最弱属性魔剣士の雷鳴轟く
83話 シルク・ド・リベルター
「マスターボウ、指名の依頼が来てるボーン」
レオ公爵領最大の都市『アイゼンウルブス』に滞在しているオリハルコン級冒険者パーティ〈シルク・ド・リベルター〉。
サーカス団も兼ねているこのパーティはレオ公爵に気に入られ、この街でサーカスを開催していた。サーカスをするために建てられている巨大なテントの裏に備え付けられたもう一つのテントは団員達の控室になっており、今この場には全メンバーが集まっていた。
「誰からの依頼なの?」
白いフロックスーツに知的なメガネを付けた男が、ややねっとりした喋り方で答える。シルク・ド・リベルターのリーダーにしてオリハルコン級冒険者〈風神〉マスターボウだ。
「それが、国から直々の依頼ボーン」
ヒラヒラと紙をなびかせながら長身の男が答える。
マスターボウとは色違いの黒いフロックスーツに黒いシルクハットを着けている。シルク・ド・リベルターのメンバー、ボーンマン。ちなみに本名ではない。
「国から直々に? んまぁ、すごいじゃない!内容は?」
「それが……これを見てほしいボーン」
ボーンマンから紙を受け取り、その内容を読む。
「……まぁ、なるほどね。バージスちゃんには悪いけれど、これは私達の出番よねぇ」
「内容ハ何ナンダ?」
そこへ大きめの竹笠を着け、“奇妙なマント”を身に纏った男がガシャガシャと音を立てながら歩いてきた。
奇妙なマントとは黒く、ロングコートに似たマントに、そのマントを覆い隠すほどの大量の片手剣がくっついているというものだ。正確には刀身五十センチほどの片手剣の柄の部分がコートと縫い付けられており、それが全身に渡っている。
その姿はどこかハリネズミを思わせるような格好であり、ハリネズミと違うのは針が剣である事と、腹の部分も剣に覆われている所だ。
柄の部分のみがくくりつけられているため刃の部分がユラユラと揺れ、カチカチと音を立てている。剣のマントの下から除く足や顔等の本体部分は包帯が巻かれており、包帯でぐるぐる巻の頭は大きく開かれた口と赤く光る片目だけが見えている。
この奇妙な男は〈シルク・ド・リベルター〉の強さを象徴する男でもあり、謎の多いサーカス団の謎をさらに深めている男でもある。名を雨刃と言う。
「大陸全土を巡り、被災地の復興支援、及びサーカスを開催し国民に元気与える仕事よ。もし可能なら魔王と遭遇した際には戦ってほしいみたいよ~」
「メンドクサソウダナ」
「雨刃ちゃんはいつもそうね。でも今回ばかりは国からだもの、しっかりお仕事しましょ〜!」
「了解だボーン」
「ボーンマン、グラブス、メデューは今夜のサーカスの準備をするわよ。ここでする最後のサーカスになるわ。雨刃ちゃんとリンは資金調達の為に適当な依頼を受けてきて頂戴」
グラブスは〈シルク・ド・リベルター〉の看板ピエロ。因みに本名だ。メデューは蛇を使い芸をする女性。なお、本名ではない。
「御意!」
「ワカッタ」
雨刃とリンが応える。リンは紺色の長髪を高い所でポニーテールに結んだ女性で、腰にはレオと同じ東洋の刀がさしてある。リンはサーカスには参加しない完全な戦闘員で、芸名を使う必要も無い為、本名のまま活動している。
「さぁ!〈シルク・ド・リベルター〉出動よ!」
◇
ホワイトパピーはアイゼンウルブスの中でも最安値に分類される宿だった。客引きをしていたのは女将の娘でフィールというらしい。女将さんはふくよかな赤毛の女性だった。
「すいませんね フィールが強引な客引きを……」
「いえいえ! 私達も宿を探していたのでちょうど良かったです!」
実際探していたし、話を聞いてみるとここの価格は朝飯付一日銅貨四枚で、俺達にとってはまさにうってつけの宿だった。
男女分ける必要もあった為、二部屋借りて、今日依頼で貰った金は底を尽きた。幸いにも食料はまだ残っていたので、それで夜を凌ぎ、俺達は一つの部屋に集まった。
「これから数日、長ければ数週間はここで過ごす」
「いろいろ蓄える必要もあるしね」
「明日からは今日よりも報酬のいい仕事をすればなんとか生活もできるし、金が貯まれば物も買える」
「なんとかやっていけそうでありんすな」
「ああ あと、差し迫って決めなければいけないのはパーティ名だな。即席のパーティではない以上パーティ名を決めてくれって係員の人も言ってたからな」
「おれは何でもいいぜ」
「わっちも特にはないでありんすが」
「なら氷の姫は? 馴染みもあるし、」
「それは俺も思ったんだが、一般的に俺達は死んだ事になってるし、もしその名前で注目されるような事態になったら何かと大変だ」
「あ、そっか……」
「なんだ? その氷の姫ってのは」
「わっちも知らないでありんす」
「ああ、俺達がエルトリア学園で使っていたチーム名だよ。私とクロト以外にあと三人居たんだけど、とある事がきっかけでバラバラになっちまってる」
「へぇ、学園にいた時期もあったでありんすか」
「と言っても一年にも満たない短い間だけどな。と、そんな事より名前を……」
「ぐがーー」
「自分から聞いといて寝てやがる……」
「じゃあとりあえず今日はもう寝ようか」
「ああ、そうだな」
「了解でありんす」
名前はまた今度決めるという事でエヴァとシエラは部屋へ戻っていった。レオはほっといても大丈夫だろうと思い、俺はそのままベッドに入った。
レオ公爵領最大の都市『アイゼンウルブス』に滞在しているオリハルコン級冒険者パーティ〈シルク・ド・リベルター〉。
サーカス団も兼ねているこのパーティはレオ公爵に気に入られ、この街でサーカスを開催していた。サーカスをするために建てられている巨大なテントの裏に備え付けられたもう一つのテントは団員達の控室になっており、今この場には全メンバーが集まっていた。
「誰からの依頼なの?」
白いフロックスーツに知的なメガネを付けた男が、ややねっとりした喋り方で答える。シルク・ド・リベルターのリーダーにしてオリハルコン級冒険者〈風神〉マスターボウだ。
「それが、国から直々の依頼ボーン」
ヒラヒラと紙をなびかせながら長身の男が答える。
マスターボウとは色違いの黒いフロックスーツに黒いシルクハットを着けている。シルク・ド・リベルターのメンバー、ボーンマン。ちなみに本名ではない。
「国から直々に? んまぁ、すごいじゃない!内容は?」
「それが……これを見てほしいボーン」
ボーンマンから紙を受け取り、その内容を読む。
「……まぁ、なるほどね。バージスちゃんには悪いけれど、これは私達の出番よねぇ」
「内容ハ何ナンダ?」
そこへ大きめの竹笠を着け、“奇妙なマント”を身に纏った男がガシャガシャと音を立てながら歩いてきた。
奇妙なマントとは黒く、ロングコートに似たマントに、そのマントを覆い隠すほどの大量の片手剣がくっついているというものだ。正確には刀身五十センチほどの片手剣の柄の部分がコートと縫い付けられており、それが全身に渡っている。
その姿はどこかハリネズミを思わせるような格好であり、ハリネズミと違うのは針が剣である事と、腹の部分も剣に覆われている所だ。
柄の部分のみがくくりつけられているため刃の部分がユラユラと揺れ、カチカチと音を立てている。剣のマントの下から除く足や顔等の本体部分は包帯が巻かれており、包帯でぐるぐる巻の頭は大きく開かれた口と赤く光る片目だけが見えている。
この奇妙な男は〈シルク・ド・リベルター〉の強さを象徴する男でもあり、謎の多いサーカス団の謎をさらに深めている男でもある。名を雨刃と言う。
「大陸全土を巡り、被災地の復興支援、及びサーカスを開催し国民に元気与える仕事よ。もし可能なら魔王と遭遇した際には戦ってほしいみたいよ~」
「メンドクサソウダナ」
「雨刃ちゃんはいつもそうね。でも今回ばかりは国からだもの、しっかりお仕事しましょ〜!」
「了解だボーン」
「ボーンマン、グラブス、メデューは今夜のサーカスの準備をするわよ。ここでする最後のサーカスになるわ。雨刃ちゃんとリンは資金調達の為に適当な依頼を受けてきて頂戴」
グラブスは〈シルク・ド・リベルター〉の看板ピエロ。因みに本名だ。メデューは蛇を使い芸をする女性。なお、本名ではない。
「御意!」
「ワカッタ」
雨刃とリンが応える。リンは紺色の長髪を高い所でポニーテールに結んだ女性で、腰にはレオと同じ東洋の刀がさしてある。リンはサーカスには参加しない完全な戦闘員で、芸名を使う必要も無い為、本名のまま活動している。
「さぁ!〈シルク・ド・リベルター〉出動よ!」
◇
ホワイトパピーはアイゼンウルブスの中でも最安値に分類される宿だった。客引きをしていたのは女将の娘でフィールというらしい。女将さんはふくよかな赤毛の女性だった。
「すいませんね フィールが強引な客引きを……」
「いえいえ! 私達も宿を探していたのでちょうど良かったです!」
実際探していたし、話を聞いてみるとここの価格は朝飯付一日銅貨四枚で、俺達にとってはまさにうってつけの宿だった。
男女分ける必要もあった為、二部屋借りて、今日依頼で貰った金は底を尽きた。幸いにも食料はまだ残っていたので、それで夜を凌ぎ、俺達は一つの部屋に集まった。
「これから数日、長ければ数週間はここで過ごす」
「いろいろ蓄える必要もあるしね」
「明日からは今日よりも報酬のいい仕事をすればなんとか生活もできるし、金が貯まれば物も買える」
「なんとかやっていけそうでありんすな」
「ああ あと、差し迫って決めなければいけないのはパーティ名だな。即席のパーティではない以上パーティ名を決めてくれって係員の人も言ってたからな」
「おれは何でもいいぜ」
「わっちも特にはないでありんすが」
「なら氷の姫は? 馴染みもあるし、」
「それは俺も思ったんだが、一般的に俺達は死んだ事になってるし、もしその名前で注目されるような事態になったら何かと大変だ」
「あ、そっか……」
「なんだ? その氷の姫ってのは」
「わっちも知らないでありんす」
「ああ、俺達がエルトリア学園で使っていたチーム名だよ。私とクロト以外にあと三人居たんだけど、とある事がきっかけでバラバラになっちまってる」
「へぇ、学園にいた時期もあったでありんすか」
「と言っても一年にも満たない短い間だけどな。と、そんな事より名前を……」
「ぐがーー」
「自分から聞いといて寝てやがる……」
「じゃあとりあえず今日はもう寝ようか」
「ああ、そうだな」
「了解でありんす」
名前はまた今度決めるという事でエヴァとシエラは部屋へ戻っていった。レオはほっといても大丈夫だろうと思い、俺はそのままベッドに入った。
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