最弱属性魔剣士の雷鳴轟く
40話 獄気
「っ……!!」
「流石です クロト様」
俺はちらっと後ろを見るとほんの少しだけ砂煙が立っているだけで、約六メートルを移動できた。
初めて瞬動術の修行を始めてから二週間。最初こそ酷かった瞬動術も今ではここまで出来るようになった。
「それでもまだ完全に砂煙は消せないな」
「あとは少しずつ練度を上げていくだけですね。今なら戦闘中でも瞬時に使えるはずです」
「ああ! これは応用性が高くて俺の技にも相性が良さそうだ」
「それにしても習得速度がかなり早いですね」
「ん? そうなのか?」
「はい。普通の大人が瞬動術を習得しようとすれば数ヶ月はかかります」
「うお、まじか」
「はい。ではクロト様 習得記念に一戦交えてみましょうか」
「お、いいな。やろう!」
「では……」
グレイドは腰の刀を抜く。片方にしか刃がついてない不思議な剣だ。
注意しないと、あの剣を使う者の術はスピードも早くかなり強力だ。
俺はテンペスターを抜き、しっかり握る。
「じゃあ、行くぜ。黒帝流 剣狼」
踏み込みに瞬動術を交えたことで今までよりスピードが倍に上がってる。が、グレイドもこの速度にはついてくる。
俺が突き出したテンペスターを上手く流し、グレイドはすぐさま攻撃に転じる。横一文字に振られた刀を間一髪のところでシュデュンヤーを逆手に抜いて受け止める。
このまま受けに回るのは悪手と判断し、いったん距離を取るために瞬動術をもう一度使い後ろに飛ぶ。
後ろバージョンでも問題なくできるな。よし。
「流石ですね クロト様」
「グレイドもな。雷帝流 雷斬砲」
テンペスターを薙ぎ払い斬撃を飛ばす。
「ふんっ!!」
グレイドも負けじと刀を振り下ろし斬撃を飛ばす。グレイドの斬撃は地面を削り斬りながら縦に飛ぶ。
俺の雷斬砲とぶつかり停滞するが、シュデュンヤーで更に雷斬砲を放ちグレイドの斬撃を殺す。さらにグレイドの斬撃を破った雷斬砲はグレイドに向かって飛ぶ。
「く……獄気硬化!」
グレイドが力を込めると刀が黒くなり、オーラを纏う。なんだ、あれ……
「はっ!!」
そのまま俺の雷斬砲を断ち切った。
「何だ、今の」
「獄気だよ」
「ん、誰だ……?」
後ろから声がして振り返るとそこには人間サイズにまで縮んだハデスと、鬼の様な顔が三つあり、腕は右手に三本、左手に三本。足は二本で腰布だけを巻いたガタイのいい奴が立っていた。
「そうか、クロトは初めて会うんだったな。地獄に数人いる我が家臣のうちの一人で、名前はアシュラだ。戦神で、かなり強いぞ」
「へぇ、よろしく」
「おう、坊主 よろしくな」
三つの顔が同時にニコッと笑う。見かけはまさに鬼そのものだが、外見によらず優しいやつなのかもしれない。そう思わせる笑顔だ。
「で、獄気って?」
「ふむ、地獄に漂う魔粒子のようなものだ。武器に纏うことで強度を著しく上昇させ、自らの肉体に纏えば鉄のような強度を得る」
「へぇ! すげーな」
「他人事ではないぞ。これから習得するんだからな」
「な、俺にもできるのか?」
「当たり前だ さぁやるぞ」
「お、おう!」
◇
「いいか、周りに漂う地獄の粒子、すなわち獄気を感じ取りそして自分の中に取り入れるんだ。そしてそれを、そうだな とりあえず右手に流すイメージでやってみろ」
難しいことを言うな……
俺は目を閉じ周りの獄気を感じようとする……が、中々そう上手くは行かない。
獄気を肌で感じ、更にそれを体内に取り入れる。逆に俺の並外れた魔力の器を利用してこのあたりの魔粒子一帯を取り込んでしまうのはどうだろうか……
試しにやってみるか。
「っ……!!」
膨大な魔力が流れ込んでくる。だが、自分の魔力じゃないからすぐに抜けていく。
その中から獄気と思われるものを集める。感覚は魔力では無い物を抽出するイメージ。感覚では出来るはずだが……
「……だめだ」
「うむ、しかし中々良い感じじゃないか。初日から獄気を感じ取れているのならば見込みは十分にある」
「ああ、でもこれだけやっても少ししか集まらなかった。まだまだ時間をかけないといけないっぽいな」
「うむ、とりあえず今日は帰るとしよう」
「おう」
俺達は修行を切り上げ宮殿内に帰る。
「そういえばアシュラ……さん」
「アシュラでいいぜぇ」
「じゃあアシュラ。何しに来たんだ?」
「いきのいい坊主が地上から来たって言うから会いに来たのさ」
「へぇ。戦神って事はかなり強いんだよな?」
「そりゃぁお前、もちろんだぜ」
「へぇ!じゃあ今度是非戦ってくれよ」
「おう!いいぜ。俺の友達にアリサってやつが居るんだが今度会わせてやるよ。きっとアリサも喜ぶぜ」
「おぉ!それは楽しみにしとくよ」
「おう!……ん? あれは誰だ? 見ない顔だが」
アシュラの指さした方を見ると修行を終えたエヴァが宮殿の柱にもたれかかっていた。
「あ、ああ。俺の仲間だ。おーい! エヴァ!」
「あ!」
俺が手を振るとぱぁっと顔を明るくする。そしてタタタと走ってきて隣を歩く。
今は修行用の服装だ。黒い半ズボンに同じく黒いノースリーブのへそ出しシャツだ。髪はきれいにポニーテールにしてある。
エヴァ曰く、動きやすいらしい。
「今日は終わり?」
「ああ、今から晩飯だ。今日はアシュラも一緒だ」
「アシュラ……?」
「おう、さっき友達になった」
「おう!嬢ちゃん。よろしくな!」
「あ、よろしくお願いします! ……それでねクロト、今日は……」
最近エヴァは少し楽しそうだ。
学園で会ったときから何かと悩んで暗い顔ばかり見てきたからこうやって楽しそうにしてるのは見てるこっちとしても嬉しい。
「…………クロト?」
「あ、悪い。さ、飯に行こう」
「うん!」
ーあとがきーーーーーーーーーーーーーー
変更の一覧です(2019年9月1日)
39話 変更
40話 増話
41話 増話
42話 変更
となってます。
42話〜も増話する予定です。
ご迷惑をおかけして申し訳ありません。
「流石です クロト様」
俺はちらっと後ろを見るとほんの少しだけ砂煙が立っているだけで、約六メートルを移動できた。
初めて瞬動術の修行を始めてから二週間。最初こそ酷かった瞬動術も今ではここまで出来るようになった。
「それでもまだ完全に砂煙は消せないな」
「あとは少しずつ練度を上げていくだけですね。今なら戦闘中でも瞬時に使えるはずです」
「ああ! これは応用性が高くて俺の技にも相性が良さそうだ」
「それにしても習得速度がかなり早いですね」
「ん? そうなのか?」
「はい。普通の大人が瞬動術を習得しようとすれば数ヶ月はかかります」
「うお、まじか」
「はい。ではクロト様 習得記念に一戦交えてみましょうか」
「お、いいな。やろう!」
「では……」
グレイドは腰の刀を抜く。片方にしか刃がついてない不思議な剣だ。
注意しないと、あの剣を使う者の術はスピードも早くかなり強力だ。
俺はテンペスターを抜き、しっかり握る。
「じゃあ、行くぜ。黒帝流 剣狼」
踏み込みに瞬動術を交えたことで今までよりスピードが倍に上がってる。が、グレイドもこの速度にはついてくる。
俺が突き出したテンペスターを上手く流し、グレイドはすぐさま攻撃に転じる。横一文字に振られた刀を間一髪のところでシュデュンヤーを逆手に抜いて受け止める。
このまま受けに回るのは悪手と判断し、いったん距離を取るために瞬動術をもう一度使い後ろに飛ぶ。
後ろバージョンでも問題なくできるな。よし。
「流石ですね クロト様」
「グレイドもな。雷帝流 雷斬砲」
テンペスターを薙ぎ払い斬撃を飛ばす。
「ふんっ!!」
グレイドも負けじと刀を振り下ろし斬撃を飛ばす。グレイドの斬撃は地面を削り斬りながら縦に飛ぶ。
俺の雷斬砲とぶつかり停滞するが、シュデュンヤーで更に雷斬砲を放ちグレイドの斬撃を殺す。さらにグレイドの斬撃を破った雷斬砲はグレイドに向かって飛ぶ。
「く……獄気硬化!」
グレイドが力を込めると刀が黒くなり、オーラを纏う。なんだ、あれ……
「はっ!!」
そのまま俺の雷斬砲を断ち切った。
「何だ、今の」
「獄気だよ」
「ん、誰だ……?」
後ろから声がして振り返るとそこには人間サイズにまで縮んだハデスと、鬼の様な顔が三つあり、腕は右手に三本、左手に三本。足は二本で腰布だけを巻いたガタイのいい奴が立っていた。
「そうか、クロトは初めて会うんだったな。地獄に数人いる我が家臣のうちの一人で、名前はアシュラだ。戦神で、かなり強いぞ」
「へぇ、よろしく」
「おう、坊主 よろしくな」
三つの顔が同時にニコッと笑う。見かけはまさに鬼そのものだが、外見によらず優しいやつなのかもしれない。そう思わせる笑顔だ。
「で、獄気って?」
「ふむ、地獄に漂う魔粒子のようなものだ。武器に纏うことで強度を著しく上昇させ、自らの肉体に纏えば鉄のような強度を得る」
「へぇ! すげーな」
「他人事ではないぞ。これから習得するんだからな」
「な、俺にもできるのか?」
「当たり前だ さぁやるぞ」
「お、おう!」
◇
「いいか、周りに漂う地獄の粒子、すなわち獄気を感じ取りそして自分の中に取り入れるんだ。そしてそれを、そうだな とりあえず右手に流すイメージでやってみろ」
難しいことを言うな……
俺は目を閉じ周りの獄気を感じようとする……が、中々そう上手くは行かない。
獄気を肌で感じ、更にそれを体内に取り入れる。逆に俺の並外れた魔力の器を利用してこのあたりの魔粒子一帯を取り込んでしまうのはどうだろうか……
試しにやってみるか。
「っ……!!」
膨大な魔力が流れ込んでくる。だが、自分の魔力じゃないからすぐに抜けていく。
その中から獄気と思われるものを集める。感覚は魔力では無い物を抽出するイメージ。感覚では出来るはずだが……
「……だめだ」
「うむ、しかし中々良い感じじゃないか。初日から獄気を感じ取れているのならば見込みは十分にある」
「ああ、でもこれだけやっても少ししか集まらなかった。まだまだ時間をかけないといけないっぽいな」
「うむ、とりあえず今日は帰るとしよう」
「おう」
俺達は修行を切り上げ宮殿内に帰る。
「そういえばアシュラ……さん」
「アシュラでいいぜぇ」
「じゃあアシュラ。何しに来たんだ?」
「いきのいい坊主が地上から来たって言うから会いに来たのさ」
「へぇ。戦神って事はかなり強いんだよな?」
「そりゃぁお前、もちろんだぜ」
「へぇ!じゃあ今度是非戦ってくれよ」
「おう!いいぜ。俺の友達にアリサってやつが居るんだが今度会わせてやるよ。きっとアリサも喜ぶぜ」
「おぉ!それは楽しみにしとくよ」
「おう!……ん? あれは誰だ? 見ない顔だが」
アシュラの指さした方を見ると修行を終えたエヴァが宮殿の柱にもたれかかっていた。
「あ、ああ。俺の仲間だ。おーい! エヴァ!」
「あ!」
俺が手を振るとぱぁっと顔を明るくする。そしてタタタと走ってきて隣を歩く。
今は修行用の服装だ。黒い半ズボンに同じく黒いノースリーブのへそ出しシャツだ。髪はきれいにポニーテールにしてある。
エヴァ曰く、動きやすいらしい。
「今日は終わり?」
「ああ、今から晩飯だ。今日はアシュラも一緒だ」
「アシュラ……?」
「おう、さっき友達になった」
「おう!嬢ちゃん。よろしくな!」
「あ、よろしくお願いします! ……それでねクロト、今日は……」
最近エヴァは少し楽しそうだ。
学園で会ったときから何かと悩んで暗い顔ばかり見てきたからこうやって楽しそうにしてるのは見てるこっちとしても嬉しい。
「…………クロト?」
「あ、悪い。さ、飯に行こう」
「うん!」
ーあとがきーーーーーーーーーーーーーー
変更の一覧です(2019年9月1日)
39話 変更
40話 増話
41話 増話
42話 変更
となってます。
42話〜も増話する予定です。
ご迷惑をおかけして申し訳ありません。
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