に落ち、ぼーっとしている。こいつ、強さは本物だがそこまで完璧な奴じゃないな……
「エヴァ、レオ! やるぞ! あいつが何故攻撃してくるかは知らないが、来るなら受けて立つしかない!」
「あ、うん!」
「雷帝流 雷斬砲・獄」
「至天破邪剣征流 突破の型 『地を這う大蛇』!!」
「氷術 雹絶帝砲」
地面を走る斬撃に黒雷の斬撃と氷が加わり、一つの一撃になる。
「「「複合魔術 凍える黒雷の大蛇」」」
三つの攻撃を同時に受け、ただで済むはずがない。例えこいつの力が未知数だったとしても。斬撃と黒雷、そして氷を混ぜ合わせた三人の一撃を受け、爆発と共に砂煙が包帯男を包み込む。
そして砂煙もすぐに収まり、俺の予想が外れたことを告げる。包帯男は片手で十本以上の片手剣を操り、防御した。
柄と柄を合わせて扇のように片手剣を展開させ、大きな円形の盾を作り出す。それをただ展開させるだけでなく、回転させることであの一撃さえも防御した。
「何故、カ……俺ハ強イ奴ト戦イタイ。小鬼程度デハ不完全燃焼ナノダ」
「戦闘狂が……だが、予想が外れた。一本の指に一本の糸、故に一本の指に一本の剣。片手に五本、両手で十本……そう予想してたんだが」
「ソモソモ『一本ノ指ニ一本ノ糸』トイウノガ違う」
包帯男と俺達の間で回っていた十数本の片手剣は引っ張られるように包帯男のマントに戻って行き、一本の片手剣だけが残った。人差し指と繋がったその剣は、とても糸で操っているようには見えない程繊細な動きをしていた。
「コノ剣布ニハ百本ノ剣ガ付イテイル。ソレガ同時ニ俺ノ操レル最大本数」
全部で百本、片手で五十、指一本で……十本!?
もし指一本で十本操っている時と両手で操っている時、同じ精度で操れるなら、さっきのゴブリンの群れを指一本で全滅させられるのか。
「ハハハ。勿論、指一本ヨリモ両手デ十本操ッタ方ガ魔力ノ消費モ少ナクテ済ムシ、集中力モ要ラナイ。ダガ、ソレダケダ」
「つまりは、片手で五本なんて遊びと同じって事か」
「マァ、ソウダナ」
俺はテンペスターを抜き、シュデュンヤーを構える。一気に走り出し、距離を詰める。
包帯男はすぐに対応し、両手で十本の剣を操る。
ゴブリンを倒した時の速度がマックスではないだろうけど、その速度で来ると仮定した時、シュデュンヤーとテンペスターの二本だけで受けるのは不可能だ。俺自身が弾けて三発。四発目以降はおそらく間に合わない。
「レオ!エヴァ! 援護を頼む!!」
俺を捉えようと十本の片手剣が、本当に一人に操られているのかと思う程独自に動き、襲いかかってくる。
「技の連発は体に負担が掛かる……だが、ここで手は抜けねぇ。雷帝流 雷千剣……稲妻剣! もういっちょ稲妻剣!」
雷千剣によっては分断された雷の斬撃がほんの一瞬、片手剣を跳ね除ける。
包帯男に操られている以上、片手剣はすぐに戻ってくる。だが、こういうスピードタイプにはほんの一瞬の隙きが致命的なんだろ。再び向かってくる片手剣を稲妻剣にて二本落とす。糸を断ち切ったわけでは無いのでまたすぐに向かってくるだろうが、その一瞬であいつを斬れば終わりだ。
「至天破邪剣征流 突破の型 『飛翔する鉤爪・連』!!」
「氷術 武器具現『レーヴァテイン』 氷剣一斉嵐撃!」
残った七本の片手剣が一斉に俺目掛けて飛んでくる。
そこへレオの飛ぶ斬撃が、片手剣ではなく糸を断ち切り、完全に使えなくする。氷剣はさっき包帯男がしたように回転し、片手剣を防御した。
「いいぞ……雷帝流 雷鋼剣!!」
一気に距離を詰め、射程圏内に入る。包帯男はそれでも楽しそうに見ている。この状態でどうする!!
「クハハハハ 面白イナ。俺モ本気デ……」
「そこまでだ」
俺の雷鋼剣は一人の女に簡単に受け止められ、そのまま吹き飛ばされた。
くすんだ赤色のマントを身に纏い、ポニーテールにした紺色の髪が腰まで伸びている。切れ目から除く眼光はかなり鋭い。
「同胞、余計ナ事ヲ……」
俺は投げ飛ばされた勢いで背中から地面に落ち、倒れる。
すぐに立ち上がるが不意打ちだっただけに受け身が取れず呼吸が乱れた。
しかし、包帯男の片手剣を聞き取る為に耳は研ぎ澄ませていたのに、この女……全く気配がなかった。
「旅人よ、すまない事をした。私はリンという」
「あ、ああ……俺はクロトだ」
条件反射でこちらも名乗ってしまう。
「こいつは雨刃。悪い奴ではないんだが、重度の戦闘狂でな。ただ戦いたいだけなんだ」
確かに、俺達を殺す気は無かった……のか? 本当にただ戦いたいだけだったよな?
殺気を感じなかったとはいえこっちは殺されるかと思った。でも、俺達より強いやつなんてまだまだいるってことか……慢心せずにいこう。
「ハハハ 悪カッタナ。詫ビト言ッテハナンダガ、コレヲヤルヨ」
包帯男ーー雨刃は茶色い小袋を投げた。拾って中を見るとゴブリンの耳が大量に入っていた。「なら私も」と、リンと名乗った剣士も同じサイズの小袋をくれた。
「自分の報酬を差し出すのか?」
「迷惑料ダ。ソレニ金ニハ困ッテイナイ」
いつの間にか片手剣をマントに戻し、どうやったのかは知らないがレオに斬られた糸も元通りになって収まっている。
雨刃とリンは俺達を素通りし、気絶した二人の冒険者を抱える。
「こいつらは私達に任せてくれ」
「ああ、頼む」
「では」
そのまま森に消えてしまった。まさに嵐と例えてもそう違いはないと思う……
レオから放たれた無差別な斬撃が、包帯男の片手剣にぶつかり辛うじて防御する。
「レオ!」
「待たせた……こいつは?」
「わかんねーけど、相当強いぞ!」
包帯男は防がれたのが意外だったのか空中で片手剣を遊ばせながら興味深そうにレオを見ている。
「オ前ラ、ヤケニ強イナ。強イ冒険者ナラ俺ガ見タ事無イハズ無インダガ、オ前ラハ見タ事ガ無イナ」
「そりゃそうだろ。おれ達は昨日冒険者になったばかりのブロンズだからな」
「ナニ? 最低位?」
包帯男が遊ばせていた片手剣は地面に落ち、ぼーっとしている。こいつ、強さは本物だがそこまで完璧な奴じゃないな……
「エヴァ、レオ! やるぞ! あいつが何故攻撃してくるかは知らないが、来るなら受けて立つしかない!」
「あ、うん!」
「雷帝流 雷斬砲・獄」
「至天破邪剣征流 突破の型 『地を這う大蛇』!!」
「氷術 雹絶帝砲」
地面を走る斬撃に黒雷の斬撃と氷が加わり、一つの一撃になる。
「「「複合魔術 凍える黒雷の大蛇」」」
三つの攻撃を同時に受け、ただで済むはずがない。例えこいつの力が未知数だったとしても。斬撃と黒雷、そして氷を混ぜ合わせた三人の一撃を受け、爆発と共に砂煙が包帯男を包み込む。
そして砂煙もすぐに収まり、俺の予想が外れたことを告げる。包帯男は片手で十本以上の片手剣を操り、防御した。
柄と柄を合わせて扇のように片手剣を展開させ、大きな円形の盾を作り出す。それをただ展開させるだけでなく、回転させることであの一撃さえも防御した。
「何故、カ……俺ハ強イ奴ト戦イタイ。小鬼程度デハ不完全燃焼ナノダ」
「戦闘狂が……だが、予想が外れた。一本の指に一本の糸、故に一本の指に一本の剣。片手に五本、両手で十本……そう予想してたんだが」
「ソモソモ『一本ノ指ニ一本ノ糸』トイウノガ違う」
包帯男と俺達の間で回っていた十数本の片手剣は引っ張られるように包帯男のマントに戻って行き、一本の片手剣だけが残った。人差し指と繋がったその剣は、とても糸で操っているようには見えない程繊細な動きをしていた。
「コノ剣布ニハ百本ノ剣ガ付イテイル。ソレガ同時ニ俺ノ操レル最大本数」
全部で百本、片手で五十、指一本で……十本!?
もし指一本で十本操っている時と両手で操っている時、同じ精度で操れるなら、さっきのゴブリンの群れを指一本で全滅させられるのか。
「ハハハ。勿論、指一本ヨリモ両手デ十本操ッタ方ガ魔力ノ消費モ少ナクテ済ムシ、集中力モ要ラナイ。ダガ、ソレダケダ」
「つまりは、片手で五本なんて遊びと同じって事か」
「マァ、ソウダナ」
俺はテンペスターを抜き、シュデュンヤーを構える。一気に走り出し、距離を詰める。
包帯男はすぐに対応し、両手で十本の剣を操る。
ゴブリンを倒した時の速度がマックスではないだろうけど、その速度で来ると仮定した時、シュデュンヤーとテンペスターの二本だけで受けるのは不可能だ。俺自身が弾けて三発。四発目以降はおそらく間に合わない。
「レオ!エヴァ! 援護を頼む!!」
俺を捉えようと十本の片手剣が、本当に一人に操られているのかと思う程独自に動き、襲いかかってくる。
「技の連発は体に負担が掛かる……だが、ここで手は抜けねぇ。雷帝流 雷千剣……稲妻剣! もういっちょ稲妻剣!」
雷千剣によっては分断された雷の斬撃がほんの一瞬、片手剣を跳ね除ける。
包帯男に操られている以上、片手剣はすぐに戻ってくる。だが、こういうスピードタイプにはほんの一瞬の隙きが致命的なんだろ。再び向かってくる片手剣を稲妻剣にて二本落とす。糸を断ち切ったわけでは無いのでまたすぐに向かってくるだろうが、その一瞬であいつを斬れば終わりだ。
「至天破邪剣征流 突破の型 『飛翔する鉤爪・連』!!」
「氷術 武器具現『レーヴァテイン』 氷剣一斉嵐撃!」
残った七本の片手剣が一斉に俺目掛けて飛んでくる。
そこへレオの飛ぶ斬撃が、片手剣ではなく糸を断ち切り、完全に使えなくする。氷剣はさっき包帯男がしたように回転し、片手剣を防御した。
「いいぞ……雷帝流 雷鋼剣!!」
一気に距離を詰め、射程圏内に入る。包帯男はそれでも楽しそうに見ている。この状態でどうする!!
「クハハハハ 面白イナ。俺モ本気デ……」
「そこまでだ」
俺の雷鋼剣は一人の女に簡単に受け止められ、そのまま吹き飛ばされた。
くすんだ赤色のマントを身に纏い、ポニーテールにした紺色の髪が腰まで伸びている。切れ目から除く眼光はかなり鋭い。
「同胞、余計ナ事ヲ……」
俺は投げ飛ばされた勢いで背中から地面に落ち、倒れる。
すぐに立ち上がるが不意打ちだっただけに受け身が取れず呼吸が乱れた。
しかし、包帯男の片手剣を聞き取る為に耳は研ぎ澄ませていたのに、この女……全く気配がなかった。
「旅人よ、すまない事をした。私はリンという」
「あ、ああ……俺はクロトだ」
条件反射でこちらも名乗ってしまう。
「こいつは雨刃。悪い奴ではないんだが、重度の戦闘狂でな。ただ戦いたいだけなんだ」
確かに、俺達を殺す気は無かった……のか? 本当にただ戦いたいだけだったよな?
殺気を感じなかったとはいえこっちは殺されるかと思った。でも、俺達より強いやつなんてまだまだいるってことか……慢心せずにいこう。
「ハハハ 悪カッタナ。詫ビト言ッテハナンダガ、コレヲヤルヨ」
包帯男ーー雨刃は茶色い小袋を投げた。拾って中を見るとゴブリンの耳が大量に入っていた。「なら私も」と、リンと名乗った剣士も同じサイズの小袋をくれた。
「自分の報酬を差し出すのか?」
「迷惑料ダ。ソレニ金ニハ困ッテイナイ」
いつの間にか片手剣をマントに戻し、どうやったのかは知らないがレオに斬られた糸も元通りになって収まっている。
雨刃とリンは俺達を素通りし、気絶した二人の冒険者を抱える。
「こいつらは私達に任せてくれ」
「ああ、頼む」
「では」
そのまま森に消えてしまった。まさに嵐と例えてもそう違いはないと思う……
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