最弱属性魔剣士の雷鳴轟く

相鶴ソウ

32話 脳筋が頭使えたら無敵……?

「よし、行くか」


 マーダラービーの死体の処理を終えたヴァランは更に森の奥へと進む。


「狙ってた獲物ってこいつじゃないのか?」

「ああ、レッグには頼まれてたが、目的の獲物じゃない」

「ふーん どんなやつなんだ?」

「まぁ会えばわかるよ。マーダラービーより確実に強い」

「まじかよ」


 魔物学でやった魔物は知ってるからいいが、知らないやつが来られると対応しきれない。


「しかしクロト、お前も強いな」

「ん、まぁな」

「雷属性なんてろくに使える奴見たことなかったが、お前は別格って感じだ」

「ん、そうか。でもこれでもまだまだだぜ」

「その向上心が末恐ろしいな、全く」


 しかしこの森に入った時から思っていたが、なんでここにある木は普通の木よりこんなにでかいんだ?


「木がでかくて不思議か?」

「な……なんでわかったんだよ」

「クク。顔に書いてあるぜ」

「なんだよそれ。で、なんでなんだ?」

「昔この大陸は全体が大魔森の様な凶暴な魔物が住み着く森や山だったんだ。ただ人間が開拓するうちにそんな場所も大魔森と呼ばれるアルバレス公爵領より南のあの森だけになっちまった。で、こういう点々として残っている森や山はその名残だな」

「それと木がでかいのと、何か関係があるのか?」

「大魔森は魔粒子が濃く、こういう木や草は育ちやすいんだ」

「なるほど」

「魔粒子が濃いと魔物も強くなる。だから木がでかいってことは、それだけそこに生息している魔物も強いってことだ」


 それは楽しみだな。
 掠っただけで即死なんて奴とは戦いたくないが、強い奴とは戦ってみたい。という思いも密かにあったりする。これから実力をさらに上げないといけない事を考えればどうしても強者との戦いは必須だ。


「ガルゥゥ。因みにご主人様マスター、我が助けていただいたあの森もそうですよ」

「え、そうなのか」

「はい」

「へー、てかアルギュロス」

「はい、なんでしょう?」

「そのご主人様マスターってのはやめてくれ」

「ではなんとお呼びすれば?」

「普通にクロトでいいよ」

「そ、それは流石に……」

「じゃあ主とかでいいんじゃないか?」


 と、ヴァランが言葉を挟む。


「なるほど、ではこれからは主と呼ばせていただきます」


 ヴァランめ、余計な事を……まぁいいか。ご主人様マスターよりはそっちの方がまだマシだ。


「ヴァラン、だいぶ進んだがまだなのか?」

「もうすぐだ。もう魔物の気配がほとんど無くなった。ヤツの縄張りに近づいたって事だろう」

「ヤツ……」

「ほら、気配を感じるだろ」


 ほんとだ。何だ、この気配。
 とてつもなくでかい……


「この先だな 行こう」

「……ああ」


 俺達は気配がする方、森の奥へ更に進んでいった。
 しばらく進むと、かなり開けた場所に出た。そして一番に目に入ってきたのは巨大な竜だった。


「グギャァァァァ」


 赤い鱗、羽は無く手足はしっかりと地面を捉えている。体長は五メートルは軽く超えてるだろうな。竜というよりトカゲに似た感じだ。


「あれは火竜、サラマンダーだ」

「サラマンダー……」


そして次に目に入ってきたのはそれと戦う二人の人影だ。


 一人は女の人で、紅の髪をポニーテールにし、銀にキラキラ光るビキニアーマーをつけている。武器は巨大な斧で、あの細い腕のどこにそんな力があるのかと不思議なほど軽快に振り回している。
 もう一人は男の人で、紫の髪を若干オールバックにしたような髪型で、軽い革鎧をつけている。結構ごつい。
 武器は見当たらないところを見ると素手で戦ってるらしい。


「お、やってるな。おーい! マルス! アジェンダ!」


 ヴァランの呼びかけに二人が一斉にちらっとこちらを見、そしてすぐにサラマンダーに目線を戻す。


「ヴァラン。その子が助っ人?」


 アジェンダと呼ばれた女の人がサラマンダーが振り下ろした爪を避け、巨大な斧で腕を攻撃しながら話しかけてくる。
 が、パンパンに詰まった筋肉と、鱗が相まって、弾かれる。


「ああ そうだ」

「おいヴァラン、てめぇ俺達を舐め過ぎじゃぁねぇか? 俺達とそんなガキが共闘できるわけねぇだろ」


 うわ、いきなり険悪ムード。
 マルスと呼ばれた紫色の髪の男がサラマンダーを数発殴る。サラマンダーはジリジリと押されている。
 サラマンダーを力だけで押すなんて、すごい力だな。


「ギシャャャャャャ」


「わはは。舐める? 馬鹿言うな。こいつはお前らと同等、いや下手したら上だぜ?」


 と、俺の頭をバシバシしばきながら言う。


「なに? ……チッ、まぁいい。戦えばわかることだしな。とりあえず手伝え、さっさと殺っちまうぞ」

「ええ、少し本気を出すわ」


 と、アジェンダが両手で持っていた斧を地面に突き刺し、腰に下げている二本の片手斧を両手に持ち構える。


「クロト。お前、マーダラービーと戦ったときが全力じゃないだろ? 本気で行け、サラマンダーは四人がかりでも厳しいぞ」

「ガウ!」

「わはは。四人と一匹、だったな」


 本気か……
 ヴァランとは長い付き合いになりそうだからな。見せておいて損はないかもしれない。仕方ない、やるか。
 戦いに参戦しようとテンペスターに手を伸ばしたところでサラマンダーに動きがあった。
 口から呼吸に合わせて小さな炎がぼっと出ている。まさか……


「ブレス!来るぞ」


 やっぱりか。
 気づいた時には既に巨大な炎塊が目の前に迫っていた。


「全員、避けろ!!」


 俺達はそれぞれ横に飛び避け、地面を数回転がる。
 あぶない! あと数秒反応が遅れたもれなく全身ミディアムレアにされていた。
 ブレスが通った跡は、地面をえぐり焦がし、シューシューと煙を上げている。炎もいうよりは巨大なエネルギー砲だ……
 俺の後ろに鬱蒼と生い茂っていた木やツルは、燃えた、というより吹き飛び、あれだけ太かった木も数本折れている。


「アジェンダ! マルス!一旦下がってこい」


 おう、と二人が俺達のすぐそばまで下がってくる。
 と、ほぼ同時でサラマンダーの口から少し炎が出る。


「ブレスニ発目、来るわよ!」

「チッ ヴァラン。あれやるぜ」

「ああ。アジェンダとクロトは俺達がブレスを防いだら一気に畳み掛けてくれ。それまでは俺達の後ろに」

「ああ!」

「わかったわ」


 サラマンダーの正面にヴァランとマルスが並んで立ち、その後ろに俺とアジェンダが並ぶ。


「えーと、確かクロト、だったわね。私はアジェンダ、呼び方はアジェンダでいいわ。詳しい自己紹介は後でね」

「あ、ああ。よろしく」

「仲良くお喋りしてる時間はねぇぜ。行くぞ、ヴァラン!」


 言うが早いか、サラマンダーの口から高熱の炎が放出される。ブレスは地面をえぐり、空気を燃やしながら俺達に突っ込んでくる。
 さっきとは違い、一点に魔力を集中した球的なブレスではなく、文字通り咆哮の様な一直線のブレスだ。


「土術 羅生門」


 マルスが両手を地面につけると同時に地面が盛り上がり、巨大な土の壁が俺達とブレスの間に出来る。


「水術 水陣壁」


 ヴァランが作り出した魔法陣から水が溢れ出し、羅生門を包み込む。


「「複合魔術 羅生門・水の陣」」


 すごい……水と土の壁。炎には効果覿面だな。


《アルギュロス! 俺たちに合わせてお前も来い!》

《御意》


 ゴゴゴッと地面が大きく揺れ、ブレスと羅生門が衝突する。いくら炎を防ぐのに効果的な防壁とは言え、あれは生半可な炎じゃない。燃やす、という事よりも破壊する事を得意としている。


「くそ、流石に強いな……」

「ああ、持ちこたえられるかどうか……」


 ヴァランとマルスが、羅生門に魔力を込めつつ歯を食いしばる。


「こいつの魔力、思ったより高い。このブレスも普通より強力……長期戦は不利、短期決戦で決めるわ……クロト!」

「ああ!」


 俺はテンペスターを抜きバチバチと放電し雷化・天装衣ラスカティグローマの準備をする。


「な、てめぇ雷属性なのか? チッ……お荷物が」

「最弱……属性……なの?」


 俺は反論する代わりに二人を短く睨み、テンペスターを地面に突き刺す。


「雷術奥義 雷化・天装衣ラスカティグローマ!!」


ーあとがきーーーーーーーーーーーーーー
32話読んでいただきありがとうございます。

本当はもっと早く出す予定だったのですが、テストの真っ只中で、かける時間が行き帰りの電車内だけだったので、こんなに時間が開いてしましました。

月曜日までテストなので、それを過ぎれば少し余裕ができるので、ガンガン書いていこうと思います!




クロト「32話読んでくれてありがとう!

質問は質問箱へ、感想などはコメントにてよろしくな!
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じゃあクイズ!
Q2 俺が使っている剣術『雷帝流』は剣に魔術を纏わせる魔剣術と呼ばれるものだが、俺以外にこの魔剣術を使える人は誰でしょう!

登場回数も描写も少ないから難しいかもな

じゃあな!」

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コメント

  • コング“シルバーバック”

    テストお疲れ様です!

    この問題は全くわかりやせんでしたぜw

    1
  • 相鶴ソウ

    Q2の答えは『リンリ』でした!
    覚えてますか?我流 熊ノ太刀 や 我流奥義 白虎の太刀
    あれは炎をまとわせた剣術なので魔剣術です!

    0
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