最弱属性魔剣士の雷鳴轟く

相鶴ソウ

82話 初依頼はやっぱり……

「すいません 冒険者登録をしたいんですが……」


 ギルドの中にあるカウンターで、冒険者登録を済ませるため、エヴァが受付の係員に声をかけた。


「はい!わかりました。ではこのカードに名前をお書きください」


 縦五センチ、横十センチ程度の分厚い紙で作られたカードが人数分渡された。俺達はそれぞれ名前を書き、係員に返す。


「はい!では登録しますね」


 と言って受付嬢はカードと同じサイズの四角形の魔石にカードを押し当てる。
 すると、名前が書かれている下に大きくブロンズと書かれた。全員分のカードを押し当て終わると、再び俺達に返される。


「そのカードは身分証にもなり、依頼を受ける際にも必要になりますので、無くさないようにお持ちください。皆さんお知り合いのようですが、パーティの登録はいかがいたしますか?」

「はい、お願いします」

「了解しました。こちらのカードをお持ちください」


 俺達が貰ったカードと同じカードを魔石に押し当て、渡される。ブロンズと大きく書かれていて、俺達のカードと違うのは名前が書かれていないだけだ。


「このカードはパーティ用のカードになります。バーティのお名前を空いてる部分にお書き頂くと、自動的にパーティとして登録されます。パーティとして依頼を受ける際はこちらのカードも合わせてお見せください。あとの細かい説明はこちらの冒険者ガイドブックを差し上げますのでそちらをご覧ください。必要な事はほぼ全て網羅されていますので」

「あ、ありがとうございます!」


 エヴァが受け取った本は暑さが十五センチはあるだろうかと思う程の分厚い本で重そうなのがひしひしと伝わってくる。


「ちなみに、ですが。この街に滞在されているオリハルコン級冒険者パーティ〈シルク・ド・リベルター〉様はサーカス団を兼ねています。折角この街に来たのですから見て行ってはどうでしょうか?」

「この街にオリハルコン級冒険者パーティが居るのか!?」

「ええ、公爵であるバージス様に気に入られ、ここに滞在されてます」


 オリハルコン級……冒険者のランクの最上位に位置するその称号を持つ者は大陸にも片手で数えられる程度しかいない。しかしその強さは絶対的で大陸が誇る三大将軍にも匹敵する。そんな称号を持つパーティがこの街にいるなんてな。
 アジェンダに続いて二人目になる。オリハルコン級冒険者に出会うのは。


「よし、そのサーカス団に行ってみようぜ」

「その前に仕事行かなきゃ。今日本気で野宿になるよ」

「た、確かに……行くか」





 記念すべき初依頼となるのは薬草集め。ブロンズ級冒険者が必ず通る道でもあるらしい。
 近くの森に薬草を取りに行くだけの簡単な仕事で、強い奴との戦いを期待していたレオにはつまらないかもな。


「それにしてもエヴァって教養あるよな。ちゃんと敬語使えるし、対応もできるし」

「一応元公爵家の娘だからね。礼儀作法とかは全部叩き込まれた。皆こそ出来ないの?」

「田舎育ち」

「山育ち」

「武一筋」

「だめだね」


 そんなこんなで俺達は依頼された薬草を取るため街から出た。
 すぐ近くに薬草を取りに行くだけの依頼なので報酬は籠一杯に薬草を摘んで銅貨二枚。かなり安い仕事ではあるが、ブロンズの冒険者には必ずこの仕事が与えられるらしい。
 道すがら分厚い本を読んでいたエヴァが言っていた。


「パーティの階級はそのパーティに所属している人の中で、一番高い階級の人の物が反映される……だって」


 なるほど……てことはオリハルコン級冒険者パーティは誰かがオリハルコン級だからそう呼ばれているのか。


 森に着いた俺達は早速中へ入り、薬草を探す。思ったよりも大きな森で、薬草の群生地になっていた。


「どれが……薬草なんだ……」


 レオは目の前に広がる薬草の群生地を見つめ、突っ立っている。エヴァも似たような感じだ。
 俺は昔から薬草採取をしていた事もあり、慣れたものだ。シエラも山育ちのおかげかすぐに見極め慣れた手付きで薬草を摘んでいる。そんな二人の為に一から教えていき、それぞれが一つの籠を一杯にする頃には日が沈みかけていた。
 結果としては四つの籠を一杯にし、十分とも言えた。


「そろそろ戻るか。思ったより時間がかかった」

「ああ、そうだな」


 俺達は街へ戻り冒険者ギルドに薬草を納品。報酬として銅貨八枚を手に入れた。
 そこからもまた大変で、次は宿を探すべく街中を練り歩いた。宿はたくさんあるが、何せ高い。一泊飯付きだと相場はだいたい銀貨二枚ってところだ。
 すっかり夜になり、大通りを歩く俺達に一人の少女が声をかけてきた。
 元気に笑顔を浮かべてはいるが、その身なりからしてそこまで裕福ではないんだろう。大通りはまだまだ賑わっていて、客引きをする宿もちらほら見かける。
 そんな客引きの一人に俺達は捕まった。


 「格安だよ!」という言葉に釣られ俺達がついていった先は大通りから一つ路地に入った所にある小さな宿〈ホワイトパピー〉だった。

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品